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イートイン脱税?のこと(その② 消費者視点と事業者視点で)

いわゆる「イートイン脱税」と言われている消費税の軽減税率に関連した問題について、前回「イートイン脱税?のこと(その① 規定の確認)」では税法のルールを確認しました。

今回はイートイン「脱税」と言われていることについて、税法上の脱税なのかどうかを検討してみます。


■消費者が消費税を脱税することはない

消費税は、消費者が税金の負担者、課税事業者が税金の納税義務者となる間接税です。したがって、今回の「イートイン脱税」のように、消費者が虚偽の申告(「イートインで食べるのではなくて持ち帰る」)をして消費税の負担を免れたとして、たとえそれが消費税の負担を免れることを目的として故意にしたことだとしても、消費者が脱税したということにはなりません。

(「税理士ドットコム」より引用 https://www.zeiri4.com/c_1076/n_846/

こちらの記事による国税庁の回答としても

国税庁は「倫理上どうなのかという観点は別になりますが」と前置きした上で、「軽減税率が適用されるかどうかの判定は、事業者が客に飲食料品を譲渡した時点で行われます。コンビニではレジで飲食料品を販売した時点で、判定されるため、(その後に客が店内で飲食していたとしても)制度上の問題はありません」と説明します。また、「自己申告をしたのに、8%で処理された」というケースは、「事業者が最終的に適正な納税をしていれば脱税には当たりません」という見解を示しています。

として、事業者の処理の問題としています。


なお、それでは消費者には全く問題がないのかというと、弁護士の解説記事などをみると常習的な場合には詐欺に当たる可能性があるということです。


■事業者視点での判断のポイント(8%か10%か)

上記記事での、「軽減税率が適用されるかどうかの判定は、事業者が客に飲食料品を譲渡した時点で行われます。」という点について掘り下げていきます。

前回記事でまとめた結果を再掲すると、軽減税率かどうかの判断は

① 飲食料品の譲渡は、軽減税率を適用する。(8%)
② 食事の提供は、飲食料品の譲渡には含まない。(10%)
③ 食事の提供とは、テーブルなどの設備のある場所で飲食させるサービスの提供のことをいう。
④ 飲食料品を持帰りのための容器に入れ、又は包装して譲渡した場合には、食事の提供には含まない。

となりました。こうしてみると、事業者側での判断のポイントは

A 単なるモノとしての飲食料品の販売なのか 
B モノとしての飲食料品の販売と、設備を使用させて飲食させるサービスのセット(混合契約)なのか

を、「客に飲食料品を譲渡した時点で」決めるということです。

コンビニのイートインの場合は、「当店で購入された商品の飲食以外の用途での使用はお断りします」といった類の掲示はされていることも多いので、飲食料品を購入することでイートインを使用できるサービスもセットでついてくる。という整理はしやすいでしょう。

ただし、この消費税率変更によってイートインの取り扱いが問題になる以前は、商品の購入によってイートインを利用できる権利が無償で付与されるが、利用しない人は権利を放棄している。という法律構成が実態に合っていたように思いますので、イートインの利用は無償によるサービスの提供としてその部分に関しては課税対象外とした方が良かったのではないのかな。と感じます。

さて、実際には、税法上は、その取引が、「飲食料品の譲渡」なのか「食事の提供」なのかの二択を「客に飲食料品を譲渡した時点で」決めなければなりません。

その方法として、国税庁の通達によれば

例えば、当該飲食料品について店内設備等を利用して飲食するのか又は持ち帰るのかを適宜の方法で相手方に意思確認するなどにより判定することとなる。(軽減税率通達11より抜粋)

としていたり、またQ&Aではさまざまな事例解説をしています。

しかしながら、「例えば」「意思確認するなどにより」というような表現からもわかるように、通達はあくまでも国税庁長官の国税庁職員へ向けた事務の取り扱いマニュアルで、法律とは違い納税者を拘束するものではありません。

実務上の感覚的なものですが、納税者が「客に飲食料品を譲渡した時点で」「飲食料品の譲渡」としてしたと判断した。ということを否定するのは、なかなか難しいのではないかと想像します。


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