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人生2回目のウィキッド 観劇記録

前回、観たのは中学3年生の時。
授業で観た「夢から醒めた夢」に感化され、同じく感化された友人と共に観に行った。
そして私はミュージカルの沼に足を入れることになった訳だけど、13年ぶりの再観劇であの時の感動をあの時と同じ友人と共に味わうことが出来たのは率直に言って恵まれていると思う。
この作品はまた何年後かわからないけど、もう一度観たい作品だからこそ、観劇した際の空気感も忘れないよう記録に残す。

◆ ◆ ◆

前回「ノートルダムの鐘」を観た時は夏の暑い盛り。
今回は暫く日が空いての観劇だったため、同じ劇場でも季節変わって冬の真っ只中。
そこまで寒さの厳しくない日だったが、待ちに待ったウィキッドを観れることにワクワクし過ぎて、最近買ったカーキのMA-1が少し暑いくらいだった。
駅で友人を待っていると、彼女は彼女で示し合わせたようにクリーム色のMA-1を着ていて、お互い頻繁に連絡を取り合ってなくても気心の知れた友のままなことに思わず笑った。
夏は劇場の周りに浴衣の人がチラホラ歩いてたけれど、冬はイルミネーションで街が彩られていた。
ウィキッドは夏よりもイルミネーション輝く冬が似合う気がする。
東京では10年振りの再演、また再演希望No. 1の作品ということもあって、来てる方々の興奮が伝わってくるのは勿論、明らかに緑を意識した服の方がいたりして「そうだよね!楽しみだったよね!」と心の中で話しかけてしまうくらいには自分自身も興奮してた。(私自身も服の一部に緑を入れるのを意識してたから仲間だと思う。)

◆ ◆ ◆

さて、本題に入ろう。
ウィキッドの素晴らしさについて語っていきたい。
観劇直後は「良かった!本当に良かった!」
なんて全く語彙力の無い感想しか出てこなかったけど、ようやく落ち着いて感想を書けるようになってきた。


「誰もウィキッドの死を悲しんだりしない(No One Mourns the Wicked)」

作品に没頭させるための引き金は音楽だと私は思う。
ウィキッドはひたすら良い歌が続く。
1幕冒頭「誰もウィキッドの死を悲しんだりしない(No One Mourns the Wicked)」のアンサンブルは特に素晴らしい。
 エルファバに会ったことないような群衆が、彼女を悪い魔女(ウィキッド)と断定してその死を喜び歌う。
そんな群集心理が強く表現されているのを安全な観客席から臨めるからこそ、そのおぞましくも華やかな脅威に見入ってしまうのかもしれない。
そういう意味では人の死を喜ぶ人々を観て浮き立っていた私もある種群衆の1人だったのではと感じる。
 楽曲としてはクレッシェンドとデクレッシェンドが印象的な躍動感たっぷりの歌で、合間にドラゴン時計のアクションやシャボン玉に乗って動くグリンダ、シングルの台詞や歌が挟まることで、視線が揺さぶられたかと思うと、エルファバ誕生の回想シーンが挟まり、現代に戻って今度は学生時代の回想に入る。
前奏から壮大な音楽で日常から一瞬で切り離されるのに、展開が早すぎて否応無しに集中させられた。
 エルファバ誕生シーンで母親役を演じられた方、恐らく古木瞳さんと思われるが、この方のダンスや所作がどこか素敵で目に留まった。ダンスについて感想が言えるほどの語彙は歌について以上に持ち合わせて無いんだけれど、是非またどこかで観れたらと思う。

「魔法使いと私(The Wizard and I)」

エルファバがメインで最初に歌う「魔法使いと私(The Wizard and I)」この曲も良かった。
普段、アルバムの中で聴いてはいたがリピート頻度はそう多くない曲だ。にも関わらず、劇中で聴くと無性に感動して涙が目に浮かんだ。
 冒頭で皆に厭われ、死を喜ばれていたエルファバ。産まれた時から生を喜ばれず、家族からは自らが持つ「おかしな癖」(感情の波によって生じる不思議な現象)=欠点を隠すようにさえ言われていた。そんな絶望しかないような人生を歩む中で、自分の欠点が魔法の才能と褒められ、偉大なオズ陛下に逢えるとか言われたら、それはもう心の底から喜び歌って当然だと思う。
だからこそ、悲境から抜け出せる そんな希望に満ち溢れたわかりやすい人生逆転ストーリーに共感して感動を呼ぶのではと考察する。

「脅威に挑む(Defying Gravity)」

ウィキッドの曲の中で特に好きなのは「脅威に挑む(Defying Gravity)」と「永遠に(For Good)」の2曲だ。
エルファバ演じた小林美沙希さんの歌は勿論良かったけれど、やっぱり昔見た時の濱田めぐみさんの印象が強くあって、再演までの10年ほどの月日で数えきれないくらい濱田めぐみさん版やブロードウェイ版を聴いてたからか多少の物足りなさを覚えてしまった。あとは前回と違い生演奏ではなくステレオであることも影響していると思う。
 しかし、その後小林さんについて調べて驚きと納得。今作が劇団四季2作品目とのこと。それだったらもう拍手喝采してしかるべき。2019年に入団されて2作品目っていうのは少ないような気はするけど(劇団四季の事情は不知)、2作品目でエルファバなんて大役はかなりのプレッシャーだっただろうし、歌唱力は高くても経験値でしか補えないような表現力を求めるのは酷だろう。ぜひ、これからどんどんと沢山の作品に出ていってもらいたい。
 今回観てて思ったことがある。この曲は見出し画像(劇団四季 公式フォトギャラリーより)に入れたようにエルファバがフライングしているが、客席から観ると何だか座って歌っているように見えて気になってしまった。
スモークと照明の加減で腰から下は全く見えないのだけど、過去のPVに映るこのシーンをよく見ると背中に棒のようなものが見えたため、リトルマーメイドのようにワイヤーで本人を吊るすのではなく、グリンダのシャボン玉のように何かに固定されているのを想像する。細かい所ではあるけれど、どの舞台でも裏側が気になることは往々にしてあるから、そろそろ舞台裏ツアーとかを探してみるのもありかもしれない。
 余談だけど、昔テレビで海宝直人さんの歌う「自由を求めて(Defying Gravity)」を観たことがある。海宝さんは歌唱力・表現力が強くてどんな歌でも十分聴き応えがあるのだけど、女性が主人公の曲を男性が歌うといったジェンダー要素も加わって、言葉で言い表せない衝撃を受けたのを今でも覚えてる。やっぱり同じ歌でも歌う方が違えば、観る側としても異なる楽しみを得られるため、劇団四季のようにシングルキャストでは無く、複数人のキャストのパターンを観れるのは楽しい。

「永遠に(For Good)」

「永遠に(For Good)」はエルファバとグリンダの掛け合いが本当に美しい曲だ。

YouTube "WICKED The Musical "より「For Good」

ウィキッド再演までに上記のYouTubeを何度も何度も何度も再生させて頂いていた。メロディーとしての美しさは勿論、歌詞も本当に美しいと思う。

「小船をいざなう風のように 花の種運ぶ鳥のように」
「せせらぎを分かつ岩のように 砂の山流す波のように」

『For Good』より抜粋

どちらの例えも情景が浮かび上がり、耳でも心地良いのに目にも美しい印象を与え、聴いてて本当に心の隅々に沁み渡る。
グリンダの歌うエルファバの例えは、グリンダらしい可愛いらしさを感じる言葉選びで、エルファバはエルファバでエルファバの雄々しさを感じる情景なのが良い。

 書き終わるのに時間かかりすぎて、書いてる間に期間限定でしか聴けない、でも本当に素敵な「For Good」が聴けたのでここに書き留める。

上白石萌音の“もねがたり” 2023 より
屋比久知奈さんと歌う「For Good」

私の大好きな屋比久知奈ちゃん。
今までやびちゃんとか屋比久ちゃんって呼んでたけど、萌音ちゃんに倣って、畏れ多いけれど 私も"ともなー"とお呼びしようと思う。
ともなーの歌うグリンダは本当に素敵だった…!!
声が輝いてた。あの艶やかなお声は本当に宝物。
ジェーン・エアの時にも思ったけど、そろそろCD出したりしないかな。絶対買う。すぐ買う。何度も何度も聴き返す。それでジャケットは家の1番良い所に飾る。
(脱線しすぎたので、ともなーの話はこのくらいで我慢)

「サンク・グッドネス(Thank Goodness)」

中山理沙さん演じたグリンダの歌は「サンク・グッドネス(Thank Goodness)」が特に良かった。
まやかしの幸せに疑問を抱きながら『これで良いの幸せなの』と自分に言い聞かせるように歌うグリンダ。
多分だけど、中山さんの歌は声を張り上げないタイプの歌の方が魅力的かもしれない。

その他

久しぶりに観劇記録を書くためか文章を纏めるのにかなり時間かかってしまっている。そのため自分に妥協して、あとは思ったことなどを覚えてる限りで箇条書きで書いていくことにする。
書くようになってから暫く経つけれど、いつかもっと納得のいく綺麗な形に纏められる日は来るのだろうか…

・見出し画像に入れたエルファバを照らす光の美しさは言葉で表しきれない。虹色に輝く白系統の照明を作った人に拍手喝采。あんなにも強い光なのに足元が見えないのも凄い。

・「オズの魔法使い」との話の整合性は取れてないのに人を惹きつけるストーリーなのが凄い。
劇団四季だけでストーリーを理解するには多分足りないエピソードがあったりするのかもだけど、原作(完読ではない)との乖離も見受けられたし、オズの魔法使いに出てくる"カカシ" "ブリキの木こり" "臆病なライオン"は最早別物に思う。

・湾岸戦争をきっかけに作られた作品とのことだが、私は湾岸戦争を歴史の一つとしてしか知らない。今から約20年前、日本が国民の声に押されて戦後初めて国外に自衛隊を派遣したのがこの戦争だということを知ったけれど、それが本当に"国民の声に押されて"の出来事なのかは当時まだ子どもだった私にはわからない。
ウィキッドで民衆がエルファバを悪い魔女と断定していたのは、極めて部分的な側面のみを取り上げた報道(人をブリキにしたり、ライオンを怖がらせた)しか情報が無かったからというのはあると思う。
以前観た『兎、波を走る』のインタビューで高橋一生さんが言っていた言葉を思い出す。
 「忘れるか忘れないかもAIに委ねてしまった」
自分の目で見た事をきちんと書き留めておかないと、いつかとんでもなく誤った判断をしてしまう日が来てしまうかもしれない。

・秋本 みな子さん演じたマダム・モリブル。魔法でエルファバの妹ネッサを殺す悪役ではあるんだけど、物語の中だけの人じゃなくて、現実にもいるようなそんな感じの怖さを覚えた。
あと、この役はどの人が演じる場合でも色白に化粧するのか気になる。湾岸戦争との繋がりで、マダム・モリブルが白人であることを意識させるようにしてるのは深読みしすぎか?

・富永 雄翔さん演じるフィエロ、鈴木 涼太さん演じるオズの魔法使い。お二人とも軽めの印象を覚える歌声だったのだけど、役柄としてはピッタリなのかなとも思った。

最後に記録として、出演者一覧を載せる。
折角なので、1回目に観た時の出演者一覧も。
またいつか3回目がありますように。

上:2009年夏頃 下:2023年12月15日

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