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イガイ汁

なんだか私は突然、美味しいお汁が飲みたくなった。
私は我が家の冷凍庫を結構占拠してる”いがい”のことを思い出した。
ご存じの方いらっしゃるだろうか??
上の写真が”イガイ汁”である。

私んとこで有名なのは宍道湖のシジミなのだが、シジミの味噌汁なんかよりずっと濃いくて美味しい。
このイガイ汁は特別なお汁である。
以前は村の春祭りの日に、親戚を招いての食事に振舞われた。
春祭りには盛り皿を取り、後はタケノコやらフキやワカメなど取れたもの料理して出した。
イガイと言う貝はスーパーでは売られてないので、ここでしか飲めず楽しみにしてる親戚が多くいた。
ころにゃんが流行前からそんな賑やかな春祭りはしなくなったけど。

私の住んでる村の近くの海は、漁業権を村が払っている。
だから村人なら海から勝手に取って売ってもよいのである。
けれど漁村ってわけではない。
貝や海藻の話である。
特に春祭りが近くなると、穏やかな干潮の時を狙っておばちゃんたちが連れ立ってイガイを取りに行っていた。

イガイという貝が特別に私んとこにあるわけではないと思う。
普通に食べないだけだと思うが、貝の身はさほどでもないけど美味しい出汁が出て、珍しいものなのだ。

冷凍庫にあったのはイガイはサッと火を通した貝のみ。
たぶんその時はその出汁でご飯でも炊いたのだろう。
それだっていい出汁が出て美味しい。

このイガイ汁、すごいのは何度でもいい出汁が出ることだ。
貝の身はさほどではないし取るのは面倒なので食べないで、お汁のみ味わう。
貝はまたお鍋に戻して、水を足してまた煮立てるとまた美味しい出汁がでる。
そうやって2~3度イガイ汁を味わってから、もったいないから大きめの貝だけ身を取って食べるのである。

私の母親世代は連れ立って競って、イガイやワカメ・岩ノリなんぞを取っていた。
私はそんなおばちゃんたちからいつもお裾分けを頂いてのだが、私達世代は海に何かを取りに行ったりはしない。
おばちゃんたちも、もう年取って取りに行くこともなくなった。

「う~~ん、ウマい!」叫びながらイガイ汁を吸う。
もう食べれないかも?と淋しく思った。
「取りに行くか?」二男見ながら言ってはみるが・・・。

ワカメくらいなら取れるかな?って思うけど、海にはこのごろ紫ウニが大量発生で、だれが取らなくてもワカメは減りつつある。
それに、地球温暖化で海面上昇してるのか?砂浜が減ったし、干潮でも海が深く岩場が出てこなくなった。
干潮であれば簡単に取れてたものが取れなくなってきている。

「イガイ汁、もう食べれないのかも?残念だね。」
ダンナもぼそ~っと呟いた。



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