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最初の2の人


雨の日の満員電車。誰かの傘の先からリズム良く落ちる滴が座る私のつま先を濡らしている。
足を少し横にずらせば靴下まで濡れずに済んだのに何故かその傘の先をボーッと眺めながら何度も何度も思い出す言葉をまた思い出していた。

今日、なんか疲れた。



社会人も2年目になる頃、私はかなり不安定でかなりダメになっていた。
「それなら仕事辞めたらいい」と100回は言われたと思う。
でも本当にやばいとき、たぶん人は逃げ方を忘れる。逃げるという選択肢すらなかった。
鬱にならなかっただけマシ。

とにかく何が苦しいのか、何がこんなに嫌なのかが分からない。


ある日、仕事終わりにコンビニに寄ってお弁当を見ていた。ずっとずっと見てた。全く分からなかった。自分が食べたい物が、そもそもお腹が空いているのかも。ていうか

なんで私ここに立ってるんだっけ??

その瞬間に頭から変な音がして、ドバッと涙が出てきて、結局何も買わずに家に帰った。
カバンの中のスマホを手探りで探しながらとにかく早歩きで。



「なんで泣いてるん」
聞き馴染みのある関西弁が私を少し落ち着かせた。
私から電話かけたの多分その時が初めてだったかも。

まとまらない気持ちを全て吐露した。自分でも分からないこと、他の誰かが分かるわけないのに。
だから最初から答えなんて求めてなくてただ聞いて欲しかっただけだ。我ながら面倒な女だと思う。

それなのにその人は答えを出してくれた。

「皆に好かれようとしなくてもええよ、そんなこと無理だし」

「2:6:2って知ってる?2が○○のことが好きな人、6がなんとも思ってない人、最後の2が嫌いな人」

「最初の2の人を大切にしてな。あとの8割のことで悩まなくてええねんで」

よく聞く”カレーでさえ嫌いな人がいるんだから皆に好かれるなんて無理”という励まし。あれじゃ抽象的すぎて無理だった。
そもそも私はカレーでもハンバーグでもない。

私の性格上、必要な言葉はもっと具体的なもので、まさに2:6:2の法則。

どうやら私は全人類に好かれようと無理をしていた、らしい。

ごちゃごちゃしていた頭の中が白く、明るくなる。
そこに「最初の2割の人がここにおるで」という言葉で色が着く。また救われた。

───「そうだね。ありがとう。私もだよ。」




つま先に落ちる滴が勢いを無くした頃、頭の中はスッキリしていた。
それなのに”最初の2”の人とはもう会うことも会話することもできない。

だから頭の中は白く、空っぽなまま。

私は言葉がすきだ。
言葉選びから垣間見える性格が、思想がすき。
あの時私を救ってくれた言葉たちがすき。

今はどうだろう。

2:6:2

この言葉を思い出すと、今その人が何割のところにいるのか知りたくなる。知りたくなって、でもきっともう最初の2割ではないだろうなって絶望する。


大好きだった言葉たちが、思い出しただけで苦しくなる”呪い”になった。

でも嫌じゃない。むしろ、そんな呪いでさえも可愛らしいって思える。
「また思い出してやんのw」っておかしくなる。


私の方はまだ
最初の2のままだから




新生児、新入生、新社会人のみんな!
それ以外のみんなも!

馴染めないって悩んでない?
大丈夫よ、話しかけなさい
みんなお互いに話しかけられるのを待ってるよ!

なんか、とりあえず…「ウォ二ョンとかすきです」って言っとけばどうにかなるよ知らんけど!
私が高校生の時はさほど好きでもないのにクリープハイプ好きって言ってたよ!!
そのお陰でサブカル系の友達多い!!!

あと私みたいにこのバカでかい社会全体から好かれようとしないで!教えたでしょ2:6:2

ああ、自爆。また思い出した病みそう✨✨✨


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