足りない月 //211117四行小説

 欠けた月が低い位置で仄白く光を放っている。
欠けて足りないと思うのは、それが円になることを知っているからだ。満月を知らなければ、足りないなどとは思わない。
 完璧で完全なものさえ知らなければ、不完全と認めることは無かったのに。きっと欠けたままの姿を美しく完璧だと思えたのかもしれないのに。

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