まほろ //211020四行小説

 物言わぬ歯車に首はなく、白い躯体には器用な指が付いていた。外界と遮断され、必要なものばかり集められた場所に彼はいる。
 指示されたことをこなすために作られた彼は、意思も無く、考えることもなく、ただ入力された細かなコマンドを実現させている。首もなければ耳もないので、私の歌声さえも聞こえない。彼の幸せは、彼の手に出来ることを与られることだけだった。必要とされることに応えることだけだった。

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