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障害年金は「生命線」といえる大切な制度です

いろいろな調査を見ても、精神障がいの方の収入源の第1位は障害年金です。まさに「生命線」といえる大切な制度です。しかし、20歳前後に発症することが多い精神障がいの場合、生活も大混乱している中で年金の加入・納付の開始時期(20歳)を迎えることになります。こうした事情も、精神障がいの方に無年金者が多いという結果を生んでいます。

ここでは、障害年金の大事なポイントをとりあげます。


◆初診日問題と診断書

障害年金、特に診断書を主治医に書いてもらうときに、どんな点に注意して相談するとよいか、ここで考えてみたいと思います。
初めて障害年金を申請するときに重要なのはその病気の初診日です。初診日は今の疾患(たとえば統合失調症)の診断が確定した時点ではありません。現在の障がいの原因となっている疾患の前駆症状があり、これについて初診したときなのですが、その判断の仕方の複雑さもあり主治医の先生が誤解されている場合もあります。正確な情報については年金事務所や市区町村の年金課に問い合わせるとよいでしょう。
また、年金掛け金を納付または免除していた期間とこの初診日の関係で障害年金の受給権が決まりますので、年金事務所などで納付期間を教えてもらったほうがいいと思います。通院中の医療機関にケースワーカー(PSW)がいらしたら、障害年金について相談してみてください。


困難になるのは、カルテの保存義務期間(5年間です)を超えているなどのために、この初診日の証明が初診した医療機関からとれない場合です。ご自分の主張だけでは認めてもらえないことが多く、次に診てもらっていた医療機関のカルテ、診察券や領収書、学校や職場に出した診断書の写しなどから根拠を示せることが必要です。カルテの記述などで月日まで確定できなくても、ある年に受診していたことが明らかになり、その年の納付の条件を満たしていれば、初診日の問題は多くの場合クリアできます。初診日の証明がとても大変になることも多く、そうした場合、正確な制度の理解が必要です。

カルテがない場合は「受診状況等証明書が添付できない申立書」を使いましょう。

ここではその申立書のひとつ第三者証明について紹介します。
「初診日に関する第三者からの申立書」第三者証明は、原則複数の初診日当時の状況を知っている友人や恩師、医療従事者等に依頼して書いてもらいます。民法上の再維新等以内の親族はできません。いとこは大丈夫です。

第三者は、①初診日頃の受診に立ち会っていた。②初診日頃当時に受診の状況を聞いていた。③障害年金の請求日からさかのぼって概ね5年以上前に初診日頃の状況を聞いていた。
の3つのどれかに該当すると作成できます。

さらに、初診日の証明のほかに、診断名が問題になります。障害年金の対象となる疾患とならないものとがあるのです。

古い概念ですが神経症圏の疾患と人格障がい圏の疾患は、精神病状態にない場合、症状が重度でも障害年金給付の対象外としています。さらに触法薬物による精神障がいは精神病状態でも対象外としています。この点も精神科医全体が熟知している状況ではありません。
主治医とご自身の病気はどういう症状で、診断名としては何といわれるのか話し合ってください。
障害年金の申請はご自身の病気について認識するためのよい機会でもあります。今の病気による障がいについて、そして、その克服について本当に考えるとてもよいチャンスになります。

◆「障害の状態」の記載について


診断書には、障がいの状態を正確に主治医に書いてもらう必要があります。障がいは、日常生活や働く場、社会生活の中で現れるので、診察室の診察ではわかりにくいものです。

主治医に生活、労働、社会参加に関してどのくらい制約があるかをわかってもらい、これを書いてもらうことが必要です。そのためにどうしたらよいでしょう?生活についてうまく話せて主治医がわかってくれていればいいのですが、医師はすべてをわかっているつもりにもなりがちです。伝わっていないのに、わかっているつもりで主治医が診断書を書くこともまれながらあるように思います。
まず、自分だけでなく生活を知っている人にも話してもらうことを考えてください。

自分の眼と違って外から生活を見ている人のほうが障がいに気づいていることもあります。生活を知る家族や福祉事業所、デイケアの職員、友人などに協力してもらえたら協力を依頼しましょう。診断書の用紙にも書いてあるように「一人暮らしを想定」して生活の障がいを書くようになっている点も主治医に話してください。単身生活をしていない場合は現状そのものではなく想像して書く場合もあるのです。


それでも主治医に話しにくいこともあるでしょう。その場合、医療機関の話しやすい人(看護師、ケースワーカー、事務の方など)に話したり、生活状況を書いて知らせたりしてみることもいいかもしれません。
書いてもらうときには診断書用紙の裏側にある「2.日常生活能力の判定」の欄を参考にしてみてください。

4-1障害年金 診断書

「障害の程度」は、ほぼ病気の症状に当たる機能障がいも併せて総合評価するということになっています。
用紙の表側の「ア現在の病状又は状態像」と「イ左記の状態について、その程度・症状を具体的に記載して下さい」の欄の記入も大切です。
ここに何も書かないで用紙の裏の「ウ2.日常生活能力の判定」などだけ書いてある場合は、病状や機能障がいがないのに生活や仕事に障がいがあるように受け取られてしまうようです。

4-2障害年金 診断書1


精神の障がいは、てんかんも含めて病状が変化します。ここも主治医の社会医学的判断でほぼ1年間を通じた平均値を想定して書いてもらう必要があり、理解を得られにくい場合がよくあります。
特にてんかんの方の場合は発作時と発作間欠時では生活能力は全く異なるために、この1年間平均という考え方がとりにくいことがあります。


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てんかんの認定基準は2010年に改訂されました。発作については発作頻度と発作型によって重症度を区分するようになりました。また、発達障がいと高次脳機能障がいの認定基準が新しくできました。
発達障がいや高次脳機能障がいによる障がいのある方にとっては、これまで曖昧だった障害年金の認定の基準がはっきりしたことで、障害年金が申請しやすくなったと思います。診断書を書いてもらったら、すぐに提出しないで、相談した方に見てもらってください。相談した方と診断書を読んでみて、主治医の記載が実際と違うのではないかと考えた場合は主治医や医療機関の方とまた相談してみましょう。

参考書籍
「あなたの障害年金は診断書で決まる!」
白石美佐子, 中川洋子 (著), 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会 (監修)
発行:中央法規出版
価格:1,650円(税込)

5940精神障害年金


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