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「アイラブユー、オーバーエイジ。」第2話/今日は君の命日

第2話

● 現代のとある高校。朝の賑やかな教室。

ユウ【後悔はしてない】
クラスの女子達「ユウちゃん誕生日おめでとー!」
プレゼントの箱やら包装がたくさん。
ユウ「……ゴホッゴホッ…ありがとう」
具合悪そうながら、受け取るユウ。顔は力なく笑っている。
ユウ【でも、押し潰されそうな自分もいる】
リーダー女子「開けてみなよユウちゃん」と屈託ない笑顔で言う。
ユウ「え、ああ、うん」
とプレゼントに手をかけた瞬間、先生が教室の扉を開け「HR始めるぞー」とやってくる。
ガタガタとみんなが席に座る。ユウもカバンからはみ出してはいるがプレゼントをしまう。
先生「えー今日からクラスの仲間になる転校生だ。じゃあ大葉、挨拶を」
一気にザワつくクラス。
エイジ「はい。大葉エイジです。よろしくお願いします」
まっすぐ真面目な顔で挨拶するエイジ。
モブ①「わ、イケメン」
モブ②「誰かに似てね?」
コソコソ話す生徒。
ユウ「…(なんか既視感)」とポーっと見ている。
エイジ「…」
先生「それじゃ皆仲良くしてやってくれな。伊良部!席はお前の横だ。案内してやってくれ」
ユウ「あ、はい!」

席に着くエイジの横でケホと咳するユウ。
ユウ「よろしく…伊良部ユウです」
エイジはじっとユウを見つめ「俺、大葉エイジ。よろしく」と笑い、続ける。
エイジ「…誕生日なの?今日」
ユウ「…まあ」と机にかけたプレゼントが入ったバッグを手で隠す。エイジは不思議そうに見る。
エイジ「めっちゃ祝われてるじゃん」
ユウ「…だね」
と目線も合わさずへら、と笑うユウ。エイジは話を続けたかったが他のクラスの男子などに声をかけられ終わる。

放課後。カバンを肩にかけ昇降口から外に出る。
夕日を見つめハア…とため息を着くユウ。暗い靴箱から誰かがそんなユウを見つめている。

駅に着いたユウはカバンに入ったプレゼントを駅のゴミ箱に捨てる。
その瞬間、背後から「なにやってんだよ、プレゼントだろ」と声がし、バッと振り返るとエイジ。
ユウ「なんでいるの?」
エイジ「…たまたま帰り道一緒みたいで見かけたから」
ユウ「…ふーん」
興味無さそうにそのまま踵を返し、駅を進むユウ。
エイジ「え!?ちょ、ちょっと待て待て!」
エイジは慌ててプレゼントをゴミ箱から出して抱えて追う。
暫くして街中。少々雲はあるものの、月が見え始めた空。
スタスタと歩くユウとその後ろで歩幅合わせるように追うエイジ。
ユウ「…〜〜ッ!!なんで着いてくるの!」
エイジ「忘れ物」
プレゼントを見せる。
ユウ「…あげるよ、そんなに大事なら」
エイジ「大事なのは俺じゃなくてユウだろ」※ユウが(呼び捨て…)と呟いてて欲しいです。
エイジはそう言って目の前まで進み、プレゼントを差し出す。
ユウは咳しながら険しい顔で受け取り、無心でビリビリと乱雑に包装を開け、破かれた包装紙はハラハラと落ちていく。
ユウ「私、いじめられてるの」
そう言うと大きく死ねと書かれた寄書きが出てきた。
エイジ「!」
ユウ「はっ、何が大事って?」
と嘲笑うように睨むユウ。
エイジ「えっと…」
言葉に詰まるエイジ。ユウはハアとため息。
エイジ「……ごめん」
ユウ「いーよ、転校したばっかで何も知らないだろーし。まあそのお節介は何とかしたほーがいいかもだけど」
エイジ「……」
ユウ「なんでもいいけど、つまり私と仲良くしちゃうと…エイジくんも巻き込まれちゃうから気をつけなよ」
エイジ「いいよ。俺は気にしない」
あっけらかんと答えるエイジに、ユウはその言葉に目を見開いて彼を見つめた。エイジは真顔だったが、ユウはハッと我に返る。
エイジ「だから」
ユウ「てゆーか!」
遮るように叫ぶユウは咳をし、スっと力なく静かに笑う。
ユウ「一人にさせて!」
そうしてエイジから逃げるユウ。

※ここからいじめのあったクラスで徐々に孤立していくユウを描いてください。
ユウ【クラスでいじめがあった】
ユウ【行き過ぎた行為に耐え切れなくてその子を庇ったら、いつの間にか自分にターゲットが変わっていた】
ユウ【後悔はしてない。その子は助かった。良かったと思う。だけどその変化に、自分が段々押し潰されていった】※助けた子が怖がっていじめに加担する描写をお願いします。
ユウ【後悔はしてない。後悔はしてない。何度も何度も、何度も自分にそう言い聞かせた】
スマホに姉から「今日は誕生日だからお寿司にするよー!」とメッセージが送られている。悲しい顔をするユウ。
ユウ【親がいない我が家。体の弱い私。そんな姉は必死になって育ててくれた。心配はさせたくない…分かってるのに、こんな弱気になっちゃダメなのに】
ユウ「…消えたい」
コンビニの外でしゃがみこむユウ。咳込みながら、ぎゅっと体を丸め、スマホを握り、どこにも行けない悲壮感が漂う。隣には誰かが捨てた炭酸のボトルを見つめるユウ。※泡がシュワシュワと消えていくアップ。
ユウ【炭酸の泡みたいに、消えたい】
ユウ【でも、この辛さに耐えなかったら、後悔してるのと同じになっちゃう気がする】
リーダー女子「ユウちゃん、ここにいたんだ」
ユウ「!」
頭の上から声がして顔を上げるとそこにはリーダー女子、松雪 爽。何やら走ってきていたよう。
松雪「探したよ」

人気の無い夜の公園。ユウと松雪が歩く。
ユウ「どういうこと…謝りたいって」
松雪「そのままの意味だよ、本当は…私といつも一緒にいる山田ちゃんいるじゃん、あの子にお前がいじめろって脅されてたの」
ユウ「…え?」
松雪「でも、もう嫌んなっちゃって、喧嘩してきた!」と向かい合って笑う。
ユウ「……ウソっ」
堪えきれず泣きそうなユウにニッと笑う松雪。「ほんとだよ」
ユウ「…ど、そ、そんなの、どんな、感情で聞けばいいか」
松雪はユウを抱き締める。「今まで本当にごめんね。あと、誕生日おめでとう。心から祝えて嬉しいよ」
2人の上には大きな満月が怪しく輝いている。

エイジが走っている。さっきユウがいたコンビニでキョロキョロ。満月が光る夜空を見つめる。
「ヤバい…」
入口付近でたむろっている男達に「あの、さっき女子高生いませんでした?どっち行ったか分かりますか」と尋ねる。

改めてユウたち。
何故か丘の上の人気の無い工事中のビル内へ。階段を上る。
松雪「この際2人きりで色々話したくてさ、ここの屋上夜景キレイだからそこで話そ」
ユウ「…う、うん」※こんなとこで?と吹き出し枠外で書いて欲しいです。
スマホをチラ見するユウ。
ユウ「……松雪さん」
松雪「んー?」
ユウ「…こんなことして、松雪さんがいじめ返されたりしない?」
松雪「えー?ないない。てか私が山田ちゃんいじめ返せば良くない?」
ユウ「え?」
足を止めたユウに階段を先に登る松雪が振り返る。咳をするユウの手を引っ張り、笑う。
松雪「ユウちゃんもさ、ユウちゃんのこと助けたあの子いじめ返せばよかったのに」
ユウ「…」
松雪「さ、着いたよ!」
扉を開けると丘の上なのか街が一望できる。風が吹き器材などを隠したシートなどが靡く。空はいつの間にか晴れて綺麗な星空。
ユウが手すりをつき思わずワァ、と見渡す。松雪は後ろでニコニコしている。
ユウ「…ありがとう、松雪さん」
松雪「友達でしょ、私たち」
と改めて手を握ろうとするが、ユウは後退りする。
ユウ「…でもごめん。松雪さんの意見には賛同できない」
松雪がユウを視線だけ見つめる。ユウは爽やかに真顔。
ユウ「私ずっとなんで助けたあの子に虐められるんだって思ってた。正直ひとりは辛かった。恨みそうになった。でも私たちのあの教室には、逃げ出せない牢獄みたいな空気があったから、わかってたの。それに」

ユウの心にはエイジの「俺は気にしない」と言った時のシーンが焼き付いていた。

ユウ「あの時の私は気になんかならなかった。それより、そんなことどうでもいいから、あの時、苦しんでるあの子を助けたかった。さっき松雪さんの気持ち聞いて、間違ってないと思い直せた。だから、もう…後悔はしない。今の私だって、あの時の私と変わらない」
松雪「…」
ユウ「だから、ごめん。いじめ返したらあの時の私の勇気を、裏切ることになるから」
ユウはスカートをぎゅっと握る。
松雪「そんなの…なんの価値もないよ」
ユウ「いいよ、そんな価値無くていい」
松雪は黙ったまま大きな溜息をつくと、強い風が吹き、器材のシートがバタバタっと二人の間を通った。すると松雪だった者は、黒いローブを羽織りコウモリのような羽を生やし、大きな鎌を持って立っていた。よく見ると浮いている。
ユウは「!?」とたじろぎ後退りした。
死神「…あー人間って本当にめんどくさー。もう演じ疲れたー。絶望に浸された魂で狩出すつもりだったのに。ま、活き活きとしたほうも鮮度いいからいっかぁ」
先程よりもキツくなったような冷めた目で鎌を撫でる死神。スイッと軽く振ると、ユウの顎下に鎌先を当てた。ツー…と血が流れた。背後はもう柵しかなく後退り出来ない。
ユウ「あ、え?松雪さ…」
死神「松雪は仮の姿でえ、本当の私は死神エイプリオ。フハ、可哀想ねアンタ。今日はアンタの誕生日であり、アンタの命日なの。私はそんな伊良部ユウの魂を狩りに来たんだよ♡」
ユウ「な、なん、め、命日っ、」と震えるユウ。
死神「ふふふふ、ハハハそうだよ!ずっとこの日を待ってた!アンタは17歳になったら死ぬの!心から祝えて嬉しいよ、命日おめでとー!!」
そう言ってもう一度鎌を振る死神。身構えるユウ。
エイジ「血魂!フレア!」
途端に熱い光が瞬く。
死神、ユウ「!?」
恐る恐る目を開く。
【私はまだ知らなかった】
エイジ「遅れてごめん」
【何故、彼が“ここ”にいるのかも】
気づくとユウの前にはエイジが背中を向け立っていた。
ユウ「なんで…あなたがここに…」
彼は振り向く。
そして、ユウを守るようにもう一度背を向け言った。
エイジ「俺は、償いに来た」
【何故、私達が、己の運命に抗う日々を始めるのかさえも】

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