コーヒー

いつかの夏
茹だるような暑さの中
スタバ(に出荷される粉袋を段ボールに詰める工場)でアルバイトをしていた

僻地で人間不信になり、ホワイトカラーから逃げてきた私にとってはコミュニケーションの必要ないこの場所はとても居心地が良かった

精神科通院を当たり前だと思ってる上司も、ここに配属されてきた新卒を全て1年以内に潰してきたお局もいない

隣で働く男性と
「暑いですね」
「そうですね」
という最低限の会話ノルマを果たして安心し、
ひたすら手を動かし、同時に脳を止めていたその時


「お兄さんは学生?」
「…いや…働いてました、少しだけ、でも辞めちゃって」
「どこで働いてたの?」
「××××の××で×××を」

そして、大学を出て就職したが上手くいかなかった、人間関係が怖い。だからずっとここにいたい。

という内容の話をした

それ以降の会話はなかった

あの人の連絡先も名前も、その後どうなったかも知らない

今も段ボールに袋を詰めているのかもしれない


そして今日、1年振りにスタバにやってきた

隣で就活で成功して大手に入る方法を熱弁してる大学生くんは、僻地に配属されて俺みたいになってしまえばいいと思う

その方が人生に深みと恨み、渋みが出てくると思うよ

あのおじさんが詰めたかもしれない

君が飲んでるコーヒーみたいにさ

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