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海洋灯(まりんらんぷ)歳時記

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季節のうつろいを感じながら、その時々に自分なりに思ったことを記録しています。
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#私の仕事

2021蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)海白み雲の割れ間の走り梅雨思いを馳せる北の大地へ

北海道のお客様から注文をいただいた。 コロナのせいでここのところ長い間旅行にも行けず、おまけにしとしとと雨が続き外出もままならない。 注文いただいたマリンランプスタンドを組み立てながら「この時期の北海道はいいだろうなぁ!」と、早くコロナが終息して自由にどこでも行ける日々がくることを望んで止まない。。。 密かな現実逃避【3行短文】 コロナ禍 であめが シトシト どこにも いけない ひがつづ ききもち がめいる そんなひ はちゅう もんして もらった ランプを くみたて は

2021竹笋生(たけのこしょうず)夏という季節は好きだけど実は暑さに弱いフネノデンキヤ

ようやく過ごしやすい季節になってきて、海も凪が続き出漁の回数も増え市場にも活気が戻ってきた。 本当に暑くなる前のこの時期に働かなくてどうするの?と言う感じで「船のでんきや」も忙しい日が続いている。。。 肉体労働者【3行短文】 きがつく とうわぎ をぬいで しごとを している うごくと あせをか いている それでも あさばん さむさを かんじて りびんぐ のふぁん ひーたー かたずけ られずに まいにち じぶんで おかしい とおもう けれども このじき やっぱり いそが

2021鴻雁北(こうがんかえる)どれだけの歳月一人向き合うも存在意義のわからぬ自分

決して病気ではではないと思うのだが、ふとこんなことを考える時がある。 自分は今、一人でこの仕事をしている。 10年ほど前までは、いわゆる従業員が何人もいて忙し日が続いていたのだが、じわじわと不況と老齢化の波がやってきてその従業員もいなくなってしまった。 もちろん、船の隻数も減ってきて仕事自体がなくなってきているのだが、自分の商売のやり方がまずいのだと思う。 だからといって、商売のやり方を一から変えることはやりたくない。 その時々で任せられる仕事を責任をもってやっていく。これ

2021雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)若かりしボルト一本絞め忘れ夜中呼び出し春の雷

恥ずかしい話だがこちらに帰ってきたばかりの頃、夜中0時に携帯電話の呼び出し音で起こされた。 出港する船頭から、「修理を依頼された機械は正常に動作しているが、なぜかその機械が動いて困る!」との連絡。 急いで船まで見に行ったところ、原因は機械を止めてあった一本のボルトの締め忘れ。。。 幸いなことに、この船の船頭は声を荒げるでもなく「次から気をつけてくれや!」と言っただけでボルトを締めて何回も頭を下げて許してもらったが、自分の不甲斐なさに泣けてきた。 当たり前のことだが、それ以来最

2021土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)なぜだろう新しいのに懐かしいそんな気がする照明器具

地元でこの土地に欠かせない醤油を醸造している老舗「T醸造」。 もともとは造り酒屋として『能登杜氏発祥の地』と呼ばれていたが、近年は事業を縮小し醤油・味噌の製造販売を主としている。 以前より、醬油を瓶詰する機械などの修理でお付合いさせていただいていたのだが、最近は機械も新しくより専門的になっていて修理も減っていた。 その老舗醸造所の現社長から、まれに蔵を見学に来るお客様もいらっしゃるとのことで、蔵の照明のリニューアルを仰せつかった。 「この蔵の雰囲気を壊したくないから、新しく

2021魚上氷(うおこおりをいずる)コロナ禍の沈む心を温める人の輪繋ぐ縁のランプ

先日、このお小汚い店にお客様が来た。 数年前、金沢で開かれたモデル住宅の展示会でマリンランプを知ったというお客様。 家を新築したいのだけれど、地元の工務店に頼もうどうか迷って金沢の展示会まで足を運んだとのこと。 そこでマリンランプはもちろんのこと、いろんな場所に様々なアイディアが盛り込まれた理想のモデル住宅に出会ったそうだ。 そこでマリンランプについて説明を受けていると「どこからいらしたのですか?」と聞かれ「輪島からです。」と答えると「このランプは輪島の船のでんきやさんから仕

2021黄鴬睍睆(うぐいすなく)ウグイスがビルの谷間で鳴かずとも船舶ランプが春を告げる

もともと漁船で使っているランプが、こんな都会的な場所に使われるなんて思いもしなかったです。Y様、設置写真ありがとうございます! うれしいミスマッチ【3行短文】 都会に は似合う はずない オシャレ  と無縁 のランプ がビルの 谷間に あたかも 春を告 げるよう に灯る  黄鴬睍睆(うぐいすなく) 山里で鴬が鳴き始める頃。 春の訪れを告げる鴬は「春告鳥」(はるつげどり)とも呼ばれます。

2021東風解凍(はるかぜこおりをとく)いつ灯るマリンランプを待ち焦がれ春は名のみの風の寒さよ

プライベートはいろいろあったが、一段落してパソコンを開くと出荷を待っているメールが山盛り。 ありがたいことに、新築やリフォーム・リノベーションの照明にマリンランプがどんどん広がっているのを感じる。 船のでんきやの早春賦【3行短文】 まだかな と君が 待ち焦が れている 薄暗 い春の 陽光 を浴びて  つけかけ のランプ 鈍色 に光る 東風解凍(はるかぜこおりをとく) 春の風が川や湖の氷を解かし始める頃。 「東風」(こち)とは春風を表す代名詞。

2020春分 天邪鬼(アマノジャク)

嫌なことから逃げても碌なことにはならない! かれこれ30数年前、就職の報告と父の様子を見に帰郷した時のこと。 今まで進路について何も言わなかった母が 「父はこれから人工呼吸器を離せなくなる。 貴方は長男なんだからこの店の将来のことも考えてください。 この仕事をよく思っていないのもわかるけれど、貴方にしかできないこともある。 嫌なことから逃げても碌なことにはならないのよ。 後で必ず自分の身に降りかかってくるのだから・・・」 と言われました。。。 それなら、ず~

2020啓蟄 二寒五温!?

ここ数日はわりと穏やかな日が続いたのに、今日は時化模様。。。 ここのところ例の新型コロナウィルスの影響で、酒場の店などでは宴会や飲み会のキャンセルが相次ぎ魚も売れないようです。。。 気になる天気予報は、久々の雪マーク!? それでも、週末はまた気温も上がってくるとか・・・ よく“三寒四温”を繰り返しながら“春”がくると言われますが、 もともと“三寒四温”とは、 中国や朝鮮半島では冬場の気候を表す言葉だったらしく 日本人が言葉の並び方から“春”に近づく意味にしたらしいですよ。

2020雨水 照らし続けるもの

昨日の「晴れたかなぁ」と思ったら、いきなり激しく雪が降りだした... そんな「まったくおかしな天気」とは一変、 今日は風もやんで穏やかな凪の日和になりました。 先日、船の機関場で一緒に仕事をしていた年配の職人さんに 「ちょっと、そこの“照らし”取ってくれ!」 と言われて何気なくソレを渡したのですが、 後で考えると、ソレって普通は違う使い方をする言葉ですよね!? 昔からうちでは作業灯のことをそう呼んでいます。 普段から無頓着に使っていたのですが、 改めて本質をつ

2020立春 日和を読む・・・

日和をよむ・・・凪と時化のお話 今日は、本当に久しぶりにお日様が顔を出して良いお天気でした。 が、漁船はすべて沖留め。出漁していません。 案の定、午後から天気が一変。それまでの穏やかの晴れていた空がにわかに曇りだし、いきなり大粒の雨となりました。 昨今さわがれている、地球温暖化の影響でもなさそうです。 漁師と一緒のような生活をしていると、一般の方に理解できないような常識が数々あります。。。 沖というのは不思議なもので、どんなにいいお天気でも風が強ければ海が時化(しけ

2019寒露

もうけつしてさびしくはない なんべんさびしくないと云ったとこで、またさびしくなるのはきまってゐる ~Kenji Miyazawa

2019立秋