角川俳句6月号

大特集「推敲の現場」

・河原地英武
作句にあたっては、あまり「現場主義」や「事実主義」に縛られないことが肝要だ。日記のごとく〇年〇月〇日にどこそこで実際に見聞したものだと一々裏付けを用意しなければ発表できないなどと考えていては、自分の俳句領域は狭まる一方である。

作者が生み出すものにそもそも「嘘」はない。それはことごとく作者の創造世界という「もう一つの現実」だからである。

眼前の情景は、記憶を活性化させるためのいわば呼び水である。それ自体はまだ俳句ではない。その景に触発され、われわれが何事かを想起し、それを下界と触れ合わすことによって一つの世界が立ち現れる。

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