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お母さん、ぎゅっとして

母は少し戸惑っていた
その理由は、中学2年生になったばかりの、私の幼すぎるだろうと思える言葉だった、何にも考えずに、その時の自分の気持ちに正直に言ってみただけだったが、自分でも少し戸惑った。

「お母さん、ぎゅっとして?!」

母は少し戸惑っていた
でも、その後で『いいよ、おいで』と言って、両手をいっぱい広げてくれた。その両手は私がすっぽり入るであろう、しっかり受け止めてもらえそうなぐらい大きく見えた。嬉しくなって何も迷うことなく母の胸に抱きついた、そして私はもう一つ欲張りに言った

「お母さん、少しこのままいて」

母は少し戸惑っていた
母の胸はあったかくて、心臓の音と、息の音、それがリズムよく心地よく聞こえていた。私に回された腕はぎゅっと力強く、母の胸に抱きしめられている感覚は、ずっと昔から知っている、母の抱っこだと思い出せた。母の胸に顔をうずめて静かに母の心臓の音と、息の音を聴いていた。私の心臓と息のリズムは母のそれと同じになっていった。母のぬくもりが私に伝わって、私のぬくもりも母に伝わって、すこしの時間だけど、幼い子供の時のように、ずっと長くぎゅっとしていてもらえたように感じた


母はもう戸惑っていなかった
言葉の少ないぎゅっとしている時間が、私にとってものすごく安心できる時間となっていた。少し離れてみた。

「もう大丈夫、お母さんのぎゅっは最高」

そう言って照れくさそうに私から離れてみた

「もういいの?」
「うん、もういいよ」

この安心は一生消えない
大人になった私は、もう照れくさくて、母にぎゅっとしてもらわないだろう
だけど、今度は私が母をぎゅっとしてあげる日がくるのかもしれない

母のぎゅっは最高だと小さい私は知っている




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