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【画廊探訪 No.175】ものとこころ、精神の回廊   ―― 小川千明出品作品に寄せて  ――

ものとこころ、精神の回廊
―― assort of DOHANGA“銅版画の詰め合わせ” Gallery Face to Face企画
     小川千明出品作品に寄せて  ――
襾漫敏彦

 外へと一歩踏み出し、ものにこころが関わるとき、精神が生まれる。表現、そして、アートは、わたしの精神と深くつながっている。美術、芸術において、同じような作品を作ることもできるであろうが、アートが、一回性であるのは、ものでつくられた表現の中に、わたし自身が存在しているからであろう。



 小川千明氏は、銅版画家で、一版多色刷りを中心に制作している。時間の違いを利用して凹凸の段差をつけて腐食させた銅版にいくつかの色をのせていく。深い凹部にインクを詰め拭き取った後、油等で硬さを調節したインクを凸部を中心に弾力の異なるローラーで重ねぬりしていく。柔らかいインクが硬いインクをはじいて、複雑で淡い色の勾配があらわれる。





 銅版画のプレスは、一定の圧の力でなされる。けれども、この一版多色刷りの版は、図像や色の選択や濃淡以上に微妙な調節によってつくられる。つめこんだインクの拭き取り、上塗りする、下塗りするインクの硬さ、ローラーの選択、そして加重のかけ方、ひとつひとつ、その時その時の感覚に伴う判断が重ねられる。その一回性がゆえに、版をプレスの中に手離してなお、精神のつながりの痕跡がにじみ出す。

 小川は、風景や外界が、表象するような表現を続けていた。そこでは明確な形が、境界が、イメージの外骨格のように刷り出されている。
 最近モノタイプを試していたが、あらためて一版多色ずりに再会するように戻ってきた。出会い直しの後、そこにあるもの、事物は、形でなく、そのものの持つ流体のように動いては潜む力、内面としてあらわれている。
 ものから離れてものに触れ直して、小川はものをあらためて、こころとの交わりの中でとらえ直し、表現は形のはざまで揺れるように動く微妙な精神として覚悟したのかもしれない。



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小川千明さんのWEBサイトです。


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