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禍を転じて pfrうぇあい9 となす

電気もつけない真っ暗な部屋でそっと耳を澄ました
寝ている飼い猫がゆっくりと呼吸している音が聞こえる
規則的に繰り返すその音はワタシの気持ちを落ち着けさせる

(だいじょうぶ、まだ、だいじょうぶ)

漠然とした不安が消えることなく
ただただ変化に乏しい景色が
『自粛』という2文字が重くのしかかり
繰り返される灰色の日々

怯える反面
いつか来てくれると待ち望んでいた
『死』をどこかで期待していた日々だった

この時世故に
身近な人たちを思うように見送れなかった
口惜しさが
その気持ちを後押しした

負思考のループが止まらない

こんなに辛い世の中なんて
早くさよならしたい

いまなら誰にも迷惑かけずに
逝けるのではないか

誰にも邪魔されず
このまま知られず
逝けるのではないか

どうせ誰にも必要とされていないし
ワタシ一人がいなくなろうとも
誰かを悲しませることもないし

だってあの子がこの間言ったもの
「オマエハ無意識ニヒトヲ傷ツケル」って

守るものがあるわけじゃないし
残していく口惜しさがあるヒトがいるわけじゃないし
だってどうせワタシはゲイだし


で、ハッとした

自身のセクシャリティに
誇りを持って生きていくのよ!なんて掲げ
仇なすヒトには傍若無人にしていた自分が
それを自身の蔑みとしてそう考えるなんて

人の精神は恐ろしく脆いものである
わかっていたのに囚われた

慌てて自分にとって負となる情報をすべて遠ざけた
漠然とすがろうとしていた関係もこれを機に断った
大好きだから、と執着していた想いをゴミ箱に捨てた

この先も社会が世界がどう変わるか分からない

だからもしもいま暖かく繋げる手があるのであれば
その手を離さないで欲しい
なんならこれを機会にギュッと強く握っていて欲しい

繋ぐ手が思いつかない人は
近くにいる人に相談してほしい
その人が握るべき相手かもしれないし
「あの人はあなたが繋がっている人」と気付かせてくれるかもしれない

近くにそんな人が居るのが思いつかないというのなら
いいよ、私が相談にのろうじゃないか

といってもワタシは
脆く揺れ動く構ってちゃんだが
それでもよければいつでもいいよ

この『禍』が過ぎた後はどうなるのか
そもそも過ぎるのかすら分からないけれど
それが良かれ悪かれ
ただ知らない新しい形になるだけなんだろうね

漠然としたこの不安な毎日が
ワタシにもたらせたモノは
ちょっぴり高まった自尊心

かくいうワタシは
「私は必要とされている」ことを
疑わないように生きていくことに決めた

重くのしかかるこの圧を
いまはただその全部を受容する

抗ってなんてやるもんか

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