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美術・アート系の本

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美術に関する新刊・近刊を中心にしたブックレビューです。
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#ルネサンス

【美術ブックリスト】 『イタリア・ルネサンス 古典復興の萌芽から終焉まで』池上英洋

「キリスト教中心の考え方から脱した人間中心の文化現象」というステレオタイプの理解を根底から問い直し、美術史と社会史の両面からルネサンスを萌芽から終焉までを解説。なぜイタリアで始まったのか、なぜ衰退したのかなど美術の本質に迫る。創元美術史ライブラリーの一冊。 ここまでが概要。 ここからが感想。 まず政治、それから経済、そして宗教を含む文化という視点から、歴史的変遷を追い、それらがどのようにルネサンスといわれる文化状況へと結びついたかを説明している。したがって、なかなか美術に

【美術ブックリスト】『超絶技巧の西洋美術史』池上英洋、青野尚子

ルネサンスから近代までの西洋絵画の中から、細密描写、だまし絵、遠近法などの特殊技法など、さまざまな方法で描かれた眼を見張る超絶技巧の作品を集める。ヤン・ファン・エイク、ハンス・ホルバイン、ベッリーニ、アングルといった巨匠の作品が巻頭を飾り、カラヴァッジオの静物、ブグローの人体表現など、著名作品を次々と挙げてそのリアルな描写に言及していく。 ひとつの作品を部分拡大図を駆使して詳しい解説を重ねる。50あまりの作品を収録している。 ここまでが概要。 ここからが感想。 まず印刷が綺

【美術ブックリスト】 『キリスト教美術史-東方正教会とカトリックの二大潮流』瀧口美香著

 西洋美術史を学ぶとなると、大抵はギリシア・ローマの古代美術と中世のロマネスクとゴシックのキリスト教美術を前史として、ルネサンスからバロック、ロココ、古典派、ロマン派、印象派、表現派、現代という歴史が語られる。そしてそのほとんどがキリスト教をモチーフにしているか、キリスト教的な世界観や信仰を前提にしているとされる。  著者はそれはローマン・カトリック美術という、キリスト教美術全体の半分しかなしていないという。残された半分とは、東方正教会に引きつがれているギリシア・ビザンティ

【美術ブックリスト】堀越啓『西洋美術は「彫刻」抜きには語れない 教養としての彫刻の見方』

ロダン作品の日本正規エージェント代表の著者が「彫刻がわかると西洋美術がわかる」をテーマに、彫刻の特徴、鑑賞の仕方、彫刻史をベースに西洋美術史を理解する方法、知っておくべき作品を解説する概説本。 前著『論理的美術鑑賞』と同様、ビギナーにアートの見方を伝授し、アートがわかると人生が豊かになることを提唱している。 ここまでが概要。 ここからが感想。 彫刻に多少でも興味を持った人が、ざっくりと彫刻の基本や常識を学ぶのにはいいと思う。彫像と塑像の違い、鋳造やアッサンブラージュ(組み

【美術ブックリスト】 エド・サイモン著、加藤輝美,野村真依子訳『アートからたどる 悪魔学歴史大全』

悪魔学大全というだけあって、文字数も図版数も多く分厚い。絵画や挿絵といった主に絵画に絵が描かれた悪魔や地獄のイメージから、時代ごとの悪魔についての言説や思想を解説していく。ここまでが概要。 ここからが感想。神を研究する神学があるように、悪魔を研究するのが悪魔学であるというくらいは分かるのだが、その先はまさにこうした研究書を読まないとわからないことも多い。デーモンとデビルとサタンとの違いは何なのか。魔女とはどう関係するのかなど。辞典ではないので、そうした言葉の意味を定義してく

【美術ブックリスト】松本典昭『図説 メディチ家の興亡』

ルネサンス発祥の地・フィレンツェを支配した富豪の家系がメディチ家。芸術を保護し、ルネサンスの原動力ともなった一族の500年の歴史を豊富なビジュアルで解説する。 銀行の経営から始まり、二人のローマ教皇と二人のフランス王妃を生んだ経緯などを時代時代の状況とともに説明してくれるため、ひととおりのことはわかる。ここまでが概要。 ここからが感想。 レオナルドやミケランジェロ、ボッティチェリやルーベンスなどの画家が関係し、実際に肖像画や結婚式の模様を残していることがわかる。そうした絵

【美術ブックリスト】岡部昌幸監修『西洋美術 105人の巨匠』

105人の画家の代表作と逸話をたどることで、西洋絵画史を一気に理解できると謳う。ランブール兄弟、ファブリアーノで始まるところから見て分かる通り、有名画家ばかりでない。ファン・エイクでようやく知られた名前にたどりつき、13番目にやっとレオナルド・ダ・ヴィンチが登場する。 画家ひとりにつき代表作1ないし2点の作品画像を掲載して解説。作家については画業よりも人間関係、師弟関係、金銭問題、犯罪、自殺などのエピソードを豊富に紹介しているのが特徴。ここまでが概要。 ここからが感想。1