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【画廊探訪 No.167】光は、絶えず全てを開く――高千穂神楽 工藤省悟作品に寄せて――
光は、絶えず全てを開く
――「面の界」ギャラリー桜の木企画
高千穂神楽 工藤省悟出品作品に寄せて――
襾漫敏彦
天照大神が、世を嘆き隠れた天岩戸の前で踊った天鈿女命の舞が、「神楽」のはじまりとされている。欠けた月も、再び満ちる。それまでの努力と苦難の果てに手にいれた豊穣を、闇からあらわれる新生の光として言祝ぐ人々の心意気があらわれる。
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高千穂は、天孫降臨ゆかりの地として、神事の行われてきた場所であった。工藤省悟氏は、高千穂神楽の「神楽面」を作り続けた天岩戸木彫りの四代目の面打師である。
高千穂神楽の神楽面は、古風というか、質実さを感じると共に、それを支える柔らぎを感じる。岩戸を遠くまで投げ飛ばした手力雄命(たぢからおのみこと)の面は、木をそのままに彫り抜いた力強さと輝けるが如き気魄に満ちている。嫋やかな天鈿女命の面は、夢現(ゆめうつつ)の中で、木肌に静かに浮きあがる。
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日本中に数え切れぬほど、祭りや神楽はある。いや、あった。近代化の中で、多くの村、共同体が廃れるにつれて無数の祭りや神楽の灯もひとつひとつ消えていった。
それでも、山間いの夜の帳の中に、灯されては佇む輝きにひきよせられるように集い、人々は幻想の中で、見えるものの向こうに見るべきものを見る。
芸能、舞踏、表現というのは、これまでの積み重ねを糧として、それら全てを身に受けて、次の一歩に渾身の一振りを打ち出すことであろう。ノミの一彫りに力をこめて形をあらわし、舞うが如き柔らかき筆の動きで世界を彩どる。それは、初代から受けつがれた技に支えられつつ日々重ねられる創造であり、伝統の新生である。
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新しい一歩も、即ち過去になって学び伝えられるものになる。不断の今の振舞いが、闇の中に光を伝える。全てを壊していくかのような時代の中で、これまでの息遣いを絶やさず伝えていこうとする神楽、それは絶望しかねない人の世の暗闇の中に残る希望のひかりかもしれない。
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天岩戸木彫のサイトです。
工藤さんを取材した映像を添付しておきます。
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