【美術ブックリスト】『五角形と五芒星』Eli Maor著、Eugen Jostイラスト、宮崎興二監修・翻訳、パウロ・パトラシュク翻訳
著者は1937年生まれ、イスラエルで学びシカゴで教える数学史家。幾何学や三角法についての著作がある。
本書は五角形と五芒星について、約2500年にわたって数学、哲学、芸術、自然科学の世界で果たしてきた役割を詳細に記述する。幾何学的な性質から各分野に与えた影響を、数式とイラストで解説する。
五角形を神話的としたピタゴラス学派から、合金の5重対称性がノーベル賞受賞につながった研究、建築に見る五角形など、人類史の中での五角形を理解できる。
ここまでが概要。
ここからが感想。
基本的には数学の本なのだけど、星形や五芒星の形をした墓や建築物を写真で紹介してあるので、理屈以外のところも楽しめる。
黄金比についての章では、以前紹介した『黄金比原論』(丸善出版)を書いたギガについても言及があり、ギガの1946年の著書『美といのちの幾何学』は絵画や建築や自然界にみられる黄金比について書いていて、サルバドール・ダリら当時の芸術家にも大きな影響を与えたことが記される。このとき著者が、ギガについて「黄金比好きの変わり者」と呼んでいるのが可笑しかった。
数学的な視点で美術を見るという姿勢もときには面白い。
184ページ A5 5400円+税 丸善出版
はじめに なぜ五角形か
第1章 五
第2章 黄金比
余談1 14個の無理数
第3章 黄金比は神聖か
第4章 正五角形
余談2 五角数
第5章 五芒星
第6章 五角星
余談3 正五角形にまつわるパズル
第7章 五角タイル貼り
第8章 結晶における5回回転対称性
余談4 未解決の謎