【祖母の矛盾(前編)】
【祖母の矛盾(前編)】
明治生まれの祖母は、ピアスを許さなかった。
「親からもらった身体に穴開けるなんて!」
と芸能人などを見て吐き捨てるように言っていた。
当然の如く、私が耳に穴を開けるなどという愚行を犯すのを許さなかった。
ピアスはなくしづらいし、何より可愛らしいデザインが多いので、魅力的であった。
市場的にもイヤリングよりピアスの方が選択肢が豊富である。
しかし、いくら「あ、これいいな」と思ってもピアスへの道を通ることはなかった。
正直、虫歯になって歯に穴が空いたのさえ「申し訳ない」気になってしまうくらい、マインド設定されているのに、敢えてすることは私にとって“悪”であった。
教師などが学生時代に開けたピアスの穴が、“最近してないから”と塞がり、それでもポツっと凹んでいるのが、なんとなく中途半端に欠けているようで心地悪かった。
ということは、開けてしまって職業によっては禁止となれば、着けられず、ああなるのかと思うとやはり「止めておこう」となった。
何より、耳のツボを考えると「止めておこう」だった。
しかし、この祖母、とんでもない矛盾の暴言を吐いたのである。
《続く》
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