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【美術・アート系のブックリスト】ピーター・ウェブ,ロバート・ショート著、相馬俊樹訳『死、欲望、人形 : 評伝ハンス・ベルメール』国書刊行会

日本では澁澤龍彦と種村季弘によって紹介されたハンス・ベルメール。エロティックな球体関節人形を撮影した写真や版画を制作した美術家です。

その作品は現在まで、エロスとタナトスの文脈で語られています。厳格で威圧的な父親への反発が警察や国家への権威やブルジョワ資本体制への叛逆へと成長したとされ、不健康で隠微な性志向は、ナチス・ドイツのアーリア的健康志向の対局ともとれます。

本書は晩年のベルメールの貴重な証言のほか、関係者の証言から浮かびあがる不屈の生涯を追った本邦初の評伝。約350点の図版と筒函が美しい。

私自身は世紀末から第二次大戦までのフランスの退廃的な文化が好きになれないので、ベルメールについても深く知ろうとは思わなかったけども、倒錯するにはそれだけの理由があることだけは分かりました。

448ページ、A5判 4950円



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