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海洋灯(まりんらんぷ)歳時記

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季節のうつろいを感じながら、その時々に自分なりに思ったことを記録しています。
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#日記

2021寒蝉鳴(ひぐらしなく)移りゆく季節感じて海の上思い通りに波は動かず

この夏休みの出来事【3行短文】 このなつ やすみは おおあめ とコロナ いすわり どこにも いけずに おわった けれども ぎりちち はつぼん ぶじおえ ようやく かたのに おろせた それから ねんがん かなって なみにも のるには  のれたが やっぱり おもいど おりには  いかない ものだと つくづく かんじる なみまつ あいだに みたうみ いろこく きせつは かくじつ にあきへ とかわる 寒蝉鳴(ひぐらしなく) カナカナと甲高くひぐらしが鳴き始める頃。 日暮れに

2021涼風至(すずかぜいたる)明日にはコロナワクチンその前に痛い思いの予行練習

無理のできないお年頃【3行短文】 きゅうに みぎあし アキレス けんつう いたくて まともに たてない くらいに としとる とからだ のいろん なところ クッショ ンせいが なくなり こすれて いたくな るという いしゃの せんせい でっかい ちゅうし ゃブスと かんぶに さしこみ これまた いたい! のなんの おかげで すこしは いたみも やわらぎ どうにか あるける ようにな りました 涼風至(すずかぜいたる) 涼しい風が吹き始める頃。 まだ暑いからこそ、ふとし

2021菖蒲華(あやめはなさく)風通し良かれと開けた部屋の窓思い出すべて濡らす夕立

孝行息子?のコーカイ日誌【3行短文】 しせつに はいった かあさん のへやの まどべは だいすき なほんや アルバム ぎっしり せいぜん とならん でいます きょうは あさから ピーカン おてんき こんなひ はかぜを とおして おこうと まどぜん かいにし しごとに でかけた もうすぐ しごとお わるころ とつぜん はげしい ゆうだち いそいで かえった けどビチ ョぬれの へやにこ とばなし! 菖蒲華(あやめはなさく) あやめの花が咲き始める頃。 端午の節供に用い

2021虹始見(にじはじめてあらわる)何もない場所だけれどここにしか咲かない花があると言う君

運命の人【3行短文】 季節の 変わり目 も気づか ないほど ボンヤリ している あなたは 今でも 自分が 何もの なのかわ からない と言うか ら誰も 知らない 場所で 誰にも 知られず 咲いてる お花を 見せてあ げたくて そしたら あなたも 気づいて くれるわ 名もない 花でも  知る人 が見れば 世界に ひとつの その人 にとって の宝 ものだと 虹始見(にじはじめてあらわる) 雨上がりに虹が見え始める頃。 淡く消えやすい春の虹も次第にくっきりしてきます。

2021霞始靆(かすみはじめてたなびく)涙目で大丈夫よと言うきみと朧月夜がオリオン隠す

義父が突然亡くなってしまったので、一人暮らしになる母親が心配だと言って嫁が実家で寝泊まりするようになった。 自分は毎日その実家に仕事帰りに寄り、晩御飯とお風呂をよばれるようになって一ヶ月が過ぎた。 帰り際にいつもお互いの近況報告をし合うのだが、ふだんは普通に過ごしていても、突然なにげに寂しさや哀しさが押しよせてくるらしい。 朧月夜【3行短文】 昨夜は あんなに きれいな 星空 だったの に朧 月夜が 真下に  見えてた オリオン と涙 をかくす 霞始靆(かすみはじめてた

2021鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)忘れかけていたあの日の約束

ようやく少しづつだが、日常に戻りつつある。 今はまだ実感がわかないのか、普段通り忙しく立ち振る舞っている義母とわが嫁。それでもふとした瞬間に、哀みが襲ってくるらしく実家で二人暮らしている。 日曜日に嫁の大事な試験があったので車で金沢まで行ってきた。 帰り道パーキングに寄った場所で見た夕日。 夕日に見いっていると、この寒い中でも寒さも感じない熱い二人の姿に気づいた。 30年前に義父と交わした約束と、あの時の熱い気持ちがよみがえってきた。 熱い約束【3行短文】 亡き義父 

2021水沢腹堅(さわみずこおりつめる)その人の為人(ひととなり)は死ぬときにわかるもの

コロナ禍のご時世だから、三密を避けるために家族葬にしようと思っていた。 しかし親戚の人から「この人がどれだけ自分の事より他人のために働いたか、あんたは知らんのか?」と言われ、セレモニー会場を借り葬儀も公にした。 時節柄できるだけの間隔をあけて焼香だけの通夜と本葬となったが、いつまでも続いた焼香の長い列に義父の大きさを知った。 葬儀のあとから「知らんかった!」と言って、わざわざ家にきてくれて義父の遺影の前で涙を流してくれた人がいた。 為人は死んではじめてわかるもの【3行短文

2021款冬華(ふきのはなさく)喪主2/4

今から30年ほど前、初めて義父にあった。 婿取り娘をもらいに勇気をだしてその実家まで行った時だった。 「この家は百姓やけど、儂で十九代続いている。 娘しかできんかったさけ、半分あきらめとったけど。。。 反対しても娘がどうしてもあんたと一緒になるってきかん。 儂の負けや。よろしく頼む!」と言われた。 それ以来、自分は四人の親の面倒を見ると心に決めていた。 その義父が亡くなった。 脳出血だった。 朝まで元気にしていたのに、あまりに突然のことだった。 13年前に本当の父をおく

2020鱖魚群(さけのうおむらがる)海に降る雪

時化(しけ)が続く。 ここ一週間以上、風はゴーゴー空からバタバタ。 沖に出られる状態ではない。 時間があると考えなくても良いことが頭をよぎる。 向かい風が強すぎる。。。 海に降る雪【3行短文】 落ちゆく 場所も 選べず 降る雪  何にも 染まらず 虚しく 溶けゆく それ故 幸せ なのかも しれない  鱖魚群(さけのうおむらがる) 鮭が群がって川を上る頃。 川で生まれた鮭は、海を回遊し故郷の川へ帰ります。

2020熊蟄穴(くまあなにこもる)明るさを見て暗さを見ず

冷たい雨に霙が混じっていよいよ雪に変わり、熊ではないが冬籠りの季節になった。 メールで寄せられるお客様からの問合せに答えるためにわからない言葉をググッている時、ある言葉を見つけた。 新日本製鐵の元社長で経団連の会長も務められた斎藤栄四郎氏の言葉。 今日失敗しても、明日には明るさを求める。 人の欠点よりも長所を見る。 その方が、人生楽しいじゃないですか! 明るさを求めて暗さを見ず【3行短文】 不器用 で何を やっても 失敗 ばかりの 男が 唯一で きるのは ただただ コツ

2020金盞香(きんせんかさく)紅葉狩りの途中でふと思った大切なこと

コロナ禍の中、旅行の好きな彼女は、なかなか遠出ができないことに少しストレスを抱えている。 「紅葉がきれいなんだって○○寺、行こうよ!」そう言って彼女は、無精者の自分を近くのお寺まで連れ出してくれた。 知り合ってから三十年以上経つかもしれない。 思えば自分が生まれてきて一人でいるより一緒にいる時間が長くなっている。 「あんたのこと、誰よりも私が一番知ってるのよ!」 それはそれで怖いけれど、今は「それでもいいか・・・」とふと思う。 こいぶみ【3行短文】 彼女 の後ろ 姿を 

2020霎時施(こさめときどきふる)ただボーっと海を眺めているのが好きなんだ

こんな日 は誰も いないと 思って 近くの 海岸 先客 海鳥 餌探す 雨上が りの波 打ち際 霎時施(こさめときどきふる) ときどき小雨が降る頃。「霎」をしぐれと読むことも。 ひと雨ごとに気温が下がります。

2020霜始降(しもはじめてふる)あの頃の熱さ再び…

朝から 冷たい 雨降る その日に めったに 買わない 雑誌の グラビア 大事に 切りとる アラカン 少年 霜始降(しもはじめてふる) 山里に霜が降り始める頃。 草木や作物を枯らす霜を警戒する時期です。

2020蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)心の波風を受け止めざるえない男の立場

久しく 無かった 夫婦の 諍い あんたの 現実 逃避の 言い訳 いちばん わかって いるのは 私よ 妻の 言葉に いまさら ながらに 自分を 諦め きれない 男は 返せる 言葉が 見つから 無かった あの頃 かわいい 寝息も 今では 遠慮 なくなり 大きな 鼾に 悲哀を 感じる 夫婦の 寝室 蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり) 戸口で秋の虫が鳴く頃。 昔は「こおろぎ」を「きりぎりす」と呼びました。