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「メディアの沈黙」→「メディアの饒舌」へ?

10/2の記者会見後も連日続いているジャニーズ事務所(10/17に社名変更)
関連のメディア報道。
タイトル通り、以前の沈黙ががらっと変わって今ではすっかり饒舌に変化している。

私自身、インターネットメディア「ビジネスジャーナル」からメール連絡があり、危機管理・広報の専門家としてコメントを求められたので、お受けして電話取材を受けた。10/5掲載の記事は下記参照。後半部分に私のコメントと簡単なプロフィール紹介が掲載されている。

ここ数日、特に報道が過熱したのは、もちろん「記者NGリスト」の発覚だが、ジャニーズ事務所からは一切関わっていないという否定のコメントが発表され(下記URL参照)、記者会見を仕切っていたFTIコンサルティング社から謝罪とジャニーズ事務所は一切関わっていないというコメント(ホームページを見たがコメント文書はどこにあるのかないのか見つけられず、内容は各報道による)が発表されて、一応一段落した。

FTIコンサルティングの謝罪コメントが出るまでは、いろいろな意見が出ていた。インターネット記事の一部専門家等のコメントやSNS等の書き込みで多く目にしたのが、
「記者NGリストについて、クライアントに無断でコンサルティング会社やPR会社が作成するはずがない」
「普通であればクライアント側は知っているはず」
「ジャニーズ事務所側からの関与、指示だったのでは」
など。

私はこういう意見を<「推測」「憶測」という>と教科書で習ったのだが(笑)、双方のコメント発表により不正確、もっとはっきりいえば間違いだったと言えるだろう。
もちろんジャニーズ事務所とFTIコンサルティング社が発表したコメントに嘘や隠蔽がないということが前提となるが。両社のコメントの具体的な内容を読む限りさすがにそれは考えにくい。

前述のようなコメントを述べていた専門家、SNSの書き込み者は
「私が言っていたことは個人的な推測や憶測に基づくもので、ジャニーズ事務所の関与があったのではという点は結果的に間違っていました。申し訳ない」と、
大人の常識としては、まずは謝罪の態度を示すべきだと思うが・・・
それができなければ当然のこととして、現在のジャニーズ事務所側を一方的に批判する資格は無い。「自分に甘く人に厳しい」典型例ではないか。

それにしても私がよくわからないのは、何故現在のジャニーズ事務所側が連日ここまで批判をされなくてはならないのかという点だ。
「過去」ではなく「現在」のである。
おそらく同感される方は多いのでは。
そのような意見の一部専門家やSNSのコメントもよく目にする。

性加害の当事者は故ジャニー喜多川氏であり、メディアの沈黙を支配していたと言われている中心人物は、姉の故メリー喜多川氏であり、二人ともすでにこの世にはいない。
二人の生前に勇気を持って批判しとけよという話だ。
結局できなかったんじゃないか。
生前に告発記事を書いていた「週刊文春」や「噂の眞相」などの一部メディアを除いてではあるが。

9/7と10/2の謝罪(+発表)会見は、もちろん100点満点(もっともそんな記者会見など世の中に存在しないのだが)ではなく、特に9/7で社名存続という判断は大きな間違いだったが、10/2にはそれも修正し、被害者への救済・補償も少しずつ具体的なプロセスが見えてきて、着実に一歩ずつ進めているように私には見える。

「ビジネスジャーナル」の中でも本noteでもすでに述べたが、2回の記者会見は、過去の酷い謝罪会見(今年はビッグモーター社と日大に代表される)と比較すれば、単純に謝罪会見としては合格点を付けられる。
例えば、登壇者からとんでもない失言や不適切な態度などあったろうか?
メモをとりながら客観的+専門家の視点で視聴していた私(私は企業や自治体の管理職向けの謝罪会見トレーニング講師などの職業病で、失言や不適切な態度などはすぐに気づく)にはそのような大きな問題は感じなかった。

前述のように「記者NGリスト」は、FTIコンサルティング社が勝手に作成したものであり、ジャニーズ事務所の関与は一切なかったと、ジャニーズ事務所、FTIコンサルティング社とも明言している。

余談だが、今回の「記者NGリスト」へのコメントをしている専門家の一人が、史上最低の謝罪会見とも言われた「ビッグモーター社」の謝罪会見を仕切って運営したPR会社の社長だったので、びっくりした。コメントを求めたメディア側もそのことを知っていたのかどうかはわからないのだが・・・

さて、何故メディア(繰り返すが「週刊文春」や「噂の眞相」などの一部メディアは除く)が沈黙していたかは、
性加害の告発報道をすれば、絶大の権力者からの二人から激怒され、ジャニーズ事務所のタレントが番組や紙面等で起用できなくなる→視聴率や部数減を招く、場合に寄ったらジャニーズ事務所のタレントをCM起用しているスポンサー離れも→メディア企業にとって死活問題となる売上、利益の減少を招く
端的に言えばこういうことだろう。
これを反省コメントの中でストレートに述べたメディア企業が1社でもあったか、私の知っている範囲では記憶に無いのだが・・・

今後、ジャニーズ事務所は、10/17の社名変更「株式会社SMILE-UP.(スマイルアップ)」と新しい会社名(ファンクラブからの意見を参考に策定するようだが)が決定したタイミング、そして被害者への救済・補償が具体的に進みだした時期に、3回目の4回目の記者会見を実施することになるのだと思われる。

逆に、説明責任が求められているのは、過去にテレビ局、新聞社、雑誌社などでジャニーズ事務所と深い関わりを持っていたメディア側ではないのか。

ジャニーズ事務所が行ったように「第三者委員会」による徹底的な調査(何故メディアの沈黙が発生したのか、どのような忖度を行っていたのかなど)を行い、もちろん個々の番組や記事で自らの検証を行い(NHKクローズアップ現代では短時間だがそのような趣旨の番組もあった)、場合によっては公開での討論会やシンポジウムで、謝罪と説明をするべきなのでは。

こういうことをやれば、「メディアもなかなかやるじゃん」と高く評価する人は多いだろうし、メディアの価値を見なおすいい機会になると思うのだが・・・

とここまで書いた後に、TBSテレビの「報道特集」(10/7放送)が、非常に質の高い検証内容(TBSの元社員、社員約80人への聞き取り調査など)を取り上げていた。キャスターたちのコメントも含めて、私には違和感はなく納得できる内容だった。
他の民放、そして新聞社等も自社で同様の検証番組、記事を発表すべきではないかと強く感じた次第だ。



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