横浜市IR誘致に反対の理由

私は、横浜市のカジノIR誘致に反対している。その理由を自分でも整理したくて、メモに書いてみた。
反対の理由は、行政の倫理観、基本思想が危険だと言うことである。

◇IR推進=カジノ推進

IRは、カジノの収益を活用して、MICE施設を運営する仕組みである。これは、横浜市に限らない。IRの基本的な仕組みである。IR収益全体の7~8割がカジノによるものであり、カジノ抜きではIRは成立しない。
IRを成功させるために、行政は、否応なくカジノを推進させることになる。
カジノはIR法が成立した現在、合法化されはしたが、その本質は刑法で禁止された「賭博」であることに変わりはない。

◇行き過ぎた自己責任論

財政のためならカジノ(賭博)を良しとする。この思想の背景にあるのは、行き過ぎた「自己責任論」だろう。
最低限(市は世界最高水準と言うが)のセーフティをかけるのだから、市は責任を果たした。依存性になり、自己破産するかどうかは、自己責任ということだろう。

このような自己責任論は、近年、強くなってきた。危険な思想である。
行政機関が、過剰な自己責任論を展開すると、「公」としての機能を果たさなくなる。極論をいえば、生活保護も教育サービスも必要なくなる。働かないのは自己責任であり、勉強するもしないも本人の勝手となる。働きたくても働けない。勉強したくてもお金がない人たちは、置き去りにされる。公的機関に求められる最低限の保護機能がなくなってしまう。

自己責任論は、強者の理論である。弱者救済という視点が欠落している。行政機関は、投資先ではない。多くの税金を払った者が、多くのサービスを受けられる訳ではない。富めるものから貧しいものへ富の再配分を行い、皆が等しく最低限のサービスを受ける。そして、全市民がビジネスなどの競争のスタートラインに立てるようにする。その仕組みを維持するのも、公的機関の役目だと思う。
過剰な自己責任論は、貧富の差を広げる。富めるものがますます富み、貧しいものはさらに貧しくなる。そんな世の中にしたくはない。

◇カジノ反対に対案は必要か?

IRに反対だと言うと、「じゃあ、対案を出せよ。市の財政をどうやって良くするんだ?」と言われることがある。しかし、対案は必要ない。なぜなら、反対の理由が、「経済効果」の観点ではないからだ。
経済効果以前の基本思想の問題であり、倫理観の問題である。

施策を決める第一段階として、倫理観や基本思想をどうとらえるか?というテーマがあるはず。次のステップとして、具体的な手法を議論するのが筋道だと思う。
私は、第一段階の議論として、刑法違反の賭博(カジノ)抜きで、過剰な自己責任論を展開することなく、経済活性化を考えるべきだと主張する。

◇どうすれば?

過剰な自己責任論で行政活動が行われたら、今後、横浜市はどうなっていくのか。医療、福祉、介護、教育。これらの非生産的な分野は、自己責任の名のもとに予算が削られ、市民サービスが悪化するだろう。それは、公的機関の役目ではないはずだ。

「公」の役割を確認し、行き過ぎた自己責任論から脱却して、カジノなしの経済政策を議論してほしい。どんな政策がでても、それなら議論になる。

私の仕事は、役所発注が多い。無駄な発注、業界のシステムを変えれば、かなりの節約ができるし、私なりの業界再構成案もある。が、ここではその話はしない。論点がボヤけるからだ。

論点は、あくまでも行政の倫理観、基本姿勢である。倫理観をもって、公の役割を意識して行政活動をしてほしい。

以 上

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