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【危機管理】謝罪の炎上=最悪のクライシス・コミュニケーション(危機管理広報)。

毎日いろいろなニュースがあるので、かなり前のような気がしてしまいますが、少し前に有名人の「謝罪の炎上」の不祥事が続いて起こりました。
テレビ番組や記者会見の場で不適切な発言や行動(例=金メダルかじり)が原因で、多くの方の批判を招き(SNSでの炎上→各メディアでの報道)、その後発言や行動の当事者が謝罪をするものの、「反省していない。謝罪になっていない」とさらに批判され(火に油を注ぐ状態)、SNS等でもより拡散した炎上状態になった結果、さらなる謝罪に追い込まれた一連の不祥事です。個々の内容はすでにネット上でも数多く報道されたので省略します。

「口は災いの元」という諺もあるように、世間の常識とのずれで批判されてしまう失言、暴言は珍しくないですし、私も含めて誰でも一度くらいは多少不適切な発言、物議をかもす発言(使用した言い回しも含めて)の経験はあるでしょう。「居酒屋」などではアルコールの影響もあり、失言・暴言が飛び交っていますが、それはストレス解消の意味もあり、外部に公表しているものでもないので(誰かが悪意を持ってSNS等に投稿すれば別ですが)、特に問題にはなりません。プライベートの場でも酒が入っての発言や行動には注意が必要かとは思いますが・・・

しかし、パブリックな場(SNSでの投稿なども含む)での失言や暴言はNGですし、さらにそれを謝罪した後の炎上は絶対にNGです。

そもそも批判される失言や暴言の原因とは何か?
大きく2つに分けられます。

(1)は「発言者の無知によるもの」。
無知は文字通りにその発言した内容について詳しく知らないのに思い込みで意見や感想を言い切ってしまう。私のいう「無知」には「内容の確認をしていない」という要素も含まれます。

(2)は「発言者の思想・信条を明確に述べたもの」。
いわば確信犯的な発言です。
「私はこう考えるのだから、別に誰かに文句を言われる筋合いはない」という強気の姿勢とも言えます。これは特にある分野で実績を積み、メディアにも多く登場する専門家、文化人、コメンテーターなどの場合、「俺(わたし)はこれくらい言っても理解されるだろう、大丈夫だろう」という奢りの態度や上から目線が見え隠れすることもあります。もちろん政治家にも。

「謝罪の方法」や「いい謝罪の仕方」といった内容は、政治家から芸能人の失言、不祥事などが頻発している昨今、その都度インターネット上に多くの記事が出ますし、危機管理やコミュニケーションの専門家のコメントも(ほぼ毎回同じような基本的な注意点ですが・・・)検索することが可能です。
「謝罪」をテーマにした書籍もあります。

私自身も過去に、謝罪を含めた緊急時のメディア対応、特に謝罪会見についてのコメントを求められたことがあり、インターネットメディアや関西のテレビのワイドショーなどに「どこが悪かったか」「どうするべきだったか」のコメントを提供したこともあります。

また、企業や自治体の管理職研修やトレーニングの一つとして、架空の事件・事故・不祥事シナリオを想定し、実際と同様の会見場の雰囲気の中で「模擬緊急記者会見」を行い、そのビデオ検証をする「模擬緊急記者会見・メディアトレーニング」の講師を30件くらい務めた経験があります。

私自身の過去の知見に基づくと、謝罪のポイントはたくさん挙げられますが、一つだけ最も重要な点は何かと言えば、
「謝罪のみに集中し、誤解を招く余計な言葉は一切使わない」
ことだと考えます。私がアドバイスするとすればまずそれを伝えます。

今年の一連の当時者の謝罪の際には、「言い訳」「責任転嫁」「反省していない」と受け取られるような余計な言葉が、その後の炎上の原因になりました。具体的な事例はネット検索すれば出てきます。
本人が「そのように受け取られるとは考えてもいない」言葉でも、自己保身や責任転嫁のように受け取られてしまうこともあるのが、スピーチやコミュニケーションの難しいところです。ですから特に「謝罪」の場では余計な言葉は一切使用しないことが肝心です。

残念ながら(笑)、今回の当時者のどなたからも、謝罪対応のアドバイスを求められる依頼はなかったのですが、私が考えるベストな謝罪対応は、

「専門家のアドバイスに素直に耳を傾け、専門家の指導通りに謝罪する」

ことにつきます。
具体的なアドバイス内容は、その依頼してきた当時者=クライアントと指導する専門家の間のみで話し合って綿密に準備すればよい。本人が意識せずに使っている「口癖」などもチェックポイントの一つになります。
そして「謝罪のコメント」「記者との質疑応答」は事前に予行演習も必要です。
専門家といっても実際の危機対応経験、メディア対応経験を含めた本人のスキルは様々ですが、少なくとも一定のスキルを持った専門家であれば、指導した「謝罪」がさらに炎上を招くようなことは考えにくいです。

こう書くととても簡単なことなのですが、なかなかそのように進まないのが世の中の常です。「理想と現実の乖離」ですね。

「謝罪」や「危機管理広報」ではなくとも、例えば1年半以上続いている「新型コロナ対策」。
感染症等の専門家(これもピンキリのように思えますが・・・)の中にはインターネットメディアをはじめ、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどで「実行したら有効だろうな」と考えられるいい対策を繰り返し提言している方も多数いますが、それが実行されたことはほとんど無いのが現実のようです。
いくらいい提案でも実行されなければほとんど無意味に終わります。

さらに課題として考えられるのは、各分野で実績のある方たちにとって
「謝罪なんて別に専門家にアドバイス依頼しなくても自分一人でできる」という自信を持つ人が多いのではないかということ。
法的なことであれば弁護士に相談するのが常識でしょうが、謝罪も含めた緊急時(メディア)対応=クライシス・コミュニケーションは、たいして難しいことではないと考える人が多いように思います。
実際は、緊急時メディア対応、そしてSNS対応を甘く見て、炎上する実例が過去にたくさんあったことはご承知の通りです。最近に限らず過去の多数の実例がそれを証明しています。

新総理のアピールポイントは「聞く力」とのことですが、謝罪を求められるような緊急時には、宣伝めいていて恐縮ですが、危機管理・危機管理広報の専門家にアドバイスを求めて、相手が年下だろうが専門家のアドバイスに真摯に耳を傾けて実行することが謝罪の炎上を防ぐ一番の近道だと考えます。


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