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表現再考:門を壊して、姿を消して


  啓蟄の初候、蟄虫啓戸と対をなすのが、蟄虫坏戸です。巣ごもりをしていた虫が、春の陽気に誘われて、土中のお家の扉を開けて外にでてくるのが蟄虫啓戸でしたが、冬の訪れを前にして、土の中に姿を隠すのが今の頃で、それを蟄虫坏戸と表現したようです。

 姿を隠すとは、冬眠のようにイメージしたくなりますが、卵を産み落とし命をおえるような形や、蛹の形もあるでしょう。ひとつひとつの生命がおわっても、いのちの連環がつながっていく、暦に表現された、時の循環は、生命の連環でもあります。

 蟄虫坏戸の坏は、杯につうじるようですが、中国では、土でつくった何かを盛る器という意味よりも、壊すとか、壊れているとか、劣等とか、悪いという意味があり、機能を果たせなくなったというイメージがあるようです。

 坏戸は、これまで使っていた戸を壊して、使えなくするという体で考えればいいのかもしれません。

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