孫社長、わずか5か月で「スプリント経営権放棄」の心変わり

数日前の噂通り、アメリカ第4位のキャリアであるスプリントと第3位のTモバイルが経営統合に合意したと発表があった。

新会社はTモバイルとなり、CEOにはTモバイルのJohn Legereが引き続き就任。持ち株比率はTモバイルの親会社であるドイツテレコムが41.7%、ソフトバンクが27.4%で、これによりソフトバンクの子会社ではなくなる。

スプリントのTモバイルの合併交渉は、3度目の正直でようやく達成されたことになる。

しかし、2度目が失敗した直後、昨年11月に行われた決算会見で孫社長は「経営権を手放してまで合併するべきではない」と、スプリントの再建に強気の姿勢を示していた。今後、IoT時代が本格到来する際に、アメリカで通信事業を持っていることが重要になると力説していたはずだった。それからわずか5か月。孫さんはあっさりと前言撤回してしまった。

孫さんの「前言撤回」は日常茶飯事のことだけにたいして驚きはない。

前回の経営統合話は孫さんが、経営権にこだわったために破談になったと言われている。つまり、孫さんが経営権にこだわらなければいつでも縁談はまとまる可能性を秘めていたと思われる。結果、今回はソフトバンクが譲歩することで、あっさりと話がまとまった。

ソフトバンクがスプリントを買収して以降、スプリントは経営は上向いていたものの、そのほとんどがリストラなどの経費削減が中心であり、マーケティングや技術力で、他の3社を猛追している感は全くなかった。ソフトバンクとスプリントの最大の弱点は「孫さん以外のカリスマ的なリーダーが存在しない」という点にある。仮にソフトバンクがTモバイルを買収し、経営統合できたとしても、新会社を引っ張れる人材がおらず、新会社がジリ貧になるのが、孫さんには見えていたのかも知れない。

それであれば、アメリカ第4位であったTモバイルを飛躍させ、3位に躍り出たTモバイルのCEOであったJohn Legereに経営統合後の新会社を任せた方が、AT&Tやベライゾンを打ち負かすチャンスがあるといえるだろう。

孫社長には、スプリントを立て直せるカネは作れても、人材がいなかったというのが最大の敗因と言えるかも知れない。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30004380Q8A430C1000000/

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