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23年以上生きたニャンコ

 以上って何?と思われる方もあるでしょう。
 そうなんです!もっと生きたかもしれないのです。たまたま庭に居たのに家に入れず、行方不明になつてしまいました。

 この猫は、昨今の箱入りペットとは違い、かなり野生に近い飼われ方をされながら、しばしばその生命力の強さには驚かされました。

 昭和50年からの話です。
 ニャンコが7才の冬に、風邪を拗らせたのか、3週間ほど何も食べられず、いつあの世行きかと危ぶまれるほど痩せ細ったのに、2回のブドウ糖注射だけで生き延びたというツワモノです。

 ニャンコの好物はコウグリ。 小ぶりのカワハギの頭と内臓と皮を剥いだものが、市場で一山幾らで売られいる。それを丸まま煮てやると、2匹くらいバリバリと食べてしまう。コウグリは腎臓に悪いから与えるなという説もあるけれどなんのその。子供たちが下手に食べ散らかした焼き魚の頭や骨などは、ご馳走の定番でした。

 飼い主が旅行の間、ひとりで留守番ということがありました。今ならどこかに預けるとか、キャットシッターを頼むのでしようが、その当時売り出されていた自動給餌器の機能をテストしてから、粒々のキャットフードをたっぷり入れて、あとは水さえあれば生きていられるよね、と戸締りをして出かけたものです。 

 ところが帰宅して驚いたのは、その給餌器が、猫が食べても順調に餌が降りて来ず、一週間近くもの間水だけで生きていたのでした。

 この健気で、したたかなニャンコが、23年の間お医者さんのお世話になったのは、例の若猫の時と、ノミが大発生した時の2回きり。怪我をしても自分で治していたし、よほど丈夫だったのか、生活環境が良くてストレスもあまりなく、免疫力が強かったのか。

 それにしても、悲しい別れでした。

 その日、私は上京していたのですが、
 "ニャンコが帰って来ないよ"
という夫からの電話に、大急ぎで新潟へ飛んで帰ったばかりか、それを聞きつけた4人の子供たちが次々と帰ってきて、もう見つかるはずもない裏の原っぱから海岸まで、ニャンコォー、ニャンコォーと呼びながら探し回ったのでした。

 猫も象と同様、死ぬ姿を見せないという話を聞いたことがあります。もし、私がその日家に居て、ニャンコを外に出さないでいたら、まだ、もう少し生きていたかもしれないのに、、、
 そう嘆く一方で、ニャンコは自分の寿命を心得て、猫らしくその生涯を全うしたのだと思えば、少しは救われた気持ちになるのです。

 ニャンコと別れてから既に26年、今は娘の愛猫を、娘がロンドンでの仕事中、まるで孫を預かったように、今風に丁寧に面倒をみています。

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