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【美術ブックリスト】『文化財学入門』今津節生ほか著
考古学、美術史学、保存科学、史料学、文化財防災、博物館学など文化財学のすべてが揃う奈良大学の文化財学科。その教授陣が研究内容を分かりやすく解説。文化財を通して歴史を正しく紹介し、文化財のこれからを助言する。3Dデータを活用した研究など最前線がわかる。
ここまでが概要。
ここからが感想。
「奈良大学の魅力はなんと言っても奈良に立地していることである」という冒頭の言葉通り、かつての都であり文化財が多数残る場所の大学として、文化財研究のメッカとしてのアイデンティティを掘り下げる本。細分化されがちな各分野の最新の動向をまとめることによって、この研究分野の展望も見えてくる。巻末の著者紹介欄に、略歴とともに研究者の顔写真を掲載したところに、研究者どうしの交流の必要性と研究に対する責任を自覚していることを感じた。
ナカニシヤ出版 A5判 100ページ 900円+税
はじめに (今津節生)
――文化財学入門
第1章 文化財学 事始め (相原嘉之)
――文化財学と奈良大学文化財学科
一 はじめに
二 文化財とは
三 文化財の種類
四 文化財保護の歴史
五 文化財保護法の制定
六 文化財保護法の改正
七 文化財学に関わる学問
八 奈良大学「文化財学科」
第2章 考古学の研究成果を展示する (小林青樹)
――奈良大学博物館令和四年度企画展の軌跡
一 計画のはじまり
二 研究からはじめる
三 現物を確認する
四 現地に立つ
五 展示の完成
六 展示の成果と未来
第3章 学生たちとおこなう地方に残る文化財の保存科学的調査 (魚島純一)
一 はじめに
──きっかけは卒業生のご縁
二 薬師堂について
三 格天井板絵
四 苦労した天井板絵の写真撮影
五 その他の調査
六 板絵に使われた絵具を知りたい
七 格天井板絵の分析
──忘れ去られていた絵具の発見
八 地方に残る文化財を調査することの意義
第4章 3Dデータを活用した文化財の研究・展示・教育 (今津節生)
一 はじめに
二 文化財の3Dデータが持つ潜在能力と魅力
三 研究事例と今後の活用の可能性
四 まとめ
──デジタル複製品の活用
第5章 文化財の保存修復と科学調査 (杉山智昭)
――X線CTスキャナと遺伝子解析による健康診断
一 文化財の保存修復について
二 X線CTスキャナを用いた文化財の調査
三 遺伝子解析による歴史的木造建築物の調査
四 文化財の保存修復と科学調査のこれから
第6章 文化財学科の美術史学 (原口志津子)
一 研究対象
二 美術史学の方法
三 仏教絵画の調査
四 屏風の調査
五 落款印章のある掛幅の調査
六 結び
第7章 盗まれる仏像 (大河内智之)
――その背景と現状
一 仏像盗難の歴史と背景
二 盗まれる「村の仏像」
三 「お身代わり仏像」による防犯対策
四 みんなで守る文化財
第8章 文献資料から文化財の素性を解き明かす (𠮷川敏子)
――国宝金銅灌頂幡の奉納者
一 はじめに
二 金銅灌頂幡奉納者の謎
三 ミオヤノミコトの尊称
四 片岡御祖命の特定
五 片岡の地と糠手姫皇女
六 金銅灌頂幡は何を語るか
第9章 文化財防災を大学で学ぶこと (岡田健)
一 はじめに
二 文化財防災の考え方
三 文化財の「保護」と「活用」
四 おわりに
──総合の学、実践の学としての「文化財」
著者紹介
奈良大ブックレット発刊の辞
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