2022年2月27日(日)

     こうちゃんが「ダンプのキーで玄関開けようとしちゃった!」といいながら帰ってきた。よっぽどボケていたのだろう。以前、合鍵を作ってもらうためにホームセンターのカウンターに差し出したらぎょっとされて、「ダンプの鍵なのです」と慌ててお伝えしたのだ。全体がT字型でちょっと重い。
    今は無い会社にいた頃、父の運転するダンプに乗って、マンションの花壇にオタフクナンテンを植えに行ったことがある。ナンテンよりも小さくて愛らしく、しかも手が掛からない植物なので、集合住宅に向いている。こればかりは最後まで受け入れられなかった防草シートに、十文字に切り込みを入れて地面に被せ、ひとつずつ植えていく。日焼けが嫌で、四国で買ったお遍路さんの傘をかぶって作業した。この数倍の量を一人でこなした職人さんの話を父から聞いてめまいがした。夕日が照る帰り道、ダンプの助手席で感じた充実感は底抜けに純粋だった。
    土曜日は休みではないから週6、ずっしりと重い鍵をダンプに差し込んで朝早く、こうちゃんは出掛けていく。底抜けの純粋は膨大な日常に圧縮されて、例えダイヤになっていたとしても、意識されることなく心の奥に沈んでいるのかも知れない。だから私は、幹線道路のダンプが愛おしい。日々、どうぞご安全に。
     

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