海外動画配信サービスがキャリアと組みたがる理由

 KDDIがNetflixとタッグを組み、Netflix視聴とデータ通信料金をセットにした料金プランを今夏に開始する。25GBのデータ容量とNetflixの視聴料がついて月額5500円(各種割引施策含む)という値付けだ。

Netflixは2015年の日本上陸時にはソフトバンクと提携。今回はソフトバンクとの関係を継続しつつ、KDDIとデータ通信料金とのセット料金を提供してきた。

海外の動画配信サービスとキャリアの提携といえば、NTTドコモとDAZNの組み合わせが成功例といえる。通常、DAZNで契約した場合、月額1480円の視聴料となるが、ドコモユーザーであれば月額980円になる。「DAZN for docomo 」は2017年2月の提供開始から1年1カ月で100万人を突破。サッカーならJリーグや欧州5大リーグ、野球ではセ・パ11球団の主催ゲームとMLB、バスケットボール(Bリーグ)、バレーボール(Vリーグなど)、モータースポーツ(F1など)、幅広いジャンルを網羅していることもあり、視聴者を急速に増やしている。

海外の動画配信サービスが、日本のキャリアと提携したがる理由は主に2つだ。

ひとつは、キャリアによる課金回収システムが優れているという点。日本のユーザーは、いまだにネットでクレジットカード番号を入力するのに抵抗を感じている人が多い。しかし、キャリア課金であれば、キャリアが発行するIDを打ち込む、あるいは暗証番号を入力するだけで決済が完了するので、ユーザーの心理的な負担が少ない。また、ライフラインというべき電話料金を毎月、必ず支払うため、視聴料の回収も安定して行えるというメリットがある。 

もうひとつの理由がキャリアショップ網だ。キャリアは全国に2000店舗以上のショップを抱えている。ショップの窓口で、店員が、スマホの販売と一緒に、こうした動画配信サービスを勧めてくることが結構多い。海外の動画配信サービスが、独自でユーザーを獲得していくにはネット上の広告やテレビCMぐらいしか、ユーザーにリーチできない。しかし、キャリアと組み、ショップで販売してもらえれば、普段、ネットを使わないような層にもリーチできるようになる。「全国に広がる販路」という意味においては、キャリアショップはとても優秀であり、だからこそ、海外動画配信サービスがこぞってキャリアと提携したがるのだ。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31141730Q8A530C1000000/

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