はじめての刑事弁護~起訴前編~

第1 序
 私は、74期司法修習の過程を終え、二回試験を無事突破し、当無職から当職になりました。当職になると、地域によっては、国選弁護をある意味ノルマのようにこなすことが求められることでしょう。当職は、7月中旬から下旬にかけ、はじめての国選弁護人を務めました。その経験を、当ノートに記録として残しておこうと思います。なお、末尾に私が国選弁護を担当した後、「初回接見で聞いておくことをリスト化し、持参して聞き取りをしてメモしたら楽なんじゃねえか」ということで、Wordにて「刑事弁護聞き取りメモ」的なものを付録として用意しましたので、興味がある方はご活用いただければと思います。気まぐれで編集し、付録を取り外すかもしれませんが、そこは無料だから仕方ないということでご了承ください。

 なお、仕事イヤイヤ期なので、勤務時間中に堂々とサボって書きました。
第2 国選弁護人に、おれはなる
 1 国選弁護人に選任されるってどういうこと?
 弊地では、ある日にちに「当番」として割り当てされます。その「当番」の日、クソテラスもとい法テラスから「こういった事件っス。●●罪で、××警察署に勾留されてます。被疑事実は~~っすね。国選弁護引き受けてくれるんなら名前とか書いてFAXよろしく(意訳)」というようなFAXが、事務所に送られてきます。いい迷惑です。
 クソテラスもとい法テラスから送られてきた紙にしぶしぶ国選弁護人やることを受諾する旨の返事をしてあげると、裁判所から国選弁護人に選任しますってFAXが送られてきます。ナマイキですよね。殺意すら覚えました。
 2 最初に何をすればええの?
 クソテラスもとい法テラスから送られてきた紙に、被疑者を勾留している警察署が記載されていますので、ググって電話番号を確認するか、ご自身の単位会のホムペを確認するかして、電話番号を調べます。書いておけよクソテラス、ぶっ飛ばすぞ。
 さて、被疑者を勾留している警察署の電話番号を把握したら、電話をかけます。その際「弁護士の●●です。お世話になっております~。えっとぉ、そちらに勾留されておる××との接見をしたいんですが、すんません…勾留の担当につないでもらえないでしょうか。」と言います。あくまで下手に出る。ポリコウ許せねえ思いはあっても下手に出ましょう。向こうも仕事なので、気持ちよく仕事をさせる必要がありますから。むしろ、お時間を頂戴しているのは弁護士の方だって自覚しましょう。
 接見の予約をすることができる当地では、「すんません、●時~●時まで空いておるでしょうか。」とお尋ねし、予約します。
 3 最初にもっていくもの
 被疑者ノート、聞き取りメモ(自作)と筆記用具はマストです。もっていくものではないのですが、何を聞き取るのか、パッと思う懸念事項は何かを頭に浮かべておき、接見時にきちんと聞けるように何度もシミュレートしておくといいかもしれません。
 4 いざ、接見へ
 ここでも下手にでます。「こんにちは。接見に参りました。」と。あとは警察官の人の指示に従い、済ませていく。
 なお、接見前に、接見の紙を書くのですが、国選弁護の場合、クソテラスもとい法テラスに報酬請求をする関係で、いわゆる「下敷き用紙」ですかね、あれを敷いて書く必要があります。じゃないとタダ働きになりますから。あいつらワシを信用しておらんのか。クソナマイキだなあ。
 5 接見での対応
 相手によると思いますが、被疑者とはいえ「生身の人間」を相手にするので、礼節は大事だと思います。また、被疑者の感情の機微は結構大事だと思っています。接見室で言い争いをしていても仕方がないので、まずはきちんと向き合いましょう。
 ただ、あまりに礼節をもって対応すると要求する人が現れます。その際には、「あくまでも私は、あなたの刑事弁護人です。あなたの身柄解放や刑を軽くするための活動が仕事の範囲です。そのため、~はしてあげたいとは思うけれども、仕事の範囲ではないので、やってあげることができません。ほかの弁護士はやってくれたと思いますが、私は仕事をしっかりと取り組むため、仕事の範囲外についてはやらないことを心がけています。それらが気になるなら、あなたの身元を引き受けてくれる人やご友人にお願いしてみましょう。その程度ならやってみることはできますよ。」と逃げるようにしていました。できないことはやらない。その線引きを自分の中でもっておくといいと思います。ちょっと頑張りすぎて疲労しちゃった経験から申し上げておきます(吐血)。
第3 実際の事件処理
 実際に私が行ったこととして、(準抗告をするのは置いておくとして)身元引受人の確保、被害弁償に動く、検事とのやりとりの3つです。ほかにもあるでしょうが、あくまで私のはじめての国選弁護ということですので、ご了承ください(というかビギナーズ読んだりメーリスで確認したらよくね?って思っちゃった☆)
 1 身元引受人の確保に動く

 結局のところ、私は公判請求されることなく、略式起訴で終わったのですが、身元引受人の確保を急いでいました。というのも、初期段階の見通しでは、公判請求の可能性がやや高く、そうすると、今後の生活環境をどうしていくのかという一般情状関係で、被疑者の管理監督をしてくれる人を、証人としてお願いする必要があるからです。証人としてお願いできるか、との関係で、被疑者の身元引受人になってもらえるか交渉し、前向きか拒絶かは後の防御活動で重要になりますからね。

 当方はなんとか略式起訴に落ち着かないか…と思っていたものですから、検察官の終局処分の関係で、今後の生活環境で、当方に+に作用する(「公判しなくてもいいのではないか」)ための素材にもなりますので、略式起訴を狙う観点からも必要不可欠かつ略式起訴を(勾留延長させず)得るため、勾留延長するかどうかの決裁の前に確保しておく必要があると判断しました。ゆえに、いっそう急ぐ必要がありました。

 これは例えばなんですけれど、身元引受人を2名、親と会社で得られそうだと考えたとき、どっちから声をかけるべきか、というのは考えました。前科前歴が幾多かついていると、親は「またか」となるでしょう、会社は「解雇するか」となるでしょう。どちらからいくべきかは慎重になるべきだと思います。ただ、その判断の材料は、被疑者からの話で考えなければならないので、人物関係についてはよくよく丁寧に聞き取りをする必要があると思っています。人物関係を知るのは私のような無能新人弁護士ではなく被疑者だからですね。このように、身元引受人を2名確保するぞ、としても、誰から攻略するのか、その攻略の見込みはどうなりそうかをしっかりと検討の上、戦略を立ててやらないと私のように失敗します(リカバリ-しましたけど)。

 いろいろごちゃごちゃ述べておりますが、身元引受人がいる、ということは、被疑者が娑婆に戻ってきたときに「帰る場所」となるものですから、ここはしっかりとやってあげたいと、経験して思いました。情状の関係云々置いておいて。
 2 被害弁償に動く

 被害弁償の動き方として、被害者の連絡先を把握する必要がありますが、その手段として、①担当刑事に聞く②担当検事に聞く③被疑者が知っていれば被疑者に聞くのが考えられます。ここは検察修習を思い出しました。

 被害者とまず接触したのはだれか、と。警察ですよね。検事は事件が上がってきてから記録を検討し、必要があれば話を聞く、という感じだったな、と。やはり現場のことは現場の人に聞く。これに尽きると判断し、私は刑事に聞く、を選択しました。まあ、それ以外にあるのか、という話ですけれどもね。

 ただ、警察に聞くにしても、警察の組織には留置の係と刑事の係に分かれていますので、ご注意を。1回の電話で済ませる、という想いはあれど、焦らず、初回の接見では留置の係だけにつなぎ、初回の接見後にゆっくり考えてから刑事の係につなぎ、聞きたいことやお願いすることを丁重にお話をすることが重要かなと経験して確信しましたので記載しておきます。この辺ビギナーズに書いてなかったような…。
 3 検事とのやりとり

 検事とのやりとりなんですが、起訴するかどうかは検事さんが決めます。だから、検事さんが何を考えているのか、可能な限り情報収集を図ります。ぶっちゃけて教えてくれる場合ですと、非常に楽です。

ワイ「ぶっちゃけ検事さんはどう考えてますのん?」

検事さん「罰金を視野に入れてますねえ。」

ワイ「(罰金を視野に入れている!?どういうことや、もしかすると略式ワンチャンって趣旨か!?)なるほど、ありがとうございます。調べはまだでしたね。当職、被害弁償は済ませ、身元引受人2名確保しております。うち1つは勤務先です。事情としましては…(略)。ということを、意見書と共に資料として送付させていただきます。FAXはいずこへすれば・・・?ああ、なるほどですね。お忙しいところありがとうございました。失礼いたします~」

ってノリで進めていました。めっちゃいい検事さんでした。

第3 クソテラス許さない

 前歴・前科がある、さらには執行猶予期間中であるにもかかわらず、ワイは略式起訴に留めました。国選弁護人になってから8日目で片付けました。すげえ、流石ワイ、敏腕弁護士!!

 この敏腕っぷりにクソテラスもとい法テラスさんは加算してくれるかなと思いきや、被害弁償のみ加算があって、なんと9万円くらいでした。

 クソテラス許さない。

第4 追記

 はじめての国選弁護の際、接見時にメモ用紙があると便利かな、と思って最低限これだけ聞いておけば処理方針は立てられるかな、というメモ案を用意しました。必要があれば、勝手に使ってやってください。


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