【美術ブックリスト】君島彩子『観音像とは何か 平和モニュメントの近・現代 』
もともと一切衆生を救う菩薩であった観音は、「観音経」では状況に応じて三十三の姿に変化すると説かれ、「華厳経入法界品」では補陀落山に住むと言われ、「観無量寿経」では阿弥陀如来の脇侍として死者の魂の救済者となるなど、様々に解釈され意味づけされてきた。その威力を神格化するために千手観音や十一面観音の変化観音が生み出され、神仏習合では天照大神との習合も説かれた。
本書はそうした変化していく観音が、近代では仏像の域を超え、さらに宗教の域を超えた時代の要請に応える広い意味での「信仰」の