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教祖様の話、①

ね、寝れねえーーーー

さっき酒の飲みすぎでゲロった時に、眠剤も一緒に流れていったからだと思います。Good bye、エスゾピクロン3mg……


昔好きだった教祖様の話でも書こうと思う。
唯一のツーショットは、ヘッダーの通り失恋した瞬間に燃やしました。未練はできるだけ消し炭にしたほうが、精神に良い。


教祖との出会いは、高校2年生の4月。もう何年前だ。始業式の日だった。
彼は新しく採用されたウチの市の社会科教員として、わたしがいたちいさな高校にやってきた。

そのスーツ姿。ゆるくかかった黒髪パーマに、メガネ。キリッとした目元、鷲鼻。

一目惚れだった。

その姿は、若かりし頃のサカナクション山口一郎に似ていた。しばらくは、「山口一郎」と呼んでいた。

彼は私の学年の副担任についた。前述のとおりちいさな学校だったので、ひと学年につき副担任はひとりだった。それでも、私の学年団に来てくれたことが嬉しかった。

彼は日本史専攻。3年生の日本史と、2年生の地理Aを教えていた。当時私は2年生の日本史B専攻、彼と会話をする機会は全くなかった。

そんな時、初めての接触イベントがあった。校外学習である。

場所は神戸。異人館に行ってから、中華街をまわり、解散というルートだった。
その日、はじめて彼と話した。

解散後だったと思う。ヘッダーの写真も、その時友達が遠くから撮ってくれたものだ。
「今日はメガネじゃないんですね」と初手にしては気持ち悪すぎる一言から話しかけると、「今日はコンタクトやねんな。目悪くてさ」と返してくれた。メガネをかけている時点で目が悪いのはお察しである。

「メガネの方が、良いと思います。」

それだけ告げて、彼の元から去った。目の前にするとカッコ良すぎてここまでが限界だったのだが、今考えるとこの発言の方が限界だ。私の言葉を、彼はどう受け取ったのだろう。

時は流れ、冬。
相変わらず彼と話す機会はなくて、生徒指導担当についた彼が毎朝校門で挨拶している時に日本史の質問をしにいくのが限界だった。それでも、「俺が作ったプリント、よかったらあげるから」と親指を立てて話してくれる彼は教祖というか、天使以外の何者でもなかった。

一方その頃の私は、荒れに荒れ果てた生活を送っていた。長袖にかこつけて腕は傷まみれ、しかも市販薬ODという最悪なものに明け暮れていた。
全部、親にも教師にも隠れて行っていた。
中途半端に真面目だったから、酒やタバコはしなかった。

それがある日、すべてバレた。服薬した薬の量が多すぎたのと、その種類が問題だった。酷い幻覚と言語障害に陥り、救急車で搬送された。点滴をする際に、傷もバレてしまった。心療内科でODがバレてから、私に対する目は全て冷たいものに変わってしまった。親も例外ではなかった。

それから数日後、親に遺書の存在がバレた。
親の前ではニコニコと朗らかに過ごす女の子を演じていたから、それだけはバレたくなかった。

「子育て、間違えたわ。」

言われて、軽く絶望した。もうお前は俺の子ではないとも言われた。ごめんね、ごめんなさい、としか浮かばなかった。

しかたなく台所に立ち、夕飯の支度をし始めていたが、あまりにもその時聞こえてきた音がおかしかった。私の父は昔から物に当たる癖があったが、包丁を持った彼が大きな音を出して何かに八つ当たりしているのが、怖くてしかたなかった。

殺されるんだなあ、と思った。

だから逃げ出した。着ていた制服にコートを羽織り、携帯と財布だけ持って、家を飛び出した。父親はそれをすぐに引き留めたが、「殺されたくない」と告げるとポカンとした顔で私の手を離した。

何処へ逃げればいい?友達にこんな暗いことは知らせたくない。まず学校に電話した。知っている先生が出て、「もう学校閉めちゃうよ」と言われた。時刻は午後20時ごろだった。どうすればいいかわからなくて、泣きながら電話をブチ切りした。とりあえず、学校についたら校門をよじ登って、柵の内側で寝ようと思った。正直、私の住んでいたところも、学校のある場所も治安が悪い。どこかの敷地内に身を潜めるのが最善だった。

電車に揺られ、約40分。学校の最寄駅につき、急ぎ足でエスカレーターを駆け上る。

そこに、彼はいた。おそらく私物の、自転車を携えて。

「もう、何してるん」

わけがわからなかった。泣いてしまいたかった。

とりあえず歩こうか、と言われ、「子育て間違えたって言われちゃったあ〜」と笑いながら話すと、真剣な顔で「それは酷いなあ」と言ってくれた。それだけで、私には救いだった。

真夜中の道を、ぽつぽつと喋りながら歩いた。傷、痛くないのと言われて、切ってる時は痛みがわからないと答えた。へんな顔をしていた。
信号が赤になって、このまま時が止まればいいのにと思いながら、彼の自転車のサドルを強く握った。


長すぎワロタ。一旦ここで切ります。

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