自分

動物編
ブラック②
ブラックの散歩の役は、毎日自分であった。
もう大きくなったら、家内の力では万が一の時、どうにもならないからという事で。
ただ、当時の私の仕事は、朝早く出れば夜中じゃないと帰れない営業の仕事。
当然、散歩は朝早い時間になる。

ある日、まだ明け方で薄暗い感じの肌寒い日、いつも通りブラックと私は、2人で散歩をしていたのだが、ある家の生垣沿いを歩いていた時、ブラックが何かをパクって食べたような素ぶりを見せたのだが、いつもお腹空かせてるから、草か何かかじったのかなくらいの気持ちで帰宅し、いつもと同じ餌をあげて出社した。

出社して間も無く、家内から電話。
言葉にならない叫び声で、「ブラックが、ブラックがー!」
詳しく聞いたら、ブラックが泡を噴いて聞いた事ないような鳴き声で苦しんでると。

毒か、ともかく口に手を突っ込んで腹の中の物吐き出させるようにと伝えたものの、間も無くブラックは亡くなったと電話が来た。

あの時、何か口に含んだあれか。
後で聞いた話、隣家の飼い猫を嫌って、自宅の家の周りに毒餌を撒いてるくそジジイがいるという。
その家の生垣沿いの事であった。

仕事を終えて帰宅したら、車庫の片隅にブラックが敷き物の上に横たわっていた。
「ブラック!ブラック!」読んでも返事が無い。
涙が溢れて止まらなかった。
「ブラックー!ごめん!お父さんのせいだ、あそこの家の側通ったせいで、ゴメン、ゴメン、ごめん!」
何度謝っても、叫んでも、ゆすってもブラックは反応しない。

泣きじゃくりながら部屋に入ると、家内と猫が慰めてくれた。
猫のシャムも一部始終ブラックの姿を近くで見ていたという。

6年という短い犬生、あんなに元気だったブラックが、たった一瞬でこの世を去った。
犬とはいえ家族。
家族を失った悲しみは大きい。

これが、息子や娘、家内とかだったらどんな思いなんだろうと、考えるのも想像つかない事だが、そういう思いをしてる人も数しれない。

特に災害等の場合は、自然を恨む訳にもいかないし、この思いをどこに何にぶつければいいのか、そういう思いなんだろうなと思う。

今この一瞬、生きてる、生かされてると思って大事に生きなければと思う自分であった。

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