今日の一句(2021年)

2021.12.31
①正続の「青い山脈」年守る
②赤本の褪せしマーカー年守る
③ガラガラのDJの声年守る
④多画面の監視モニター年守る
2021.12.30
風花のリズム大瀧詠一忌
①濁世への恨み辛みも日記果つ
②食べたものばかりで埋めて日記果つ
③日記果つ五年日記の三年目
④日記果つ判読不能の日の記憶
⑤監督の朱書きなぞつて日記果つ
2021.12.29
オンライン仕事納の乾杯も
①いつもより多く眠るも春支度
②春支度指折つて買ふポチ袋
③鶴亀の古き掛け軸春支度
④父と酌む地酒を買ふも春支度
⑤筆書のメモを片手に春支度
⑥小三治の芝浜聴いて春支度
2021.12.28
鈍化する曜日感覚霜柱
①寒凪やフナムシ走る夫婦岩
②寒凪や縁切寺へ九十九折
③寒凪や巻き鍵のごと鯨の尾
④寒凪や空驚かす 「キャッチ、ロー」
2021.12.27
煮え切らぬハーフタイムのおでんかな
①煤逃の角打ち肩を寄せ合つて
②煤逃の歓声弾むスタジアム
③煤逃の酒場の隅の松葉杖
④煤逃の背を撫でる妻の声
2021.12.26
バッシュの床擦る音や寒波来る
①眉唾と知るに相槌根深汁
②根深汁二合の酒の酔い覚まし
③そげだねと国訛りふと根深汁
④身のうちの百姓の血や根深汁
2021.12.25
お仕着せのバットグローブクリスマス
①捨て猫のあだ名考え年暮るる
②年暮るるターンテーブルくるくると
③延延とエゴサーチして年暮るる
④寅さんの三本立てに年暮るる
2021.12.24
いつからか七夕めけるクリスマス
①いつの間に期限切れるや風邪薬
②薬袋は男名前や風邪薬
③回診の鞄にひそと風邪薬
④甘党のしかめつ面や風邪薬
⑤コップ酒これがおいらの風邪薬
⑥推しメンの笑ふCM風邪薬
2021.12.23
擦れゆく安全地帯寒波来る
①レグホンの声裏返る底冷に
②底冷や青きバッグに黄でIKEA
③底冷や盛砂とがる地鎮祭
④底冷えの寒さにつけるハッシュタグ
⑤底冷に乗る経行の足裏に
⑥底冷の底にきのふのかすり傷
⑦底冷の重しのごとく二石釜
⑧底冷の石をめくればハサミムシ
2021.12.22
擦れゆく安全地帯寒波来る
①レグホンの声裏返る底冷に
②底冷や青きバッグに黄でIKEA
③底冷や盛砂とがる地鎮祭
④底冷えの寒さにつけるハッシュタグ
⑤底冷に乗る経行の足裏に
⑥底冷の底にきのふのかすり傷
⑦底冷の重しのごとく二石釜
2021.12.22
①馬車になるカボチャ弄る冬至かな
②温泉に猿の毛浮かぶ冬至かな
③靴紐を二重結びにけふ冬至
④本復の報せの葉書けふ冬至
⑤路線図の黄色目で追ふ冬至かな
2021.12.21
恐竜の脚の硬さの冬木かな
①一茶忌のはしごを背負ふ消防車
②履歴書の職歴あまた一茶の忌
③一茶忌の土蔵に大きダルマ錠
④雀いま絶滅危惧種一茶の忌
⑤一茶忌や鳥語解さんと耳すまし
⑥玄関の大き革靴一茶の忌
2021.12.20
シャウトする七十二歳寒昴
①五階から降る三味の音や日短し
②たんたんと馬齢を重ね日短し
③リヤカーのチャルメラの音や日短し
④日短し申し送りに傘のこと
⑤短日やカットモデルに誘われて
⑥ストックのささるリュックや日短
2021.12.19
移動販売の「月の沙漠」や冬の暮
①特別に安くしとくと冬帽子
②ハワイへと向かう成田や冬帽子
③全集の山に埋もれる冬帽子
④煩型丸く収める冬帽子
⑤たよりなき旋毛隠しの冬帽子
2021.12.18
朝市に花売る刀自の膝毛布
①亡き人のタバコの焦げや畳替
②弟と組み手争ふ畳替
③傷心の寅さんどこに畳替
④竿竹の売り声通る畳替
⑤額縁の賞状揺るる畳替
⑥相撲部の助っ人来る畳替
2021.12.17
霜晴や白金色のモノレール
①初氷割るスパイクの八本歯
②老どちのラジオ体操初氷
③睦まじき鴨の番や初氷
④掌に宝石のごと初氷
⑤初氷托鉢僧の鈴の音
2021.12.16
手放して千手観音めく枯木
①年の市見世物小屋のおおいたち
②福助の大き福耳年の市
③年の市耳障りよき売り言葉
④行列にサクラも混じる年の市
⑤年の市口上込みの七味の値
2021.12.15
ゆらゆらと黄泉へ誘ふ冬の蝶
①極月の離婚届の印の朱
②極月やはしごはしごの男どち
③極月やゆつくり手繰る大念珠
2021.12.14
アルバムに止まる時間すす払ひ
①炉話やまた借金を切り出して
②炉話やむかしむかしの深き闇
③炉話にやうやう光る翁の眼
2021.12.13
煤逃げの仲間と走る河川敷。
冬ぬくしミンミンミンとテレビから
①寒潮や門番のごと大鳥居
②寒潮に帰らぬ人の啜り泣き
③寒潮や岬の馬の咀嚼音
④寒潮や客死の友のことをふと
2021.12.12
冬帝や人肌わかる自動ドア
①一杯を余して下戸の玉子酒
②玉子酒カーテン越しの残り月
③根多帳をめくる楽屋や玉子酒
④魚偏の湯呑に酌める玉子酒
⑤願わくば冷やにしてくれ玉子酒
2021.12.11
福島で離れる「つばさ」冬青空
①トロ箱の積まれ寒暮の魚市場
②終発のケーブルカーを待つ寒暮
③カギっ子のぽつんと残る寒暮かな
2021.12.10
またぞろの無観客試合に雪
①口開けの客のステッキ冬夕焼
②冬夕焼城へと続く擬宝珠橋
③冬夕焼伝言板に「帰るね」と
④東京の村を染めたる冬夕焼
2021.12.9
北風や現地映像また乱れ
①西からの客は瘦せぎすボーナス日
②呼び込みの声近づけるボーナス日
③「いつもの」の一品増えるボーナス日
④ボーナスや余すことなく食ぶ魚
⑤ボーナスで買ふジーンズの膝に穴
⑥草臥れしネクタイひしとボーナス日
2021.12.8
大雪や石油かガスか野球戦
①疫病との果てぬ戦や開戦日
②掛け違ふ釦を数ふ開戦日
③掛け軸の「和敬清寂」開戦日
④回し読む「アンネの日記」開戦日
2021.12.7
冷麺の酸ゆき林檎や冬日向
①大雪のカルビをつまむ銀の箸
②大雪の刑務所囲むレンガ塀
③大雪の朝や托鉢僧の素足
④大雪や米研ぐ妻の細腕
2021.12.6
ラグビーに潰せと叫ぶ淑女かな
①悪妻の唇浸す酢牡蠣かな
②山の名の地酒に合はす酢牡蠣かな
③酢牡蠣食べバラ十枚の宝くじ
2021.12.5
そう言えば昨日もカレー小六月
①枯園や無口の人の厚き唇
②枯園や文庫にはさむ外れ券
③枯園やわが脈搏の頼りなき
2021.12.4
マスクして会い マスクして別れる
①帰船待つ赤い靴の子百合鴎
②喫煙所閉鎖一年百合鴎
③二百年続きし鎖国ゆりかもめ
④ゆりかもめ要塞めける展示場
⑤啄みて水輪拡ぐるゆりかもめ
2021.12.3
龍めける銀杏ぐんぐん冬天へ
①志望校ランク落とせと紅葉散る
②いまさらの真実告知紅葉散る
③紅葉散る一人で泊まる二人部屋
2021.12.2
不発なるクリーンナップや冬の暮
①お土産のマカデミアナッツとて厚着
②脱ぐは脱ぐはマトリューシカのごと厚着
③ダイエット話の弾む厚着かな
2021.12.1
AIのごときアフレコ十二月
①花八手うさぎ係に挙手数多
②花八手托鉢僧の高き鼻
③花八手アフロヘア―の漫才師
④花八手古算盤の軽き音
⑤花八手両手に余る不幸せ
⑥むなうちに郷愁じわり花八手
2021.11.30
後朝の涙かがよふ青女かな
①ラグビーのやがて押しくら饅頭に
②押しくら饅頭押しも押されぬ級長も
③図らずも押しくら饅頭電車なか
④マドンナを衛るナイトや押しくら饅頭
2021.11.29
都市対抗に応援戻る小春
①暖房を消して佳境の一夜漬け
②暖房やしとどに濡れるヨガマット
③暖房にじんわり熔かす赤つ恥
④暖房や名刺の震ふ応接間
2021.11.28
しめつぽい話も酒も焼鳥も
盛り合わせにビール一本やきとり屋
①かわたれの畑に光る冬菜かな
②托鉢の袋にもらふ冬菜かな
③朝市に野良着の刀自の売る冬菜
2021.11.27
咳きて回答欄の「あり」に〇
①檄飛ばす老監督の膝毛布
②「合格」の張り紙見つめ膝毛布
③朝市に花売る刀自の膝毛布
④イヤホンで競馬中継膝毛布
⑤一向に暗記すすまぬ膝毛布
2021.11.26
熱戦の果てし球場冬の星
①もういいかいもうまで言つて咳ける
②咳けば背中に刺さる視線かな
③咳きて二人飛びたる出席簿
④咳きて回答欄の「あり」に〇
⑤咳けば電車遅延のアナウンス
⑥咳きのたびに消えゆく英単語
2021.11.25
立看の失せしキャンパス憂国忌
①憂国忌しきりに吃るオペレータ
②立看の失せしキャンパス憂国忌
③憂国忌任意随意のマスクして
④背開きに鰻さばきて憂国忌
⑤憂国忌白ふんどしの「エッサッサ」
2021.11.24
鳥居めくゴールポストやラグビー場
①小春日やおかんに習ふ変化球
②斎田のかがよふ水や小六月
③小春日や利休鼠の袴干し
④小春日の水平線に一葉舟
⑤小春日や水屑の中の光るもの
⑥ありふれた一日ことほぐ小六月
2021.11.23
マラソンに汗し勤労感謝の日
①9番のラガー妻より小さきに
②ラグビーや薬缶にかけし魔法とは
③シャツ脱いで肩たたき合ふラガーメン
④ユーミンの声澄み渡るラグビー場
2021.11.22
近松忌涙の形に淡路島
①小雪やハズキルーペの赤き縁
②小雪の黄白赤の十団子
③小雪やチャドルに包む白き肌
2021.11.21
着ぶくれて明治神宮大会へ
①冬うららフリマに並ぶ足つぼ図
②冬うらら思索に倦めるロダン像
③冬うらら江戸から佇てる比翼塚
④陸橋のカメラの列や冬うらら
⑤冬うらら足跡残る犬の糞
2021.11.20
ジャンパーを脱いで校長マウンドへ
①晒されし鮫の眼の薄緑
②鮫食んで虎猫の声猛々し
③甲高き海鳥の声鮫来る
2021.11.19
小春日やスーツケースの薄埃
①霜除や一人で帰るランドセル
②霜除や庭師の古りし道具箱
③きぬぎぬや見返り松の霜囲
2021.11.18
フルートのかがよふ音や冬の朝
①冬ざれやカラーコーンの欠片散り
②冬ざれやベンチに残るビール缶
③冬ざれの埠頭に錆びしカーフェリー
④レスラーの首の鎖や冬ざるる
⑤冬ざれや水切り石の跳ねる音
⑥冬ざれの最初に死ぬはエキストラ
2021.11.17
冬の朝手にぴっちゃりと鳥の糞
①北風や棕櫚の葉先の剣めき
②北風や塒の卵落つる音
③北風や歩く翁の羅漢顔
④北風や友の最期を人伝に
2021.11.16
わが姫は平安美人七五三
①幾たびも湯加減尋ね火吹竹
②火吹竹置いて村長口火切り
③竈なか嵐を起こす火吹竹
2021.11.15
冬ひなた陶狸の白き太鼓腹
①けふからの父に預ける千歳飴
②五分だけすました顔と千歳飴
③宅配で内祝いとて千歳飴
2021.11.14
積み石に小さき鳥居や実万両
①冬兆す試飲で飽きる白ワイン
②冬兆す陶の狸の太鼓腹
③出来たての饅頭の湯気冬兆す
④冬兆す吹きつさらしの水車小屋
⑤冬兆す対岸からの遠会釈
2021.11.13
色づきぬ伯耆富士へと枯野道
①またMがイニシャルのカレ毛糸編む
②毛糸編むカラヤン指揮の「運命」を
③果樹園の猫の転がす毛糸玉
2021.11.12
冬凪や棺にペンは入れないで
①いつの間に鳥語覚ゆる干菜かな
②干菜汁宿の仲居の津軽弁
③節約が自慢の母の干菜汁
2021.11.11
花八手ひとり残され逆上がり
①干蒲団だんだん褪せる日本地図
②出勤の妻を見送り蒲団干す
③隣家からカレーの匂ひ干蒲団
④ぞんざいに学生寮の干蒲団
⑤雀らの朝の語らひ干蒲団
⑥干蒲団輪禍の駅の慌たたし
2021.11.10
冬の日やデキャンタ入りの白ワイン
①白と黒分かれオセロの浮寝鳥
②よく慣れて不忍池の浮寝鳥
③キャッチ、ソー掛け声聞くや浮寝鳥
④昨夜の夢話しているか浮寝鳥
⑤不自由なフリーの仕事浮寝鳥
2021.11.9
初冬の雨はへつちやらランニング
①ちり鍋や昨日のことをぐずぐずと
②ちり鍋やもみじおろしの煌々と
③ちり鍋や口説き文句の済し崩し
④ちり鍋や山吹色に箱の底
2021.11.8
冬浅し缶コーヒーの掌の吐息
①泣き言は言はぬ漢の潤目かな
②大小は席次で決める潤目かな
③頭から齧る潤目の砂の音
2021.11.7
立冬の襷まぶしき伊勢路かな
①立冬の襷まぶしき伊勢路かな
②立冬や薄荷の香る歯磨き粉
③先導は白バイ二台冬来る
④印字無きタイムカードや冬来る
2021.11.6
行く秋や退部届の斜め印
①秋の果リュックサックの底の砂
②秋の果稟議書の印かすれをり
③行く秋の登山に向かふ首タオル
④秋の果立ち食い蕎麦の送風機
⑤片べりのリップクリーム秋の果
2021.11.5
暮の秋キャッチボールの掌の痛み
①使われず涸ぶグローブ破芭蕉
②破芭蕉せつかく休みだつたのに
③姉ちゃんの似合わぬパーマ破芭蕉
④老醜は心のかたち破芭蕉
⑤ひび割れしサーフボード破芭蕉
⑥破芭蕉とぎれとぎれの子守唄
2021.11.4
秋の暮スタジアムから切れぬ列
①大学の願書を買ふも冬支度
②よく食べてふつくらするも冬支度
③投げ槍の槍を磨くも冬支度
今日も元気でお過ごしください。
2021.11.3
各々の斯界の顔や文化の日
①露寒の少年の掌に光るもの
②露寒のキャッチボールの掌の痛み
③露寒のカチカチ鳴らすごみバサミ
④露寒のトライアングル吊るす紐
2021.11.2
まつすぐな瞳へ募金赤い羽根
①故郷の野山の色の遠くなり
②乾杯は野山の色に一人旅
③知らぬ間に野山の色のパレットに
④おぼろげな野山の色やかはたれに
2021.11.1
蓑虫や無実の我を閉じ込めて
①晩秋やばら銭数え販売機
②晩秋の影を引きづる木歩句碑
③晩秋や妻の咄嗟の白い嘘
④晩秋や折れしバットを釘で止め
2021.10.31
色変へぬ松や八十路の祝ひ酒
①牛頓のGと戦ふ木の実かな
②足裏をがりりと齧る木の実かな
③病床の妹の土産に選る木の実
④聞かざるの像に真つ赤な木の実かな
2021.10.30
十月の勝利の女神西北へ
①海螺打や浜辺に埋まる蝶ナット
②海螺打や星を浮かべるカプチーノ
③海螺打に始まる海の嵐かな
2021.10.29
大学の願書を買ふも冬支度
①白露や仏足石の一行詩
②白露や思ひ出はみな美しく
③白露やバックネットの赤き錆
④白露や妻の顔にも泣きぼくろ
⑤白露やビルの谷間の鯨塚
2021.10.28
鬼ヶ島帰りの雉や芒原
①鯉どちに紛れて秋の金魚かな
②眇して秋の金魚は反抗期
③リサイクルショップの秋の金魚かな
④学童に秋の金魚とけん玉と
2021.10.27
鯖雲やzoom会議のハウリング
①閻王に供える栗の毬の尖りかな
②ひたぶるなくろぺちゃの黙栗むいて
③栗を剥く結婚指輪かたはらに
④年貢とて食べられぬ栗拾ひをり
⑤栗剥いて小さいころの夫のこと
2021.10.26
どの局もテレビ通販朝寒し
①美術展シルバー示す免許証
②お目当てはカフェのカレーや美術展
③残像は白き壁のみ美術展
2021.10.25
外野席のレジャーシートや秋の昼
①乗り換えのホームに眺む芒かな
②左手の芒をしかと杖の刀自
③雪女ゆかりの橋の芒かな
④芒中仮設トイレの細き影
2021.10.24
涸ぶほど薊を吸へり秋の蝶
①へらへらと嫁の差し出す笑ひ茸
②鑑識の白き手袋わらひ茸
③一羽のみ美声の鴉わらひ茸
2021.10.23
必勝の赤飯握る秋の朝
①霜降の箱根駅伝予選会
②霜降やバーボン注ぐスキットル
③霜降や朝定食の魚の眼
④霜降や経行鐘の硬き音
⑤霜降や始発電車の指呼の先
⑥霜降や蛇篭を運ぶダンプカー
⑦霜降や鼻の欠けたる石狐
⑧霜降のうつすら白き鴉の背
⑨霜降や白きの混じる力芝
2021.10.22
白ぶどう永作博美よく泣くね
①朝寒のシューズの赤き蝶結び
②朝寒の弁当箱の醤油鯛
③朝寒の十秒で済む点呼かな
④朝寒の鞄の中の「細雪」
⑤朝寒や空の遅延証明書
⑥朝寒の単語カードをめくる指
⑦朝寒や納豆繁く掻き混ぜて
⑧朝寒の駅スタンドのメロンパン
⑨朝寒の寺の離れの坐禅堂
➉朝寒や厨の水おと頭上から
⑪くしゃみして魔女の一撃朝寒し
⑫作業着のバッチ逆さま朝寒し
2021.10.21
朝寒やこんもり黒き狸の糞
①榠樝の実お大師さまの金言を
②鰐口の音の硬さや榠樝の実
③慟哭の過日忘れず榠樝の実
2021.10.20
冠雪の富士へ吹く風白頭翁
①秋刀魚買ふ末廣亭の昼跳ねて
②発泡酒タイムセールの秋刀魚なら
③薄濁るタイムセールの秋刀魚の眼
④秋刀魚焼く無常の顔を赤らめて
2021.10.19
目に風を当てる検査や小鳥来る
①早逝の友を肴に走り蕎麦
②耳朶の銀のピアスや走り蕎麦
③仲見世の賑わい戻り走り蕎麦
2021.10.18
秋寒や衣桁に光る羽根団扇
①庭球に硬軟雀蛤に
②雀は蛤にべた凪は大時化に
③新在家御門の雀蛤に
④舌切られ雀泣く泣く蛤に
⑤千声の雀蛤となり寡黙
2021.10.17
①柿干してけふの為替の値動きを
②東京は帰るところと柿を干す
③柿干すや日照雨に煙る伯耆富士
④柿干すや蘇芳に染まる山の影
⑤柿干すや逢魔時の後ろ髪
2021.10.16
秋天や内定式の躾糸
①色鳥や目方で売れるトンボ玉
②色鳥や園児の作る鬼瓦
③色鳥や花簪を姫挿しに
2021.10.15
石塀に並び木瓜の実梟首めき
①芋煮会右も左も語尾に「だべ」
②出稼ぎの苦労話を芋煮会
③騎馬戦の仇と睦み芋煮会
2021.10.14
「あなたへのおススメ」を買ふ星月夜
①いつぞやのボール見つける刈田かな
②色づきぬ伯耆富士へと刈田道
③苅田原逃げるも追ふもつまづきて
2021.10.13
軍手にも左右のありや甘藷
①木瓜の実やピンポイントで効く薬
②石塀のさらし首めく木瓜の実よ
③木瓜の実や庭掃く僧の白つむり
2021.10.12
天の川ドラフト漏れのバットダコ
①菜虫這ふ袋や無人直売所
②菜虫捕る小さきつむじ父に似て
③二股の怒りむき出す菜虫かな
④菜虫とることも時給にアルバイト
⑤菜虫捕る家業の危機を救はんと
⑥知らぬ間に逐電したる菜虫かな
2021.10.11
小三治のはにかみ笑ひ星流る
①自粛の世去年の新酒も古酒に
②古酒貯まるもう何度目の断酒かな
③古酒に酔ふラベルに遠き故山の画
④古酒酌んでまた新入りのうわばみよ
⑤古酒に酔ひ言いたくもない世辞ひとつ
2021.10.10
AIは蝶の毛虫と草の花
①二の腕の漢字のタトゥー秋寒し
②秋寒し弥撒に使ひし葡萄酒
③秋寒し命芽生ゆる試験管
④秋寒し箱庭中の水車小屋
2021.10.9
学生ランナー一番橋へ秋風へ
①色変へぬ松新球場はドーム式
②恐竜の復元模型松色変へず
③色変へぬ松大名跡のお家芸
④色変へぬ松藩校の名を受け継ぎて
⑤色変へぬ松主君のために流れた血
2021.10.8
幾度も安否確認星月夜
①幾たびの安否確認けふ寒露
②平熱の体温計やけふ寒露
③参道の玉砂利白き寒露かな
④中刷りの白抜き文字やけふ寒露
2021.10.7
秋雨や北斎翁の一行詩
①駆け抜けるシューズの白さ水の秋
②水の秋象の絵柄のモノレール
③鷺と鵜の関ケ原なり水の秋
④傘の柄のテプラシールや水の秋
2021.10.6
秋暁やいつもとフォーム違うねと
①宵闇や十年もののラフロイグ
②宵闇やゴルフボールを足裏に
③宵闇に大中小のトロフィーが
④宵闇やアンダンテなる咀嚼音
2021.10.5
①障子貼る小泉八雲の右目
②長年の碁敵待ちて障子貼る
③障子貼り常より澄める読経かな
④住み込みの前座習はぬ障子貼る
⑤障子貼るそばから妻のダメ出しは
⑥障子貼る一年ぶりの母の愚痴
⑦障子貼る僧逐電の破れ寺に
2021.10.4
①手ごたえのわりに小さき甘藷かな
②軍手にも左右のあるや甘藷堀り
③ドレスめくアルミホイルや甘藷焼く
④掴み出し村肝めける甘藷
⑤甘藷堀り十対三で紅の勝ち
2021.10.3
満塁の走者一掃いわし雲
①秋の蛇修道院の破れ垣
②秋の蛇まだまだ続くテレワーク
③チャラ瀬へと続く脇道秋の蛇
2021.10.2
王様になれぬ王子や星月夜
①白き鳥一羽の残る冷ゆる川
②立て籠もり朝まで冷ゆるヘルメット
③立て掛けたとたんに冷ゆる猫車
④落選の議員バッチの冷ゆる音
2021.10.01
ハンザキの白きつぶら眼台風来
①天高しこの角度ならホームラン
②給食の居残りの子や天高し
③天高く植木等の高笑ひ
④ワンバンのフォークボールや天高し
⑤天高し瓶牛乳を飲む角度
⑥天高しアルプス席のビール売り
⑦天高し集合しろとホイッスル
⑧腰反てラジオ体操天高し
2021.9.30
シャツ脱いでイエローカード九月尽
①哀れ蚊や酒一合に酔ひつぶれ
②哀れ蚊や尿瓶に紅き造り花
③哀れ蚊を打てぬ花眼の翁かな
2021.9.29
茸生ゆ天狗の駆ける高尾山
①小人らのボルダリングや猿茸
②猿茸腰掛けもせず食べもせず
③山祇の嘆きの数や猿茸
④猿茸コロボックルの階と
⑤廃校の校舎の壁の猿茸
2021.9.27
東大の逆転勝ちや空高し
①彼岸花百鬼夜行の道の辺に
②彼岸花駆込寺の門前に
③彼岸花曲がりしままの水位標
④目を背く輪禍の屍彼岸花
⑤炊煙のたなびく里や彼岸花
⑥恩讐の色を湛へて彼岸花
⑦彼岸花恋に狂ひて火付けとは
2021.9.26
天高しまぐれ当たりのホームラン
①ラフランスあばら家なるもアトリエと
②日焼けせし乱歩全集ラフランス
③画用紙の甘き香やラフランス
④日本人離れの姿態ラフランス
⑤ラフランスぼろアパートにメゾンとは
⑥聖職の友に供ふるラフランス
2021.9.25
はぐれ雲画帳に褪せし彼岸花
①昨夜の雨含んで重き千草かな
②さすらひの画家の寝床の千草かな
③竹皮の弁当開く千草かな
④幼子が病母に手折る千草かな
2021.9.24
秋分や五回コールドまぬがれて
①リサイクルマークの缶やちちろ鳴き
②脱藩の龍馬の道やちちろ鳴く
③ちちろ鳴く睡眠剤とねんごろに
④かすれゆく蛍光ペンやちちろ虫
⑤ちちろ鳴く夜勤帰りの残り月
⑥ちちろ鳴く狭庭に残るポチの家
⑦ちちろ鳴くホームベースはベニヤ板
⑧トーキーの喜劇役者やちちろ鳴く
⑨番号で呼ばれる点呼ちちろ鳴く
➉既往歴たどる鉛筆ちちろ虫
⑪ちちろ鳴くシェイクスピアの造る庭
2021.9.23
黒塀の狭庭に白き秋薔薇
①秋分や鏡にうつる別の顔
②秋分の高尾天狗の阿吽像
③秋分や男坂より女坂
④秋分や五回終わつて無得点
⑤秋分やロードコーンで折り返し
⑥秋分や仲入り告げる寄席太鼓
⑦秋分の草野に刺さる白き羽根
⑧秋分や鴟尾の形の屋根飾り
2021.9.22
ガジュマルに縋りつくごと秋の蝶
①鱗雲四コマ漫画連連と
②鱗雲UFO型の信号機
③お悔やみの刺繍電報鰯雲
④日本語は五つの母音鰯雲
⑤アナーキな恋の行く末鱗雲
2021.9.21
遠吠えのポチの眼や今日の月
①十五夜やロケ弁当の目玉焼
②十五夜や手塚治虫の「バンパイヤ」
③十五夜の懐中時計また動き
2021.9.20
秋の風球場で聞く訃報かな
赤黒のネクタイしかと流れ星
①OKの形でつまむ黒葡萄
②黒葡萄明日は引鉄弾く指
③モノクロの戦争映画黒葡萄
④黒葡萄あとから入れる句読点
⑤黒葡萄席まばらなるあずさ号
2021.9.19
糸瓜忌やボールの糸は百八つ
①参道の簾名残の純喫茶
②夕暮れの名残簾にドヤ街は
③背脂の臭ふ簾名残かな
2021.9.18
ナルトって味がないよね台風眼
①糸瓜水注ぐコップの麒麟の画
②糸瓜水取り評判の茶屋娘
③仕送りに祖母の自慢の糸瓜水
④陶器肌守る富山の糸瓜水
⑤天然の言葉に負けて糸瓜水
2021.9.17
曼珠沙華人身事故のアナウンス
① 灯火親し友の名探す投句欄
② 灯火親し運命線の分岐点 
③ 灯火親しテスト範囲は平安期
2021.9.16
租借地の鉄条網や泡立草
①小鳥来る待避エリアは十年目
②二回目の注射の痛み小鳥来る
③兄は北姉は南へ小鳥来る
④小鳥来る限定品に長き列
⑤購買のやきそばパンや小鳥来る
⑥恐竜の飛び出す絵本小鳥来る
⑦トランプの山を崩せば小鳥来る
⑧ブラウザのバージョンアップ小鳥来る
⑨年金の通知はがきや小鳥来る
2021.9.15
満月やメッシを探すカンプ・ノウ
①通勤の窓に眺むる秋祭
②アンテナペン購ふ教師や秋祭
③秋祭駐車場からワッショイと
④秋祭一年にぶりに飲み交わし
⑤学ランと浴衣並んで秋祭
⑥乾杯のための神輿や秋祭
⑦籤引きの一等残る秋祭
2021.9.14
票田をしかと囲んで虫の闇
①目が覚めて終着駅の虫時雨
②行人の東司の作法虫時雨
③過疎村の逢間時や虫時雨
④虫時雨魔鏡に浮かぶ耶蘇の影
⑤キックオフ午前三時の虫時雨
⑥虫時雨縁切寺に弾む息
2021.9.13
狐花思はれ人は突然に
①稲掛や頭をなづる太き指
②稲掛や一服つける長煙管
③稲掛けて頂残る伯耆富士
④稲掛や補聴器ごしの篠笛は
2021.9.12
土色のまま死にゆくかバッタどち
①台風や左右に揺れる鳩の首
②颱風や転校生は伊藤野枝
③台風やがたんと止まる乾燥機
④指し棒の先の尖りや台風来
⑤バカボンのほっぺ疼きて台風来
⑥台風の去つて大鯉ごろごろと
⑦台風や麺バリカタでネギ抜きで
⑧台風やサードフライをセカンドが
⑨予報士の交代の日や台風来
2021.9.11
蝉声の底へこつんと櫟の実
①順風のじきに逆風秋桜
②矢吹丈何回倒る秋桜
③秋桜新婦のくぐるきつね雨
④秋桜神輿のごとき霊柩車
⑤コスモスや少年院の昼休み
2021.9.10
東京に出ると告げし日二十世紀
①狛犬の鼻の欠けある厄日かな
②砂浜に碁石見つける厄日かな
③直球のおのずと曲がる厄日かな
④アンド記号画面を埋める厄日か
2021.9.9
夕餉どき塀過ぐる猫秋風鈴
①臨月の海女も混じつて鰯引
②校長のしんがり務む鰯引
③地震の傷残る岸壁鰯汲む
④海猫の声を近くに鰯引く
2021.9.8
時として数は暴力黒葡萄
①お詫びとて差し出す父のかぼちゃかな
②とうなすや出る釘のもう錆びついて
③南瓜食ぶ女難の相の四角顔
④馬車になれカボチャに祈るいかずごけ
⑤宿題の写生のかぼちゃ夕飯に
2021.9.7
枕辺の眼鏡を探すけふ白露
①流血の夢に目覚むる白露かな
②枕辺の眼鏡を探すけふ白露
③粉チーズたつぷりかける白露かな
④どろどろのスパイク洗ふ白露かな
⑤カラフルな点字ブロック白露かな
今日も元気でお過ごしください。
2021.9.6
散骨の船にながむる雁の列
① 爪紅やドレスアップで行く先は
② つまべにや良人と書いておつととは
③ メンソール煙草にしたわ爪紅
④ ゴスロリのコスプレウィッグ爪紅
2021.9.5
秋雨やもう毎日が定休日
①秋の灯やサイフォン見える喫茶店
②秋の灯やメンバー表は投手から
③秋の灯やソファーに眠る吾子の頬
④秋の灯や耐油袋にボナペティと
⑤秋の灯や名画座前の喫茶店
⑥霜雪のパントマイムや秋灯
2021.9.4
瞬くアップルマーク秋の雨
①必勝の文字のかすれや扇置く
②突きささるみつをの言葉扇置く
③ひと夏を皺に刻みし扇置く
④文机に忘れし眼鏡扇置く
⑤口伝の三遍稽古扇置く
⑥かすかなる白檀の香や扇置く
⑦寄合の手持ち無沙汰の扇置く
⑧はなむけの一句したため扇置く
⑨封印を解かぬままに扇置く
2021.9.3
草の花死生観などおざなりに
①秋風や煙草に匂ふメントール
②秋風や文庫カバーのバーコード
③秋風やねじ巻き式の拍節器
④秋風や太公望の突堤に
2021.9.2
新涼や米寿の歩き矍鑠と
①やめどきのいつも分からず草の花
②稲荷社のひそむ陋巷草の花
③ためらわず絶交告げる草の花
④草の花ズボンに白き力布
⑤草の花反戦歌ふベルボトム
2021.9.1
対策の言葉に倦んで九月来
①寒蝉や「クマ注意」とて看板に
②寒蝉や手傘に受くる狐雨
③寒蝉や自転の速度ゆるやかに
④寒蝉や頬をかすめる風白き
⑤寒蝉や遥拝したる伯耆富士
2021.8.31
草の花詠め言の葉の涸れるまで
①犬蓼やポイント全部使います
②犬蓼や宿坊前の急な坂
③犬蓼や星屎落ちし過疎の村
④犬蓼やあれは初恋だつたのか
⑤犬蓼や妖怪の名の無人駅
⑥犬蓼や立小便のドライバー
⑦犬蓼や盗聴器入りぬいぐるみ
⑧犬蓼やスーツケースの白きパケ
2021.8.30
投げるのも打つのも智辯風は秋
①鈴虫のしきりに誘ふ黄泉の国
②鈴虫や頬掠めたる風白き
③鈴虫や城へと続くなまこ壁
④鈴虫の削る真闇の鉋屑
⑤鈴虫や托鉢僧の施財の偈
⑥鈴虫や骨伝導のヘッドホン
2021.8.29
草臥れたメガホン叩く残暑かな
①配牌に愚痴ぐだぐだと夜食とる
②揚げ物の衣を剥がす夜食かな
③監督の帽子を脱いで夜食かな
④大入袋渡して頼む夜食かな
⑤妹の夜食に釣られもう一問
2021.8.28
猫じゃらし三つの部活グランドを
①涼新た学生戻る定食屋
②涼新たセーラ―服がタクト振り
③ポロシャツの胸のペンギン涼新た
2021.8.27
秋の蝉右手を挙げて果てにけり
①芋の葉や昭和の空は広かつた
②芋の葉やレシピに祖母の美し文字
③芋の葉やコロボックルの傘の波
④芋の葉や友忽ちに薩摩弁
⑤芋の葉や東海林さだおの「丸かじり」
2021.8.26
まなうらの姉は年下赤まんま
①飛蝗佇つ北緯三十八度線
②飛蝗飛ぶ徳川二百六十年
③飛蝗増ゆ一人っ子政策いまだ
④イチローのサイングローブバッタ捕る
⑤福生へとルート十六バッタ飛ぶ
2021.8.25
薬袋に残る名前や秋燈下
①蜻蛉やグランド整備レギュラーが
②蜻蛉やランドルト環の気まぐれ
③蜻蛉や神の言祝ぐ声の主
④蜻蛉や小指で開く袋とじ
⑤決め球はしょんべんカーブとんぼ飛ぶ
⑥蜻蛉やちょっぴり曲がるスライダー
⑦蒼穹に蜻蛉の一矢伯耆富士
2021.8.24
瑠璃窓を幾度も叩く秋の蝉
①猫じゃらし姉から習ふ変化球
②猫じゃらし意外ときつい妻のヤジ
③決闘の墓に折れたる猫じゃらし
2021.8.23
女子野球決勝処暑の甲子園
①球場に「島唄」流る処暑の雲
②焼き杉の牛乳箱や処暑の朝
③古本の十字結びや処暑の朝
2021.8.22
蜻蛉の待つプレイボールの刹那かな
①秋口の白衣の袖のインク染み
②秋口の光れと磨く玻璃戸かな
③秋口やセーラー服の白タクト
2021.8.21
蜻蛉の待つプレイボールの刹那かな
①秋口の白衣の袖のインク染み
②秋口の光れと磨く玻璃戸かな
③秋口やセーラー服の白タクト
2021.8.20
秋晴や連絡続く内定の
①小鰭鮓光る檜のカウンター
②小鰭買ふ築地を霞む銀の雨
③紋付の師匠とつまむ小鰭鮓
2021.8.19
七色といふは真か秋の虹
①秋茜長嶋よりも王が好き
②秋茜村の匿ふ御落胤
③一村に天狗伝説秋茜
④秋茜飛んで本日地球最終日
⑤秋茜糸引きの飴またも赤
2021.8.18
球審の「ゲーム」のコール秋の雨
①萩の戸を開く女将の袋帯
②ここからは警戒区域萩の原
③萩ゆるる小仏峠行のバス
④うつせみのわれも旅人萩の風
⑤萩の戸を押せば子供を叱る声
2021.8.17
秋めくやメッシのいないバルセロナ
①秋旱ラクダのこぶの愛し方
②秋旱月の砂漠はどこの国
③日時計の乾びし影や秋旱
④D51の煙まつくろ秋旱
⑤秋旱ナウマン象の長き牙
⑥秋旱砂漠と言うな砂丘だよ
⑦秋旱ポテトチップス齧る音
2021.8.16
大雨のニュースえんえん虫の声
①精霊舟亡き棟梁の太鼓判
②精霊舟ドーイドーイの掛け声に
③精霊舟読経の僧の青つむり
2021.8.15
雨音の煮えたつごとく終戦日
①二回目も平気だつたと生身魂
②生身魂ロースカルビを二人前
③一合の酒を守つて生身魂
④朝夕の般若心経生身魂
⑤生身魂干支の名前の三姉妹
⑥下町のナポレオン酌む生身魂
⑦途切れない一日一句生身魂
⑧三味線を持てば矍鑠生身魂
⑨二回目の百名山と生身魂
➉誇らしき寮歌忘れぬ生身魂
2021.8.14
赤錆の螺旋階段牽牛花
①風に揺れ風を揺らして蕎麦の花
②蕎麦の花レンタサイクル三時間
③蕎麦の花水道水の美し街
④バス亭の大村崑や蕎麦の花
⑤胞衣塚を真白に囲む蕎麦の花
⑥幸福の鐘の鳴る丘蕎麦の花
⑦浮雲の落胤めける蕎麦の花
2021.8.13
椋鳥や十三日の金曜日
①好物のいちご大福盂蘭盆会
②盂蘭盆会泣きたいときは海に聞け
③盂蘭盆会テイクアウトのタイ料理
④私って見えちゃうのよね盂蘭盆会
⑤盂蘭盆会生涯打率二割二分
⑥動かない懐中時計盂蘭盆会
2021.8.12
青柿や分かりもしないプルースト
①ライバルの紅きグローブ秋暑し
②秋暑し現金運ぶ革鞄
③秋暑し炎上させるつもりでしょ
④秋暑しイントロ長き歌謡曲
⑤秋暑し焦げ目のつきしテントペグ
⑥秋暑し駅のホームの天狗像
⑦秋暑し東京ドームあれだよね
⑧きりきりと解けぬ靴紐秋暑し
⑨秋暑し一息に飲む養命酒
2021.8.11
満塁で三者三振蝉落つる
①さっきまで泣いていたでしょ酔芙蓉
② 「いつもの」で並ぶ三皿酔芙蓉
③ 昼酒は効くねと笑ふ酔芙蓉
④ 酔芙蓉オーレ飛び交ふフラメンコ
⑤ 監督の娘と知らず酔芙蓉
⑥ 賽の目で決める行く先酔芙蓉
⑦ 酔芙蓉カップに残るティーバッグ
⑧ 酔芙蓉酔えば酔うほど強くなる 
⑨ 証言の二転三転酔芙蓉
2021.8.10
八月の土の匂ひや甲子園
①母方は多産の家系種瓢
②川の名の地酒で満たす青瓢
③偏差値で決める進学青瓢
④瓢箪やぶらぶら生きて半世紀
2021.8.9
大迫傑選手ラストラン
初秋やまつすぐ生きるこれからも
①いつからか韓流の街鷹の爪
②鷹の爪七人の敵いまは友
③根性を叩き直すと鷹の爪
④言い聞かす短気は損気鷹の爪
⑤唐辛子赤モヒカンの丁寧語
⑥鷹の爪隠しきれない魔女の鼻
2021.8.8
長き夜や天に掲ぐる金メダル
①かなかなや遺言どおり樹木葬
②かなかなや断頭台の刃の光
③かなかなや暁闇の綻びに
2021.8.7
立秋や大きな声で言へないが
①立秋や甲子園ってまだだよね
②立秋や座り直して観るテレビ
③立秋やこつそり使ふニューボール
2021.8.6
原爆忌ピンポン玉の軽さかな
①行く夏の意外に小さき時計台
②行く夏や会社訪問二十社目
③行く夏やずつしり重き優勝旗
④行く夏やオナガの佇てる鬼瓦
⑤行く夏の膕のみの白さかな
2021.8.5
炎昼や読経の僧は元球児
①ペンギンのマークのガムや秋隣
②湧水で淹れしコーヒー秋隣
③自転車のカゴの道着や秋隣
2021.8.4
向日葵や拳闘少女世界一
① 青胡桃合唱の子の喉仏
② 恋文の封印固し青胡桃
③ また伸びる研修期間青胡桃
2021.8.3
ナイターの熱孕む闇さんざめき
①蝉時雨あんなに元気だったのに
②またこれも吉永小百合蝉時雨
③蝉時雨トンボ当番ジャンケンポン
④蝉時雨うっせえうっせえうっせえわ
⑤毎日が「閉店セール」蝉時雨
⑥蝉時雨始まる前に走り切れ
⑦マスクして皇居ランナー蝉時雨
2021.8.2
缶ビール供ふあの日の急カーブ
①薬袋に残る名前や合歓の花
②突き返す見合い写真や合歓の花
③少しだけいつも寝不足合歓の花
2021.8.1
八月やシャツもシューズも富士も青
①赤富士や朝日にかざす命名書
②赤富士や撮り鉄待てる河川敷
③ささくれの心に滲みる赤富士よ
2021.7.31
雷や金属バット握りしめ
①油照レバーはタレであとは塩
②ポマードのティッシュ配りや油照
③ 油照キッチンカーのアラビア語
2021.7.30
冷麦やゆつくり急かす祖母の声
①白服のアイドル今も虚言癖
②白服や理系少女の黒眼鏡
③白服の少し離れて通夜の列
2021.7.29
七月の球児の夢を伯耆富士
①乙姫の乱心なれや土用波
②拡大と最多と煽る土用波
③予報士の眉吊り上げて土用波
2021.7.28
夏の月ソフトボールの金メダル
①湘南は恋の掃き溜め夜光虫
②きつかけはもらい煙草や夜光虫
③マドロスに別れの美学夜光虫
2021.7.27
夏芝に弾むサヨナラホームラン
①パラソルや物理教師の妻の顔
②パラソルを畳みタクシー銀座まで
③パラソルの揺るるに応ふ大漁旗
パラソルを畳み一日の疲れかな
パラソルを傾げサヨナラホームラン
2021.7.26
延長の熱戦語る日焼けかな
①虫干に返せぬ友の文庫本
②虫干やふと読み耽る日記帳
③虫干や誕生の日のテレビ欄
2021.7.25
百均でシャネルに合はすサングラス
①冷汁や嫁の電話の標準語
②何となく生きて健やか冷汁
③ジョギングと般若心経冷汁
2021.7.24
東京オリンピック開会式
入場はゲーム音楽夏の月
①夏虫や尖がらなこれば刺さらぬと
②夏虫や迷彩柄のワンピース
③夏虫や喉に貼りつく粉薬
2021.7.23
マッチョマン踊る大暑のお立ち台
①いちどきに声低くなるサングラス
②歯並びであいつとわかるサングラス
③サングラスだけはイチロー草野球
2021.7.22
負けたのも誰かの母校日の盛
①レコードの怠惰に回る大暑かな
②着ぐるみのバク転決まる大暑かな
③大暑かな濃き紅の優勝旗
2021.7.21
熱帯夜妻の寝息と飛行音
①「天国と地獄」で目覚む三尺寝
②三尺寝指を栞に「放浪記」
③三尺寝ルパンの盗む十五分
2021.7.20
土用次郎探す日なたの電話帳
①スクラムの骨軋む音芝青し
②青芝に落ちる白球サヨナラ打
③青芝や志望大学開放日
2021.7.19
乾ぶ影引き摺り走る猛暑かな
①ハブ酒の封印緩む土用入
②トルソーのラッカーボディ土用入
③土用入駅のホームの天狗像
土用入老ランナーの赤き靴
さみどりの自転車駆つて土用入
土用入八村塁の富山弁
2021.7.18
夏の山茶屋のマドンナ傘寿かな
①帽章の金の稲穂や青田風
②もともとはうちの土地だよ青田風
③練習の最後は校歌青田風
2021.7.17
梅雨明けや最後の打者になるものか
①独り居の厨に鳴かす茄子の紺
②ワインより高き醤油や茄子焼く
③匂い立つ黒板塀の茄子かな
2021.7.16
雲の峰三人からの甲子園
①真夏日や粗石の下のハサミムシ
②真夏日やドーベルマンの黒光り
③真夏日の茣蓙に並べる鶏の首
④真夏日や墓マイラーの団体は
⑤真夏日や読経の僧は元球児
⑥真夏日の放置自転車累々と
2021.7.15
昼顔や鉄路支ふる古煉瓦
①川風に八文字描く花魁草
②花魁草悲恋でなけりゃよいのだが
③花魁草新造めける白き蝶
2021.7.14
ホームランダービー前に玉の汗
①旅人の脚軽ろかに水振舞
②宿の名の二つのコップ水振舞
③杉玉の若やぐ匂ひ水振舞
2021.7.13
PKに弾ける声や梅雨晴間
①涼風の口開け待てる縄のれん
②涼風の一番電車信濃へと
③涼風や一番風呂の帰り道
2021.7.12
多摩一本杉球場
初蝉や江夏豊の終焉地
①梅酒酌む十年ものの不眠症
②梅酒は薬と猪口で下戸の妻
③健康のためと梅酒五合も
2021.7.11
就活のゴール幽かに梅雨の雷
①日米のパワーバランスザリガニも
②後ろからそつと捕めよざりがには
③ざりがによ鋏あるゆえ戦ふか
2021.7.10
①エナメルのライダースーツ炎暑にも
②真黒な涙のピエロ炎暑かな
③自動ドア空くたび襲ふ炎暑かな
炎暑かなカレーの辛さ五段階
ラマ服が肉購へる炎暑かな
病廊に迷子となりぬ炎暑かな
炎熱に負けず五輪のマスコット
糞つけて返球したる炎暑かな
2021.7.9
梅雨出水鳴りつぱなしの警報機
①鬼灯市電気ブランの口実に
②レンタルの浴衣で揃ひ鬼灯市
③鬼灯市筮竹さばく白き指
2021.7.8
送り梅雨そろそろやめてくれないか
①鑑定の値付け気まぐれ青簾
②青簾蔵書と言えるものなきに
③掛け軸の朱き落款青簾
2021.7.7
天の川べた踏み坂は発射台
①大雨の安否確認けふ小暑
②小暑かな濁音で鳴くオナガドリ
③小暑かな腰痛に効くヨガポーズ
2021.7.6
立葵歳三眠る石田寺
①夕餉今は小さき父の鮎
②火炙りに梅根性の鮎の貌
③川の名の地酒を酌める鮎の宿
川の名の地酒を酌める鮎の宿
火炙りにたちまち鮎の悪相に
鮎焼くは難し火加減塩加減
2021.7.5
プロポーズするもされるも立泳ぎ
①ごきぶりや逃げるといふも処世術
②ごきぶりを打つ専用のスリッパは
③ 神世には美声の誉ごきかぶり
2021.7.4
いつまでも五輪反対梅雨寒し
①雨乞にてるてる坊主しかめ面
②雨乞や蒼穹に舞ふ紙垂の白
③雨乞や神社に佇てる黒毛馬
2021.7.3
半夏雨たつぷり残るロスタイム
①あーえーとフィラー聞こゆる青葉闇
②青葉闇抜けて点呼や探検部
③木の枝を振って進むや青葉闇
青葉闇ここに始まる絹の道
2021.7.2
バナナ振りイチローばりの打撃論
①卒業のアルバム編める半夏生
②曳白の一日となりぬ半夏生
③隠り沼の大き足跡半夏生
④二番目にうまい店とな半夏生
⑤八勺の蛇の目盃半夏生
2021.7.1
梅雨寒やひとりに倦める人魚姫
①バナナ食ぶ決勝戦の五分前
②マラソンのエイドのバナナ五百本
③叩き売る威勢もろともバナナ買ふ
バナナ食ぶ内緒話はタガログ語
バナナ振りイチローばりの打撃論
バナナ持ちアウトコースの打ち方を
2021.6.30
五月雨や甘納豆の消ゆる寄席
①青梅雨や斜線の多きジュノグラム
②青梅雨やカクテルの名にスリリング
③青梅雨やうお座のけふの仕事運
2021.6.29
五月雨や七三分けの鴉の背
①蝉の穴仁徳陵に焼夷弾
②蝉の穴ゲートボールに背を丸め
③漫遊の光圀の杖蝉の穴
2021.6.28
息継ぎは木琴の音亀の子は
①杣人の小さき秘密や苔清水
②苔清水覚醒したと修行僧
③山小屋にいれる珈琲苔清水
2021.6.27
糸蜻蛉イチロー真似てオークリー
①晩成の故人をしのび通夜の鮨
②消毒の臭いのしみし指で鮨
③大胆に柿の葉鮨を葉つぱごと
2021.6.26
さみだるる安田講堂静かなり
①木耳や芳一の耳千切る指
②木耳や悪口のみの地獄耳
③木耳やキャンパス裏の大樹林
2021.6.25
梅雨の星オリンピックの券来る
①前編で飽きる小説さみだるる
②クレームの電話の音やさみだるる
③さみだるる北斎展の最終日
2021.6.24
老鶯やスローカーブを決め球に
①夏川をいくつも越えてふるさとへ
②高台の堅き慰霊碑夏の川
③夏川や造り酒屋の虫小窓
2021.6.23
火曜日は空き缶出す日胡瓜の花
①やご育つビルの谷間のビオトープ
②ガサガサのたも網掬ふ泥とやご
③輪廻する来世探るややごの脚
2021.6.22
追放か逃走かさすらひの蟻
①梅雨冷やデスクトップのオホーツク
②梅雨冷やアルプス席の券もらひ
③梅雨冷や尻下がりなる応援歌
2021.6.21
シャツ脱いでハンドクラップ夏至の夕
①マメーリの賛歌高らか夏至の朝
②夏至の昼引退試合延長へ
③夏至の朝散歩の犬の長き舌
2021.6.20
①お絞りの囲む檜のカウンター
②おしぼりをマイク代わりのインタビュー
③おしぼりのリレー終わつてすわ乾杯
2021.6.19
夏燕マジック書きの花名札
①魂のぬくもり残る蛇の衣
②秘密基地木の枝に掛く蛇の衣
③宝箱一番上の蛇の衣
2021.6.18
梅雨晴やオレンジ軍団は強し
①シンさんに味はお任せ集汁
②スープとふ柄でもないし集汁
③館詰めの夜のお決まり集汁
2021.6.17
五月雨や面接待てるパイプ椅子
①ラジオから流るる「時代」明早し
②新聞を包むビニール明早し
③豆腐屋の湯気の香や明早し
2021.6.16
ガーターの細き二の腕ラムネ飲む
①今年竹不知藪とふサンクチュアリ
②今年竹越後杜氏の櫂さばき
③引継ぎし背番号1今年竹
2021.6.15
濁声の国家を耳に梅雨に入る
①早苗月やうやう速く拍節機
②小面の朱き唇早苗月
③借景に小さき青富士早苗月
2021.6.14
マスクのジョガー上半身は裸
①花栗や勝負パンツの半減期
②花栗やリビドーといふ純喫茶
③花栗や独身寮の二人部屋
2021.6.13
鴎外の墓は素通り桜桃忌
①五月闇二死満塁のマウンドへ
②黴のこる固き仏飯五月闇
③五月闇埋草待てる校了日
2021.6.12
10か国11都市の夏の宴
①玉葱をこすり魔神を呼ぶ呪文
②玉葱を挟み覚ゆる魔球かな
③泣くよりも笑ふがかたし葱坊主
2021.6.11
ナイターのエラーの果てに仰ぐ空
①戦ひの宿命知らずや子蟷螂
②子蟷螂わき目もふらず塾かばん
③子蟷螂セーラー服のタクト振り
2021.6.10
蚯蚓果つ一揆の朝の一里塚
①母なき子呼べば寄り来る緋鯉かな
②独り寝の淫夢に跳ねる緋鯉かな
③甦る山古志村の緋鯉かな
2021.6.9
晴明の護符を剥がせば大夕立
①夾竹桃申し送りに猫のこと
②夾竹桃カープの好きな君が好き
③夾竹桃アニソン流す街宣車
2021.6.8
噴水の辺りへ予告ホームラン
①桜桃の実水揚げの膝固く閉ぢ
②桜桃の実双子の姉は美人局
③パチンコの景品なれどさくらんぼ
2021.6.7
①梅雨曇轢死の指の見つからず
②ジョギングに犬の糞踏む梅雨曇
③鳴き交わす烏の美声梅雨曇
2021.6.6
氷菓舐め聖徳太子コックさん
①恋衣螢袋の中ならば
②螢袋鬱憂(メランコリア)の色の青
③後夜の鐘螢袋の咲きどきを
2021.6.5
Tシャツのしつとり絡む芒種かな
①穀倉のしとどに濡れてけふ芒種
②八重雲の包む日輪けふ芒種
③スタメンに新人並ぶ芒種かな
2021.6.4
ピンチなら俺に任せろ心太
①もう乾く野球小僧の洗ひ髪
②黒塀や悋気の匂ふ洗ひ髪
③墨磨つて絶縁状の洗ひ髪
2021.6.3
お地蔵にブラックサンダー蛇苺
①白板の筋トレメニュー若葉雨
②若葉雨英語の機内アナウンス
③隧道の出口の地蔵若葉雨
2021.6.2
六月の雲光らせて潦(にわたずみ)
①ラムネ飲む野外映画の「ドラえもん」
②ラムネ振る少年野球祝勝会
③ラムネ抜く紙芝居師の指頭
2021.6.1
五月尽喫煙室に列なして
①蟻を踏む詩集の並ぶ地下通路
②荒墓を食い尽くさんと蟻の列
③パチンコの父待つ童蟻を見て
2021.5.31
雲の峰ぐんぐんぐんとホームラン
①コーラ瓶沈む 川瀬に通し鴨
②通し鴨県境またぐ渡し船
③通し鴨見回りしたるお堀端
2021.5.30
南吹く早慶戦は別物と
①ジーンズのポケットに挿す白扇
②バーチャルの修学旅行扇買ふ
③真打の遺せし扇よく動く
2021.5.29
桑の実を踏んで流るる戦の血
①ボサノバの流るる南風のテラス席
②南風入れてまた甦る念持仏
③南風を背にブルペンエース二百球
2021.5.28
PKはキーパー同士夏の月
①アマニ油に光るグローブ走り梅雨
②部屋干しの眼帯の皺走り梅雨
③走り梅雨リンダリンダの歌ひ出し
2021.5.27
夏薊投げつぱなしのフリスビー
①新橋は野球の故郷子規
②時鳥あめんぼあかいなあいうえお
③時鳥PK誘ふマリーシア
2021.5.26
アルバムの給料袋胡瓜咲く
①母の愚痴聞くふるさとの素足かな
②グランドの水撒きしたる素足かな
③生まれるも死にいくときも素足かな
2021.5.25
穴子釣る深夜ラジオの艶話
①憧れはカレルチャペック胡瓜咲く
②出戻りの姉のおめでた胡瓜咲く
③胡瓜咲く農学校の一限目
2021.5.24
代走のデビューに見上ぐ雲の峰
①初夏の僕の帽子を返してよ
②初夏の必ず落ちるココシャネル
③初夏のメインポールの日章旗
2021.5.23
鴨の子の濁世を厭ふ月の色
①遠青嶺懐メロ選ぶバスガイド
②遠投の遥かに高く青嶺かな
③ 遠青嶺かいじを待てる始発駅
2021.5.22
代走のデビューに見上ぐ雲の峰
①初夏の僕の帽子を返してよ
②初夏の必ず落ちるココシャネル
③初夏のメインポールの日章旗
2021.5.21
鴨の子の濁世を厭ふ月の色
①遠青嶺懐メロ選ぶバスガイド
②遠投の遥かに高く青嶺かな
③ 遠青嶺かいじを待てる始発駅
2021.5.20
(田村正和さん逝く)
ハンサムは昭和の遺物聖五月
①夏蜜柑回つてきたら自己紹介
②夏蜜柑ソフトボールは硬いだろ
③夏蜜柑迷彩柄のネイルとは
2021.5.19
走り梅雨右も左もテレワーク
①おすすめはニジマス赤のマジックで
②釣堀の虹鱒焼いて昼の酒
③苞の虹鱒二時間三千円
2021.5.18
ログインす卯月曇の月曜日
① 仕送りのキャベツ刻みし四畳半 
②もんじゃ焼キャベツの砦水攻めに
③ちぎつてもちぎつてもちぎつてもキャベツ
2021.5.17
南風や試合を決めしホームラン
① 墓原の供花めきたる日傘かな
② 校門に迎えの日傘また一つ
③ 白日傘振つて駆け出す女学生
2021.5.16
薄暑光初球で決まるエンドラン
①鵜の翔つてたちまち澄める水面かな
②鷺どちを迎え撃つごと鵜の砦
③諸向きに電車眺むるつがいの鵜
④ 鷺どちに戦線布告鵜の叫び
⑤ デーモンの翼めきたる鵜の翼
2021.5.15
走り茶やテープ飛び交うスタジアム
① 墓原の供花めきたる日傘かな
② 校門に迎えの日傘また一つ
③ 白日傘振つて駆け出す女学生
2021.5.14
雛罌粟や指絡ませて通勤路
①走り茶やチャント遠くにスタジアム
②走り茶や研修生の白バッチ
③走り茶や集会室の青畳
2021.5.13
夏めくや走つて目指す紅き橋
①虞美人草付き馬まいて逃げる道
②虞美人草女衒の帰る田んぼ道
③虞美人草寺へ駆け込む足に土
2021.5.12
いづこよりカレーの匂ふ薄暑かな
①夏兆すターバン並ぶラーメン屋
②夏兆すお地蔵さまに一雫
③球審のマスクにマスク夏兆す
2021.5.11
黒揚羽負けに等しいドローとも
①夏蝶や人影のないテラス席
②夏蝶や接吻しをる道祖神
③あえかなるオルガンの音や夏の蝶
2021.5.10
若返る刀自らの声や毛虫ゐて
①真つ黒な球児を待てる蔦若葉
②店先のトリコロールや蔦若葉
③展示替えの臨時休館蔦若葉
2021.5.9
母の日やうぐいす嬢の安来節
①新樹影托鉢僧の笠の文字
②新樹影紙ストローの苦き味
③新樹影フォークの残るテラス席
2021.5.8
新緑やフェンスへますぐラインカー
①薫風や新球場の除幕式
②薫風や最上段の応援旗
③薫風やボックス席の一区間
2021.5.7
神宮のなんじゃもんじゃや無観客
① 美まし名の外猫に鈴水木咲く
② 純情の汚れるために水木咲く
③ 水木咲くふつくに古りし夫婦箸
2021.5.6
山城に鳥の二つ名柏餅
①新緑や城に二の丸三の丸
②新緑やチャント忘れしスタジアム
③新緑の色も加へて表紙ロゴ
2021.5.5
189の電話0件子供の日
①水突くガラスの鳥やけふ立夏
②夏来る寄贈のボール九ダース
③爪切るもエイトビートの立夏かな
2021.5.4
背伸びしてゴールデン街修司の忌
①無駄にせし前売券や暮の春
②スッピンのゴールデン街暮の春
③暮の春ますます募る帰心かな
2021.5.3
市役所のトップページの蜃気楼
①憲法記念日世論調査の詐欺電話
②憲法記念日エレキギターの左きき
③いつもより酸ゆき梅干し憲法記念日
2021.5.2
春雷やしじまに弾むミット音
①春筍や十三歳の細き首
②杣人の破籠に香る春筍
③春筍や遍路ごころのむくむくと
2021.5.1
愛用のギンガムのシャツ五月来
①勿忘草別れ切り出す深呼吸
②一通は燃やせぬままに勿忘草
③忘却の贖罪重し勿忘草
2021.4.30
荷風忌やカツ丼推しの町中華
①青き踏む同人といふサンクチュアリ
②チルチルとミチルの末路青き踏む
③ポケットに村上春樹青き踏む
2021.4.29
×マークばかりの手帳黄金週間
①説法の僧の円ら眼河豚供養
②花還には知事の名前も河豚供養
③河豚供養弔辞の声の透き通り
2021.4.28
クイーンの自己陶酔や躑躅落つ
①受け継ぎし背番号1竹の秋
②竹秋やパンダの名前募集中
③熊鈴のずつと後ろを竹の秋
2021.4.27
ジョギングに始まる一日夏隣
①豆の花鬼監督の眼に涙
②ドナドナの子牛はいずこ豆の花
③そろばんの玉の弾みや豆の花
2021.4.26
春霞宣言まさか三回目
①炬燵塞ぎK点超えのジャンプ観る
②炬燵塞ぐ真向法を最後まで
③炬燵なき部屋のペナント白き富士
2021.4.25
櫻井の表札隠す春の薔薇
①コンバットマーチの止まぬ春時雨
②春時雨用水桶の木の香り
③春時雨一粒残る丸薬
2021.4.24
スイッチの起こす歓声春愁
①花あざみけふから違ふ通学路
②仕方なく三角ベース薊咲く
③花薊つっけんどんに恋文を
2021.4.23
スタートのボタンの擦れ春暑し
①虎の子の1点いかに子猫抱く
②チャルメラに耳そばだてる子猫かな
③よちよちと猫の子にまで喃語とは
2021.4.22
夕食は二択和牛か桜鯛
①磯開市の寿司屋の貝づくし
②磯開ペアのピアスの男女海女(ととかあま)
③ひとやまはかもめと分けて磯開
2021.4.21
春の波京葉線で夢の国
①古傷のひしひし痛む穀雨かな
②実習は茶髪ばかりの穀雨かな
③モーツァルト流るる牧場穀雨かな
2021.4.20
もろもろの古傷痛む穀雨かな
①古傷の一つや二つ残る鴨
②早立ちの仲間ながめて残り鴨
③シベリアの寒さ忘れし残り鴨
2021.4.19
朧月キネマの中の戦争は
①船笛かゴジラの声か春怒濤
②春濤やママには言わぬ昨夜のこと
③春の波美術教師のループタイ
2021.4.18
風信子白票の手の表裏
①タイガースいつまで勝つや蜂逃ぐる
②蜂騒ぐ三島の燃やす金閣寺
③虫ピンの宝石めける女王蜂
2021.4.17
夏柑やライズボールに目を剥けり
①晩成のままに還暦八重桜
②遊園の隅の野墓や八重桜
③不惑にて公園デビュー八重桜
2021.4.16
壁越しの墓地を背負ひて躑躅かな
①赤福は買わぬと決めて伊勢参
②出雲からツアーで来たる伊勢参
③伊勢参たぶん最後のクラス会
2021.4.15
新入生全員眼鏡生物部
①女子大の門まで続く花水木
②授業中日本語禁止花水木
③待ち合わす三ツ星の店花水木
2021.4.14
マスクなき顔で逢ふ日や花水木
①望遠鏡100円分の蜃気楼
②蜃気楼こする右目の青底翳
③市役所のサイトで知りぬ蜃気楼
2021.4.13
啄木忌夜の銀座の米子弁
①別れ霜始発を待てる地下のバー
②別れ霜夜逃げの家の段ボール
③別れ霜棺打つ石の硬き音
2021.4.12
春暑し水面を打てる鯉の髭
①軟風に震えていたる桜草
②初めての紅のはじらひ桜草
③桜草身に覚えなき走り書き
2021.4.11
東大に1点差勝ちあかぎしぎし
①境標の山独活生ふる基地の街
②山独活を掘る杣人の指頭
③宿坊の独活どつしりと朝餉かな
2021.4.10
葉桜や初めてつける背番号
①蒼穹を蹴り蒼海へ海女潜る
②数多度磯笛吹きし老いし海女
③磯桶の小ぶりの一つ嬰の海女
2021.4.9
春雷や銀ライターの星条旗
①牛突きの歓声隠岐の牧開き
②撫牛の背すずろなる牧開き
③子供らはグローブ抱え牧開き
2021.4.8
椿寿忌や伝統といふ排他主義
①若鮎を見たと玄関に滾つ声
②若鮎や眩き白の俳句帳
③若鮎や塩屋のけぶり黒々と
2021.4.7
ジネディーヌ・ジダンは年下亀鳴けり
①春荒や忙しさ刻む拍節器
②春荒や箱飛び出せしポップコーン
③春荒や将門塚の供花の赤
2021.4.6
清明やスカーフ光る通学路
①養花天一文字の名を練習着
②満たされぬコーヒーカップ花曇
③飛び飛びの出社予定日花曇
2021.4.5
教科書の好きな小説桜咲く
①清明やナースの白きクロックス
②清明やいちご大福家苞に
③清明や着信音の鈴の音
2021.4.4
お守りの新札の土雪とける
①先輩と呼ばるる惑ひ木の芽時
②教科書の匂へる鞄木の芽時
③空ろなる琴の音降りし木の芽時
2021.4.3
演壇に村上春樹入学式
①新社員大学名で呼ばれをり
②整列の一人の寝ぐせ新社員
③カノジョからの勝負ネクタイ新社員
2021.4.2
監督が父に戻れり花万朶
①鐘霞む眠気に耐ふる坐禅堂
②寺町のマドンナの恋鐘霞む
③陽だまりの香箱座り鐘霞む
2021.4.1
入選の報せの電話四月馬鹿
2021.3.31
曇天の鋭(と)き光なり朝燕
①蒜の臭ひも込みの時給かな
②蒜の香や遁走したる野良犬よ
③厨から蒜の香や夜食待つ
2021.3.30
ひらがなの夢見る童春の昼
①背柱にまつすぐかける春の服
②新墓やくるりと見せる春の服
③清爽なシュプレヒコール春の服
2021.3.29
花びらか天使の羽根か春北風
①種蒔くや文字読み難たき飛行船
②種を蒔くホームルームは遅刻の子
③一握の球場の砂種を蒔く
2021.3.28
なほ残る飛行機雲や土筆生ふ
①決め球はフォークのサイン春の雷
②春雷や恐竜ショーに握手会
③春雷や銀ライターの星条旗
2021.3.27
一面はサヨナラアーチうららけし
①朧夜や二番の歌詞の好きな歌
②朧夜の詩僧の筆のさんざめく
③朧夜や万年筆のインクの香
2021.3.26
花の道しどろもどろのサックスよ
2021.3.25
胸文字は早稲田型なり春の土
①失策の球児の涙霾れる
②アパートに見慣れぬ外車黄砂降る
③天を衝くバベルの塔や霾晦
2021.3.24
春の日に乾かす傘の猫絵柄
2021.3.23
スパイクの歯にこんもりと春の土
①残る雪箪笥の奥のへその緒も
②教会のクルスの尖り残る雪
③残る雪一目散の赤電車
2021.3.22
教科書の好きな小説草団子
①ラジオから「時代」流れる星朧
②星朧長命嘆く人魚姫
③若き日の夢はいずこへ星朧
2021.3.21
アフリカンシンフォニー乗せ春の風
2021.3.20
春雲やワンバウンドの始球式
2021.3.19
桜餅美人揃ひの四姉妹
①拾われぬボールの疵や蓮華草
②蓮華草牛のゲップのシーオーツー
③蓮華草打ち棄てられしラブレター
2021.3.18
雉鳴いて恋の荒野になりにけり
2021.3.17
菜の花や黒猫の眼の爛々と
①春北風や佇む鷺の細き首
②春北風や北ウイングの滑走路
③春北風や袋小路の豆腐店
2021.3.16
初花やふと早逝の友のこと
2021.3.15
優勝の悔し涙や春疾風
①進級と坊主頭の大いばり
②級友と会えぬ一年進級す
③進級や追試三回とは言へず
2021.3.14
春雷やパンチパーマの遊撃手
①春嵐テレビの中の打撃戦
②春嵐しきりに揺るる古錨
③春嵐千年眠る木乃伊の手
2021.3.13
枯れ枝の冠となりぬ鴉の巣
①芽柳や正午を報す大時計
②手をつなぐ女同胞柳の芽
③芽柳やスカートめくる天狗風
2021.3.12
一億の1分の黙燕来る
①春景色何度も触る尾てい骨
②春景色メンバー表のインク染み
③春景色自転車ベルの美音に
2021.3.11
鶯のホー引つかかる耳小骨
2021.3.10
わが街の蚕飼の歴史風青む
①凍解やまんまぶーぶの盛んなり
②凍ゆるむズーズー弁のバスガイド
③食い初めの赤飯甘し凍ゆるむ
2021.3.9
春陰や埋葬されぬ鶏の骨
①ものの芽やジーンズのゐる地鎮祭
②ものの芽や大家の腰の鍵の束
③ものの芽や晩成なりとうそぶきて
2021.3.8
踊り子のコーラの瓶の花ミモザ
①出戻りの娘黙つて雛納
②雛納意外に太き婿の指
③令和には5分で終わる雛納
2021.3.7
リーバイス501を買ふと春
①満開の桜知らずや白鳥帰る
②白鳥帰る恩返しなら鶴に言ふ
③レーダーの赤き航跡白鳥帰る
2021.3.6
春の雨ハリウッドなら踊り出す
①合格の祈願ついでの梅見かな
②観梅や初めて降りる無人駅
③観梅やすき間の多き時刻表
2021.3.5
啓蟄や巣ごもり続く都にも
①啓蟄や布団に残る吾の丸み
②啓蟄やもぐらに潜む竜の文字
③啓蟄や疝気の虫の鳴き始む
2021.3.4
何となく日本が好きで残る鴨
①煮転がし鍋ごと下げて春の夕
②春の夕バットのたたく古タイヤ
③春の夕ちよこれいとの背中追ひ
2021.3.3
雛祭ファンデ代わりの日焼け止め
①雛の日や車で来たんでと婿は
②ラクロスのスティック抱ふ雛の日
③フルートとカスタネットの雛祭
2021.3.2
春風や豚骨はもっと臭かばい
①春動くスマホにはなき現在地
②クラスは席替えの鼓動春萌す
③春動く優等生のコンタクト
2021.3.1
初めての句会の帰り春の暮
①おすすめは鹿のコンフィ花ミモザ
②花ミモザちょんまげ踊る宝塚
③花ミモザ散ってギプスの解放日
2021.2.28
二月尽はつかに残る醤油鯛
①合格の報せ届かぬ二月逝く
②傍題のごとき暮らしや二月逝く
③切れ端に残す一句や二月逝く
2021.2.27
満開の梅に鵯けたたまし
①田楽の味噌の加減を褒めにけり
②猫舌の人に田楽三本も
③田楽をほつたらかしてまず地酒
2021.2.26
白旗のごとく鷺揺る春の空
①焼山の上ゆうゆうと鷺の旗
②焼山の主となりぬ雉の声
③焼山や杣夫の靴の黒きもの
2021.2.25
苗札の暗号めけるカナ数字
①道真忌絵馬をはみ出す願ひかな
②女子大の梅の一字や道真忌
③菜種御供山門くぐる通学路
2021.2.24
タピオカのストロー太き木の芽どき
①浅春の土手の上からドンマイと
②浅春や研修中の手書き文字
③浅春や第一声をハウリング
2021.2.23
草萌ゆるバンザイトンネル隠し玉
2021.2.22
クレーンの敬礼しをる春の空
①青空へ伸ばす寄居虫の黒い眼
②寄居虫やもうすぐ住めぬワンルーム
③寄居虫の宿を背負ひて帰る宿
2021.2.21
三度目にやつと初音と太鼓判
①ハイヒールでキャンプ取材の春ショール
②脚組みに話促す春ショール
③春ショール第二外国語は仏語
2021.2.20
浅春やスコアブックにWC
①白梅や話さぬ恋も二つ三つ
②白梅や八雲の好む石狐
③白梅や引き立て役の自尊心
2021.2.18
恋猫や顔半分に惚れらりょか
2021.2.17
春疾風口がたがたと販売機
①春雨や駐輪場に拾ふ恋
②野球部にくもの巣係春の雨
③春雨やマークシートの塗り忘れ
2021.2.16
魚は氷に上り神宮球場に虹
①草萌や鬼を決めたるあみだくじ
②草萌や逃げ足速きハサミムシ
③草萌や足元ならす三塁手
2021.2.15
転生の蝶かも知れず春の風
2021.2.14
理科室の媚薬の匂ひバレンタインの日
本名と源氏名同じバレンタイン
①硯海の墨の硬さや春遅し
②妻だけに分かる喃語や春遅し
③小面はたぶん冷笑春遅し
2021.2.13
鵜と鷺の天下分け目や春の川
①芝火見て羽田に向ふ最終へ
②芝火見た昂ぶりどこにぶつけるか
③芝火せし軍手に残る火の匂ひ
2021.2.12
おしゃべりのパントマイムや春灯下
①踏絵なき世に結婚の讃美歌よ
②踏絵してさやかに聞こゆ耶蘇の声
③踏絵して磔さるる心持
2021.2.11
日の丸は紅色なるぞ建国日
①春スキー半袖シャツのウォーホル
②ラケットを持つて合宿の春スキー
③春スキーリフトの先に山桜
2021.2.10
山笑ふ農業男子総選挙
2021.2.9
菠薐草カノジョに負ける腕相撲
①海苔掻を手伝ふ小さき野球帽
②抄け海苔の色に姑のお墨付き
③岩海苔の滴に残る日本海
2021.2.8
風光る弓道場のある神社
①雪割草追つてずんずん登山道
②演歌歌手遅咲き多し雪割草
③雪割草打たれ強さの母ゆずり
2021.2.7
春の日や全き型の目玉焼
①余寒なほマッサージ師の細き指
②余寒なほ赤入れ多きゲラの山
③レシートの貯まる財布や余寒なほ
2021.2.6
浅春や静かに香る鉢の梅
①馬券師の狐顔なり一の午
②屋上の稲荷に詣づ一の午
③初午や箱にこぼるる卵焼
2021.2.5
ルーキーのアーチ連発春一番
① 二月来るサンドイッチに天と地と
② 二月来る空を視界に目玉焼き
③大筆に小筆寄り添ふ二月かな
2021.2.4
寒明や水面に光るモノレール
2021.2.3
立春やシューズに硬き蝶結び
①立春や一滴残る醤油鯛
②立春やイソフラボンの効果かも
③立春や鬼といふよりルチャリブレ
2021.2.2
福耳ににげなきピアス鬼やらひ
①冬の果遅咲き多き演歌歌手
②冬の果十二球団キャンプイン
③出席を丸で囲むや冬尽きる
2021.2.1
ボクサーや縄飛ばかりうまくなり
①寒木瓜に約一畳の日向かな
→寒木瓜に一畳のみの日向かな→寒木瓜に一畳ほどの日向かな(渡辺すすむ様添削句)
②寒木瓜や契約伸ばすワンルーム
③寒木瓜やマネキンの臀なまめかし
2021.1.31
定まらぬホルンの音や春を待つ
①滝凍ててますます黒き嶽の影
②滝凍てて森の鼓動のたよりなし
③滝凍つる仏の涙象りて
2021.1.30
探梅や守り袋にキティ柄
①寒卵使命帯びたる顔で立つ
②寒卵汚れし軍手鷲掴み
③寒卵飲むDJののどぼとけ
2021.1.29
信州の吹雪従へあずさ過ぐ
①学僧の白皙(はくせき)さらに冬安居
②冬安居僧百人の粥の湯気
③経行の足の痺れや冬安居
2021.1.28
寒暁やゆらり漕ぎ出す清掃車
①放下とはかくなることか裸木よ
②裸木のバス停なおさらに無口
③裸木の名をプレートに思ひ出す
2021.1.27
諸人の恃むワクチン春を待つ
2021.1.26
おでん酒キミがオマエに老教授
①寒椿口紅そろふ参観日
②ちりとりの奥をさやかに寒椿
③コーラス部発声始む寒椿
2021.1.25
天狼や防犯カメラあちこちに
①寒泳やエイエイオーのいとけなき
②寒泳や赤褌をしんがりに
③寒中や友の胸毛のうらやまし
2021.1.24
一文字に二本の轍くつきりと
①天狼よ監視社会のうつつかな
②天狼や胸にひそかな志望校
③天狼や核もアトムも原子力
2021.1.23
先輩は硬くぶつける雪礫
①集ふことかなわぬ街や寒鴉
②白黒のサインポールや寒鴉
③心中の読売舞ふや寒鴉
2021.1.22
鴉去り寒雀らの薄縹
①おむすびの手つきで握る雪礫
②雪礫箒で打つも野球かな
③チャイム鳴りそのまま残る雪礫
2021.1.21
マスクしてフェイスガードの冬帽子
①冬凪の演歌流るる船路かな
②冬凪や太極拳の漁師どち
③冬凪や丘に移せし恵比須像
2021.1.20
大寒や赤く錆びたる鉄アレイ
①大寒や茶碗の柄の白兎
②大寒や稽古廻しの蝶結び
③大寒や一脚残るペアグラス
2021.1.19
風花やリモート講義倍速で
①長老のまづ箸つけて薬喰
②薬喰鍋から聞こゆうなり声
③薬喰たびたび合はす掌
2021.1.18
受験子へ駅一同の千羽鶴
2021.1.17
冬ぬくし木彫りの猫に鈴五つ
①電話帳めくる震えや阪神忌
②イチローの袖のワッペン阪神忌
③阪神忌ビルの谷間の駐車場
2021.1.16
二回目は犬の散歩や日脚伸ぶ
①雪掻きにもぬけのからの総務室
②雪掻きに飽いて始まる雪合戦
③グランドの雪掻いてから素振りかな
2021.1.15
小正月かの音は小豆洗いかも
①小正月甘味処に姉妹店
②おおらかな電話の声や小正月
③小正月おしるこ缶で温める手
2021.1.14
白鳥に恩返しする素振りなし
①餅花を揺らして尋ぬけふの運
②餅花を飾り老姉妹の花屋
③餅花や書棚に飾るプルースト
2021.1.13
初雪の匂ひくすぐる犬の鼻
①白鳥やロシア語拾ふラジオ塔
②暁闇に白鳥とふ花灯る
③白鳥を見て来し父の朝湯かな
2021.1.12
ラガーらの気炎やうやう青息に
①ログインの上限超える初句会
②二次会は主宰のとなり初句会
③初めての名乗りボソリと初句会
2021.1.11
着ぶくれは殊に立ち読みお断り
①鏡割棟梁の手に狂ひなし
②鏡割二之席のトリ代演に
③蹴球の決勝二つ鏡割
2021.1.10
PKの笛引きつらす冬の空
①猿曳の話すハングル中国語
②一度目の失敗も芸猿廻し
③猿曳やいとどに痛む四十肩
2021.1.9
女王の老いらくの恋冬の薔薇①歯固やプラスチックの鏡餅
②歯固めにアメ横で買ふするめかな
③歯固や屋根に残りしこどもの歯
2021.1.8
人日や母の作りしお赤飯
①松明やノートのコピー累累と
②松明や賑わひ戻る定食屋
③松過ぎて体重計の遠ざかる
2021.1.7
七種粥家族おのおの塩加減
①人日や顔の高さに猫の声
②人日や七草唱ふ三限目
③人日の雀荘に食ぶ中華丼
2021.1.6
牛日や交番守る黒電話
①父唱ふ般若心経冬障子
②冬障子水琴窟の音色聞く
③冬障子開けて大きな茜富士
2021.1.5
御朱印を走って集む七福神詣
①小寒や道路に残るあみだくじ
②小寒や玄関に出す寿司の桶
③小寒や551をおみやげに
2021.1.4
①破魔弓を授かる巫女に選り好み
②自転車の籠に破魔矢とたこ焼きと
③破魔弓やビルの高さに軍用機
2021.1.3
米子のコ1区に二人箱根駅伝
①駅伝を観ては走って三が日
②挨拶をzoomですます三が日
③三日目にやうやう焦る三が日
2021.1.2
獅子舞の面をとるなり茶髪かな
①初東風やゲイラカイトの鷲模様
②初東風の駅伝前の太鼓かな
③初東風やダイヤモンド富士を待つカメラ
2021.1.1
去年今年体温計のつつがなし
①句作りの鉛筆削り年迎ふ
②軽やかに竜頭回して年迎ふ
③人気なき始発電車や年迎ふ
































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