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海洋灯(まりんらんぷ)歳時記

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季節のうつろいを感じながら、その時々に自分なりに思ったことを記録しています。
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#三十一文字題名

2021雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)若かりしボルト一本絞め忘れ夜中呼び出し春の雷

恥ずかしい話だがこちらに帰ってきたばかりの頃、夜中0時に携帯電話の呼び出し音で起こされた。 出港する船頭から、「修理を依頼された機械は正常に動作しているが、なぜかその機械が動いて困る!」との連絡。 急いで船まで見に行ったところ、原因は機械を止めてあった一本のボルトの締め忘れ。。。 幸いなことに、この船の船頭は声を荒げるでもなく「次から気をつけてくれや!」と言っただけでボルトを締めて何回も頭を下げて許してもらったが、自分の不甲斐なさに泣けてきた。 当たり前のことだが、それ以来最

2021桜始開(さくらはじめてひらく)春の街マリンランプでかろやかに賑わい戻れと願い点す

桜のひとりごと【3行短文】 何時もは 私の 周りに たくさん  の人が 集まり 楽しげ に騒い でるのに 去年 も今年 もなぜか ひっそり その分 うっとり 見てくれ る人も いるけど 一年 に一度 しか逢え ないんだ から精 一杯 賑やか に迎え て欲しい のだけど 夜明けの 来ない日 は無いと 信じて 私は 来年 もここに 咲くから 桜始開(さくらはじめてひらく) 桜の花が咲き始める頃。 桜前線の北上を日本中が待ち望む、お花見の季節の到来です。

2021雀始巣(すずめはじめてすくう)友が逝く父の遺した船に乗り母呼ぶ港に碇をおろす

突然、一人の友人が亡くなった。 少し発達障害があったのだが、みんなに愛され友達に笑いと癒やし与えてくれた。大好きな友人だった。 早くに船乗りだった父親を亡くし、後を継ぐようにその父の乗っていた船に乗った。その実直な働きぶりは誰もが認めていた。 兄弟はいるのだが、それぞれ独立していて家で母親と二人で暮らしていた。 昨年の秋には、その母親も亡くなり葬式で長男として喪主を立派につとめあげたところだった。 追悼(M君へ) 【3行短文】 突然 の友の 訃報に 哀しみ より先 

2021菜虫化蝶(なむしちょうとなる)美味しいと評判のパン食べに行き妙に納得キミの主張

美味しいパン屋さん🥐🍞と評判のお店❣️ 奥さんが能登出身ということで、しばし地元の話で盛り上がる。 パンは主食となりうるのか!?【3行短文】 ご飯派 のボクは どうして もパンは  オヤツで パン大 好きキミ が言った 美味しい パンなら 主食 になるよ 菜虫化蝶(なむしちょうとなる) 青虫が紋白蝶になる頃。「菜虫」は菜を食べる青虫のこと。 菜の花が咲いてまさに春本番。

2021桃始笑(ももはじめてさく)船照らすマリンランプの影が好き山で育ったあなたが笑う

今から十数年前、事情があって嫁が「船のでんきや」で共に仕事をする様になった。 そんなある日、漁船の作業灯を船から外して仕事場で修理していたときのこと。 一人ではどうしてもやりにくかったので、嫁に「ちょっとこれ押さえてくれ」とお願いしたのだが、嫁がこの器具を見て「これ可愛いじゃない、家とかにつけられないの」と言った。 船に日常的に当たり前につけている船舶照明。 自分には特に珍しくもないもので、「これは船につけるもの」と考えていた。 けれど嫁の一言で気づいた。 これは一般の人に

2021蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)長年の夢を叶えて古民家のカフェの戸ひらく啓蟄の朝

以前からインスタグラムを通じてお付合いしてきたT様の夢。 古民家カフェがオープンしました! メールのやりとりだけの事でしたが、ここに来るまではご苦労の連続。 それでも、オープンにこぎつけた努力に拍手!! T様、これからもいろんなことがあると思いますが、頑張ってください! 新しい自分へ【3行短文】 はじまっ たばかり の夢の 続きを 見たいか ら何が あっても 応援 してるよ いつでも 灯りを ともして 蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく) 戸を啓いて顔を出すかのように

草木萌動(そうもくめばえいずる)海と山二人の父と一隅を照らすことしかできない自分

二人の父自分には父が二人いる。 海の父は、五十年以上に渡り船のでんきやを営み、故郷の漁業の発展に尽くした。 山の父とは、二十数年前に縁があって親子になった。 農業に従事し、とりわけ米作りに情熱を傾けこだわり続けた。 そんな二人に共通していたのは、誰にでも愛想良く接してみんなから慕われ頼りにされていたこと。 自分は人見知りがはげしく、人とのコミュニケーションも不得手だ。 それでも「船のでんきやの仕事」を続けていくことを十数年前に亡くした海の父に誓っていた。 先日の山の父の節目

2021霞始靆(かすみはじめてたなびく)涙目で大丈夫よと言うきみと朧月夜がオリオン隠す

義父が突然亡くなってしまったので、一人暮らしになる母親が心配だと言って嫁が実家で寝泊まりするようになった。 自分は毎日その実家に仕事帰りに寄り、晩御飯とお風呂をよばれるようになって一ヶ月が過ぎた。 帰り際にいつもお互いの近況報告をし合うのだが、ふだんは普通に過ごしていても、突然なにげに寂しさや哀しさが押しよせてくるらしい。 朧月夜【3行短文】 昨夜は あんなに きれいな 星空 だったの に朧 月夜が 真下に  見えてた オリオン と涙 をかくす 霞始靆(かすみはじめてた

2021土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)なぜだろう新しいのに懐かしいそんな気がする照明器具

地元でこの土地に欠かせない醤油を醸造している老舗「T醸造」。 もともとは造り酒屋として『能登杜氏発祥の地』と呼ばれていたが、近年は事業を縮小し醤油・味噌の製造販売を主としている。 以前より、醬油を瓶詰する機械などの修理でお付合いさせていただいていたのだが、最近は機械も新しくより専門的になっていて修理も減っていた。 その老舗醸造所の現社長から、まれに蔵を見学に来るお客様もいらっしゃるとのことで、蔵の照明のリニューアルを仰せつかった。 「この蔵の雰囲気を壊したくないから、新しく

2021魚上氷(うおこおりをいずる)コロナ禍の沈む心を温める人の輪繋ぐ縁のランプ

先日、このお小汚い店にお客様が来た。 数年前、金沢で開かれたモデル住宅の展示会でマリンランプを知ったというお客様。 家を新築したいのだけれど、地元の工務店に頼もうどうか迷って金沢の展示会まで足を運んだとのこと。 そこでマリンランプはもちろんのこと、いろんな場所に様々なアイディアが盛り込まれた理想のモデル住宅に出会ったそうだ。 そこでマリンランプについて説明を受けていると「どこからいらしたのですか?」と聞かれ「輪島からです。」と答えると「このランプは輪島の船のでんきやさんから仕

2021黄鴬睍睆(うぐいすなく)ウグイスがビルの谷間で鳴かずとも船舶ランプが春を告げる

もともと漁船で使っているランプが、こんな都会的な場所に使われるなんて思いもしなかったです。Y様、設置写真ありがとうございます! うれしいミスマッチ【3行短文】 都会に は似合う はずない オシャレ  と無縁 のランプ がビルの 谷間に あたかも 春を告 げるよう に灯る  黄鴬睍睆(うぐいすなく) 山里で鴬が鳴き始める頃。 春の訪れを告げる鴬は「春告鳥」(はるつげどり)とも呼ばれます。