人生は何が起こるか分からない

 最近、周りの人がよくnoteに思いを記している。このコロナウイルス禍の影響で僕の休日も一変した。休みの日といえば、大学の勉強をしているか、Jリーグなどのスポーツ観戦に行くか、あるいは人と飲みに行くか。しかし今は気晴らしのランニングやご飯を買いに行く以外は、ひたすら家にこもるしかない。そんな今だからこそ「いろんな思いを書き記しておこう」。ということで気の赴くまま、僕もnoteを記してみる!

画像1

写真=今回の話に登場するフランス・ヴァランシエンヌのスタジアム

 さて今回のタイトルは「人生は何が起こるか分からない」。最近、過去に自分の撮った写真を見返すことが多い。「ああ、あの時はここに行ったなぁ」とどこにも行けない分、過去を懐かしみその欲求を満たしている。その点でいうと、1年前の今ごろにこのような感染症が流行し、世界中が不自由な生活をしているとは、誰もが思わなかっただろう。それもそうだが、自分自身に置き換えても、こんな仕事をしているとは思いもよらなかった。

 僕は大学を卒業後、三重県の地方紙で整理記者とスポーツ担当記者を経験。三重県で4年2カ月を過ごした後、上京してスポーツ動画ストリーミングサービスの立ち上げメンバーとして運営会社に転職した。

 スポーツ動画ストリーミングサービスの仕事をしていた昨年6月、僕は早い夏休みとして、フランスに女子サッカーのワールドカップを観戦しに行った。サッカーでも女子サッカーは馴染みの薄い人も多いだろう。サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」は2011年、ワールドカップ初優勝を飾り、翌年のロンドン2012オリンピックでは銀メダルと世界のトップレベルに位置した。しかしリオ2016オリンピックはアジア予選で敗退し、ワールドカップ優勝直後には注目を集めた国内リーグの「なでしこリーグ」は、観客動員数を落としている。

 でも僕はワールドカップを味わいたかった。「女子サッカーのワールドカップにも男子のワールドカップに負けない熱狂があるはず」。そして三重県での記者時代に地元の女子サッカークラブを担当していたからこそ、「世界の女子サッカーが見たい」という2つの思いから、フランス行きを決めた。

画像2

写真=12時間の長旅の末、パリに着いた

現地滞在6日間で3試合を観戦。パリを拠点にいずれもTGVで約1時間半かかるレンヌとヴァランシエンヌ、そして普段はフランスのトップクラブPSGがホームとするパリの「パルク・デ・フランス」に行った。特にフランス北東部にあるヴァンラシエンヌのオーストラリア vs イタリアを観戦したときのことが印象に残っている。パリから現地に向かうTGVは両チームのサポーターの熱気で溢れていた。隣に座ったおじさんサポーターが、インスタグラム「Go Wallabies」と気合いみなぎる投稿をしているのが横目に見えた。

画像3

写真=ヴァランシエンヌに向かうサポーター

 スタジアムは両チームサポーターでほぼ満員だった。僕は残念ながらなでしこリーグの寂しいスタンドしか見たことがない。「女子サッカーでこれだけ盛り上がれるのか」と早速驚きだった。試合は接戦だった。前半、オーストラリアが先制するも、後半にイタリアが追いつき終盤へ。アディショナルタイムに入る手前、コーナーキックからイタリアの選手がヘディング弾を決めて勝負あり。長いホイッスルが鳴ると、イタリアサポーターは歓喜の渦に包まれた。

画像4

画像5

 試合後にはイタリアの選手が子を抱いてピッチレベルで記念撮影をしていた。代表クラスでママさん選手というと日本では女子バレーの荒木くらいか。子育てをしながら代表としてプレーできる。世界の凄さをここでも感じた。現地に行って感じたことは、全て予想以上だった。

 「やっぱり現場の声を伝えたい」。先にフランス・ヴァラシエンヌでの出来事を挙げたが、女子ワールドカップを見に行って、肌で感じて受けた刺激はたくさんあった。それだけに当時やっていた仕事に疑問を持った。帰りの12時間は頭の中を様々な思いが駆け巡った。「元記者だろ」「現場が好きだろ」「今の自分には不満だろ」「チャレンジしてみろよ」。

 三重県での4年2カ月は、自分自身の基礎をつくってくれた期間である。特に1年ではあったが、スポーツ担当記者としてアスリートの戦いを伝えるべく、休みなく各地を駆け巡ったキャリアは誇りだ。当時の社内での立場は内勤。だからこそ、アスリートの姿をダイレクトに伝えられない日々に苦しさが募っていた。

 僕は今年、新たな環境に飛び込んだ。それが東京2020オリンピック・パラリンピックに関わる仕事である。縁があって飛び込んだ世界だが、1年前こんな仕事をしているとは予想できなかった。オリンピック・パラリンピックに関わることは、僕にとって夢だった。さらにありがたいことに、フランスで思い描いた「現場の声を伝えたい」が実現しつつあった。ところがこのコロナウイルス禍である。「ようやくつかんだチャンスやのに、なんでやねん!」。そう思う自分もいた。

 でも最近は切り替わった。「明けない朝はない、こんなときこそ前向きに」。本番までの時間も増えた分、自分のやれることをしっかりやって、最高の大会を実現させる。フランスで感じた以上の熱狂が来年の夏には、日本にやってくる。そう想像するだけでワクワクする。あえてマイナスなことは言わない。僕は「いい意味」で裏切られ続けているのだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?