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夏のパイロット2
僕は宇宙船の中でピザを食べていた。お行儀悪く手も口元もベタベタにして。安い市販の冷蔵ピザにシメジをひとパックほど乗せて焼いたもの。作り方からして雑で、滅茶苦茶で、たのしい。
ねえ僕らに必要なのはこういうことなんじゃないのかなあ。手や口元を汚して、くだらない、ちょっとお行儀のわるいことでベタベタになるような。なるべく安い既製品のピザに、ああそうだ、買い物を一緒にするんだ。好きなトッピングの材料をバスケットに放り込んで、それから飲み物も買って。どう考えてもピザには向いてないトッピングもいくつかあってさ。なんだよこれー、とか笑って。
地球、ずいぶん遠くなっちゃったな。
あの子と約束がしたいな。こんなときに約束なんてすると、なんだか叶わなくなるんじゃないかって気がしてくるよ。でもそんなことは恐れずに約束したいんだよ。ウェットティッシュや紙ナプキンをたくさん用意してさ、君と僕で汚れる遊びをしたいな。
あんまり汚れすぎてシャワーを浴びて、あとは昼寝でもしたいよね。夕方、部屋が真っ黄色に染まる頃に起きて、ベランダの朝顔のカーテンの向こうから蝉時雨が聞こえてきて。
今度は「アイスでも買いに行こうか」って。
地球から離れていくと日常的なことに恋慕するね。非日常な僕の、くだらない日常を送ります。
「今度、この任務が終わって帰ってきたら、一緒にピザ遊びをしませんか。」
(文/薄荷水)
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