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【美術・アート系のブックリスト】『小早川秋聲』求龍堂

異色の戦争画《國之楯》で知られる日本画家・小早川秋聲の回顧展の図録兼書籍。「小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌(レクイエム)」展は、8月7日~9月26日京都府京都文化博物館、10月9日~11月28日東京ステーションギャラリー、2022年2月11日~3月21日鳥取県立博物館へ巡回しています。

鳥取県の日野町というから、島根に近い西部の山間いの生まれ。京都の画塾に学び、従軍を経験し、国内外を問わず旅行に繰り出しながら数多くの作品を残しました。改めて作品を見ると、その画力に驚きます。風景であれ、人物であれ、迫力という一語では語れない凄みのようなものがあります。

もっとも有名なのは戦争画《國之楯》で、日章旗で覆われた将校の遺体を描いたもの。軍の依頼で描かれたが、受け取りを拒否されたいわくつきの作品。見たことのある人もいるでしょう。将校の遺体が、戦争の虚しさを象徴するようでもあり、その評価は定まっていません。
戦争画を描いたことで藤田嗣治は日本を追われましたが、小早川は静かに戦後を過ごしたようです。

本書は作品約110点掲載し、秋聲の画業を明らかにしています。また研究者と遺族による多数のコラムや研究を交え、さらに年譜・文献目録も詳細で、画集の枠をゆうに超えた労作です。


2640円、B5変型 232ページ


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