インプレでよく聞く「低速トルク」

低速トルクってなんだよ

動画でもテキストでの記事でも頻出の「低速トルク」
直感では「低速走行時にギア選択がいいかげんでも頑張って力強く加速してくれる」ことを略して「低速トルクがある」と言っているように思っていた

が、諸元表を眺めても低速トルクなんて言葉はどこにも書かれていないので、この際きちんと調べて正しい意味を理解しようと思い立って検索したところ…このページにたどり着く

これがとんでもなくわかりやすい
まがりなりにも大学の理工学部で物理学の授業も履修したはずの自分でさえ、トルクってなんだっけかなくらいのものだが、それでも読めば素人には十分な理解が得られた
以下ほぼコピーだがまとめ

(エンジン)トルク

エンジン内のクランクシャフトが発生させる回転させる力(?)
ある回転数の時点でのトルクを切り取って表示する値
e.g. X Nm/ Y rpm
実際には体感できない数値なのだが、諸元表に記載があるのはこの量

馬力

トルクxエンジンの回転数、つまりクランクシャフトの仕事量
時間と、その時間内でクランクシャフトが何回転できるかという "速さ" に関わる量が入っている
-> つまり実際に体感できる量
体感で語られる「エンジン出力」はほとんどこれを指している

駆動輪トルク

駆動輪が回転することによって発生するトルク
-> 体感できるトルクなので、ライダーが感じる乗り味に関わるのはこちらなのだが、諸元表には記載がない

「低速トルク」がどうこういう文脈で言及されているのは、たいていこの量
駆動輪トルクの話をしているはずの場面で「低速トルクの大きいエンジン」という口語表現が濫用されているのだが、正しくは「低速トルクの大きい車両


低いギアと高いギアの違いの感覚的な説明

エンジン内のクランクシャフトが回転し、そこから最終的に駆動輪まで回転するためのエネルギーが伝わるまでには、様々な部品を経由する
その過程で、エンジンが生み出す回転数は落ちていくので "減速" していく
(一次減速とか二次減速とかいうらしい)

馬力の数値は保存したまま回転数を下げるということは、その分エンジントルクが増す
より回転数を小さくする(落とす)「減速比」が大きいギアは、トルクが大きく発進などに適しているが、高速走行に向かない

で結局低速トルクとは?

そもそも「低速」って何を指している言葉なのか?
よく考えてみると「低速」にはエンジンの低回転と車両の低速走行のふたつがあるわけで、正しく理解するには、まずどういう状況のことを低速と表現しているのかはっきりさせておく必要がある

 記事で想定されていたケースは3パターン

  1. 低車速、エンジン低回転、適切なギアでの加速が良い場合

  2. 低車速、エンジン低回転、積載量が多い状況での加速が良い場合

  3. 高車速、エンジン低回転、高いギアでの加速が良い場合

1と2についてはエンジンが低回転の状況なので、回転数が小さいのに駆動輪トルクが大きい場合だとわかる
単純に馬力が大きい、あるいはギアの減速比が大きいときに相当する

3についても駆動輪トルクが大きいことには間違いないが、ギアは高いという条件がついているので、減速比が小さいことになる
つまり大してエンジンからの回転が減速していないのに駆動輪トルクが確保できている以上、馬力がそもそも大きい状況が該当する
さらにいえば、これはすべての源のエンジントルクが大きいことを意味する

が、それだと一枚余計にフィルタをはさんで議論しているようなもので、まわりくどい
以上のことを考慮すると、インプレしてる人が「低速トルクの大きいエンジン」とか言い出した場合、それは「エンジン低速回転時」の「駆動輪トルク」が大きいことを意味するのだと解釈するのが自然
つまり彼らが言いたいのは「あんまり高回転まで回さなくてもぐりぐりタイヤが回って加速できる」くらいのことなのだろう

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