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【美術ブックリスト】「上村松園随筆集』

近代日本画、特に美人画の大家として知られる上村松園による随筆集。鏑木清方、井上靖、与謝野晶子といった同時代人が松園との交流や作品に関して書いた評文も収録している。
美人について、線についてなど、画業に関わった話題をとても平易に、しかも率直に書いていて曖昧なところが全くない。
ここまでが概要。

ここからが感想。
本当に難しい言葉が一切でてこない。驚くほど文章がわかりやすい。時々、技法的な話題があるけども、それでも絵描きでなければわからないというものではない。随筆というか、日記でもあり、いまでいうブログのようなもの。若い日本画家が読んでもきっとヒントになるはず。ちなみに鏑木清方が松園について書いた文もとても平易でいい文だ。

井上靖が松園との出会いから亡くなるまでの思い出を書いている。没後、遺作展で、同行者の一人が作品を激賞した。すると井上は一言、「松園その人はもっと美しかったですよ」と言ったという。本当にそうだったらしい。ページを戻って改めて松園自身の言葉を読んでみると、「本当に怜悧な、美しい日本の女性」という井上による印象がそのまま文にも表れていることがわかる。現代の画家が見習わないといけないのは、絵ではなくてこういう人としてのあり方の方のように思う。

1760円 ‎ 190ページ 1.2 x 1 x 16.2 cm 平凡社ライブラリー


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