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16 誰にも会いたいと思わなくなった

新しい大学に来てから死にたいという気持ちがぶり返した。最近はマシになってきて仕事のために死ぬなんて馬鹿馬鹿しい、また公募戦士に戻るか別の仕事に就けばよいと考えるようになった。

しかし依然として変わらないのが人に会いたいと思えなくなったことだ。友達にも家族にももちろん老害研究者にも会いたくないし、尊敬している研究者にさえいまいち会いたいと思えなくなってしまった。
忙殺されて時間がないというのは確かに理由の一つだが、それよりももう会えないままで自分か相手が死んでしまっても仕方ない、受け入れられると思うようになってしまったのだ。

中には相手が高齢だったり病気だったりで、不義理をしていると取り返しがつかないかもという方もいらっしゃる。でも会いたい会いたいと言われても、こちらが先方を訪ねるのが前提で、仕事の合間にちょっと寄ってよという雰囲気で声をかけられると遮断したくなる。そんなに自由な時間はない。普通の大人と同様に。

友達に会うのもなぜか億劫に感じるようになってしまった。
研究仲間に会うのも。これはテニュアを得た頃からずっと続く悩みなのだが恵まれた立場にいるくせにわがまま言うなと思われるだろうと思うと正直な気持ちも話せない。

自分はいつも相手と仲違いをしたまま片方が亡くなってしまったら悔いが残るだろうと考えて関係を修復しようと努める方だったがもう一切が面倒くさくなってしまった。これいつかは治るのだろうか。それとも孤独を極めて生きていけるようになるのだろうか。