今日の一句(2022年)

2022.5.26
店裏のドリンクバーや薄暑光
2022.5.25
ドリンクバーのアイスコーヒーに湯気
①箱釣のもう一回と合わす手を
②箱釣や香具師のごつつい金指輪
③箱釣の清流知らぬ魚どち
2022.5.24
推敲の恋文隠す冷蔵庫
①走り茶や四十過ぎの女秘書
②走り茶を飲んで帰れぬ国思う
③走り茶を飲んで妬心の失せにけり
2022.5.23
息を呑みオンユアマーク夏の雲
①若葉風賓客乗せて防弾車
②ジーンズの膝の大穴若葉風
③若葉風信濃へ向かふあずさ号
2022.5.22
夏の雨お腹に響く「狙いうち」
夏の雲三浦龍司のスパートよ
①じゃんけんぽん誰から触る青大将
②百度石の脇をのそりと青大将
③少年のバットで掃ふ青大将
④青大将ジョギングついとハードルに
2022.5.21
夏空のツボ押す金の鴟尾の反り
①小満の餃子をペロリ二人前
②小満のハイソックスの二本線
③小満や文化財なる桑ハウス
④小満のトングでつかむメンチカツ
2022.5.20
蝌蚪生るるマンション覆ふ黒メッシュ
①夏掛のタケコプターのドラえもん
②夏掛や無症状だに病とは
③夏掛や天井に見る星座絵図
④薄つぺら宿直室の夏蒲団
2022.5.19
夕焼やチャントに揺るる白き壁
①子のための預金満期に竹落葉
②竹の葉の散りサル園は新ボスに
③味付けは息子任せに竹落葉
④産休の担任戻る竹落葉
⑤竹落葉扉に挟む栞ひも
⑥切り抜きで埋めるアルバム竹落葉
2022.5.18
麦秋や箱根駅伝待たず逝く
①銭亀のいつかゴジラと戦ふ日
②次々と銭亀触り買はず行く
③次々と銭亀触り去りにけり
④銭亀よ竜宮城へ連れてゆけ
⑤銭亀と神宮暦を買ひにけり
2022.5.17
絞り出す歯磨きチューブ走り梅雨
①暴投の白球探す青野かな
②爆弾てふおにぎり食ぶる大青野
③訓練のはしご車並ぶ青野かな
④探鳥会去りて静かな青野かな
⑤一木の鏑矢めける青野かな
2022.5.16
店先の脊柱模型愛鳥日
①明易し地下二階へと昇降機
②明易し婚約指輪まだ出せず
③明易しエアロバイクで宇宙まで
④明易しベッドに投げるバスローブ
⑤正続は夢にもありぬ明易し
2022.5.15
フェラーリと同じ色だね唐辛子
①山狩りの一人が消えて著莪の花
②椋鳥の取つ組みあいや著莪の花
③巻道の標は手書き著莪の花
2022.5.14
①大南風たわしのごときカレーパン
②大南風鳥のマークの野球帽
③大南風あーあーマイクテスト中
④大南風カウンタックの排気音
2022.5.13
天道虫信号守る街宣車
①箱で買ふフライドチキン愛鳥日
②愛鳥日カルガモ夫妻狙ふ猫
③愛鳥日万年筆は青インク
④愛鳥日ショパンを刻む拍節器
2022.5.12
烏麦あいつは口が軽いから
①何になる図鑑の上の根切虫
②殺生の宿命も知らず根切虫
③福々と本家の庭の根切虫
④根切虫信号待ちの街宣車
2022.5.11
ドナドナの仔牛はどこへ夕焼雲
①燕の子親振り切つて蒼穹へ
②赤錆のタバコ看板燕の子
③燕の子尊徳像の「大学」に
2022.5.10
卯の花腐し右も左もしょうが焼き
①天啓にうたれて白き海芋かな
②海芋咲く固まり歩く修道女
③海芋咲く手をメガホンに叫ぶ嬰
2022.5.9
母の日の受話器に残る国訛
①卯月波ふたりで作る砂の城
②国境の線は紫卯月波
③卯月波林立したる大漁旗
2022.5.8
夏の雨拍手の止まぬ外野席
①成金の土建屋の庭目白鳴く
②無風なる村長選挙目白鳴き
③博才に乏しき声音目白来る
2022.5.7
谷戸の風怒髪のごとく佇つ刈葱
①麦嵐キャップを埋める山バッチ
②麦嵐島に一基の信号機
③麦嵐余白の広き時刻表
2022.5.6
落球すタンポポ踏めませんでした
①湧水にアルミコップや若楓
②百選の水の囁き若楓
③五百年眠る木乃伊や若楓
2022.5.5
オフサイドの体半分夏に入る
①弟に背丈越さるる暮春かな
②A面は聴かぬレコード春暮る
③春の暮言はれるままにポテトつけ
①サンタモニカとふクレープ店や夏来る
② スタンドの手拍子速し夏来る
③スパイクの先の尖りや夏に入る
2022.5.4
県営大宮球場
伝説のかの本塁打ときしらず
ぶらんこや志村喬の顔になり
①独活和や亀の名のつく純米酒
②独活和や戦火を語る江戸ことば
③独活を掘る金星丘の隆々と
2022.5.3
薄氷の勝利に仰ぐなんじゃもんじゃ
①独活和や亀の名のつく純米酒
②独活和や戦火を語る江戸ことば
③独活を掘る金星丘の隆々と
2022.5.2
八十八夜夫をなじる中国語
①御殿には遠きあばら屋鰊食ぶ
②ライオンの紋章のパブ鰊食ぶ
③鰊食ぶ腕組みしたる魯山人
2022.5.1
東大にやつと引き分け弥生尽
①勝率は五割で良かり黄金週間
②あてもなく始発を待つて黄金週間
③時刻表で仮想の旅や黄金週間
2022.4.30
雛菊や府中基地跡国有地
①丁寧に足を洗つて弥生尽
②先輩のバットを折つて弥生尽
③大口の契約流れ弥生尽
2022.4.29
春星やバカラグラスを息子から
同点でハーフタイムやシャボン玉
①こでまりや甘雨に暮るる誕生日
②口跡も師匠ゆづりや団子花
③こでまりの雨の調べに弾みゐる
④こでまりや日に日に増えるエキストラ
2022.4.28
鳥曇ファールポールの檸檬色
①雛菊や鉄条網の旗竿地
②デージーややローマ数字のピンバッチ
③雛菊や少年Aの供述書
④デージーや無邪気演ずる継子の眼
⑤雛菊や土用の午後の保健室
2022.4.27
バタ電の窓に点点しじみ舟
①しかうして大の字になる花菜かな
②あの時の鍵を探して花菜なか
③ゆるやかに柩車の過ぎる花菜かな
2022.4.26
さよならを言ふ潮時の双葉かな
①蜆取り宍道湖からの伯耆富士
②単線の車窓あふるる蜆舟
③竹皮のおにぎりふたつ蜆取
④出張の朝湯の窓や蜆取
2022.4.25
春雨や競馬に合はす周波数
①白藤やいつもピアノは午後三時
②白藤や背中合わせの木のベンチ
③白藤や妻に少女の貌ありて
2022.4.24
朝ぐもり散歩の刀自に鼓草
①再生の川に光れる上り鮎
②神々の山を目指すや上鮎
③先頭を争ふやうに上鮎
2022.4.23
よく見れば髑髏じゃなくて躑躅だね
①競漕の紅一点のコックスよ
②競漕の熱を水面に隅田川
③競漕やにわかにたぎる母校愛
2022.4.22
連投の肩に鍼刺す穀雨かな
①角落ちて遠眼差しの牡鹿かな
②獣道まだ血の臭う落し角
③かわたれや鳥居の下の落し角
2022.4.21
①蘆若葉親子並んでチェアリング
②蘆若葉釣り人映す水鏡
③ここからは変わる川の名蘆若葉
2022.4.20
橋梁の明治の煉瓦諸葛菜
①トラックの秒読み続く穀雨かな
②息災を報告したる穀雨かな
③けふ穀雨碁盤を囲む縁框
2022.4.19
百千鳥落とした声はこれですね
①苗代水首もたげたる沼太郎
②一晩の滂沱に濁る苗代水
③一揆にも作法のありぬ苗代水
2022.4.18
連翹や軽ナンバーの並ぶ車庫
①小町忌や日記に隠す恋衣
②小町忌の国語教師の柳眉かな
③鍵付きのメイクボックス小町の忌
2022.4.17
半仙戯そは終末時計の振り子
①恋愛も戦も知らぬ数珠子かな
②数珠子にも思春期ありや子に悩み
③群れるとふ安らぎにゐる数珠子かな
④蝌蚪生まる接吻しをる道祖神
⑤雲水の錫杖揺らす蝌蚪の群れ
⑥蝌蚪揺るる赤子を攫ふ子守唄
2022.4.16
この顔は裏か表か新社員
①光風やツーバウンドの始球式
②光風や市長の胸のピンマイク
③光風や芳名板に祖父の名も
④光風や俳磚なかの師の一句
2022.4.15
新入生歓迎コンパ神学部
①おぞましき名をつけられて蝮草
②首塚に誰が供ふや蝮草
③仇敵の華瓶に一つ蝮草
④鎌首の心許なし蝮草
2022.4.14
花時計一つ飛び出すチューリップ
①市役所のトップページの海市かな
②浦島太郎戻りし朝の海市かな
③海市なか石炭運ぶ艀かな
④海市十八回の延長戦
⑤海市消え物干し竿に垂る天衣
⑥城跡の頂に見る海市かな
2022.4.13
花水木寺の名前の停留所
①抱卵期鴉咥える赤きもの
②定まらぬ方位磁石や抱卵期
③抱卵期女盛りのいくばくか
④抱卵期赤子を攫ふ子守唄
2022.4.12
春暑しホカオネオネといふシューズ
①スタメンに投手が二人春の汗
②春の汗兎の顔の花時計
③春の汗トイレの壁の周期表
④春の汗ゆつくり回る水車
⑤春の汗胸文字読めぬユニホーム
⑥春の汗潮の香ほのと温泉場
2022.4.11
花過ぎの十円余る図書カード
①花苺安産型の妻の尻
②心地よき妻の実家や花苺
③花苺駄菓子屋で引くコーラ飴
2022.4.10
ライバルの校歌奏するうららかな
①花過ぎや体験入部どこにする
②花過ぎの耳語で教えるパスワード
③ 花過ぎの十円余る図書カード
2022.4.9
春天へ学生注目!なんだあ!と
①老いらくの淫夢に点る山桜
②山桜峠の茶屋の姥桜
③金剛杖休む軒先山桜
2022.4.8
桃の名の女真打ち春おぼろ
①花いかだ前も後ろも船頭歌
②花いかだ美の字を二つ持つ人と
③コックスのイージーオール花筏
④くしやくしゃの答案浮かぶ花筏
2022.4.7
ゴミ置場の問題集や桜まじ
①ロスタイムの逆転ゴール忘れ霜
②赤本の十字結びや忘れ霜
③連勝のあとの連敗忘れ霜
④受け継ぎし偏固の質や忘れ霜
⑤声明の厚き響きや忘れ霜
⑥忘れ霜道聞く人の皓歯かな
2022.4.6
人気なき通用口や花吹雪
①鳥風やスカイラインの擦り傷
②初めてのキスは墓場や鳥曇
③鳥風やスカート型のコーラ瓶
④鳥風や寝癖で走る会社員
⑤鳥風やアポロマークの右顔に
⑥鳥風の中を覚悟の戦闘機
⑦鳥風やノートパソコンいちどきに
⑧鳥風や白露光る木歩句碑
2022.4.5
清明や鴨の天色の翼鏡
②清明や缶いっぱいのシーグラス
③清明やガラスの靴の刻む音
2022.4.4
鵯つるむ咲くことのない桜かな
①春眠し帰島を知らす遠汽笛
②頼りなきバランスボール春眠し
③繰り返す表計算や春眠し
④行進の曲はアダージョ春眠し
2022.4.3
①春日影読経の僧の盆の窪
②春日影養護施設のマリア像
③春日影ガバディガバディと息切らせ
④春日影猫を描けるカプチーノ
2022.4.2
見るからにキャッチャーだよね夏みかん
①お白洲に揃ふ雁首桜東風
②無医村へ向かふフェリーや桜東風
③桜東風避雷針めく犀の角
④桜東風またこの歌に泣かされて
⑤ウルトラマンの綿菓子袋桜東風
2022.4.1
革靴の先の尖りや初燕
虫出しの雷に目覚める反抗期
虫出しの雷や乾パンに穴二つ
虫出しの雷や破り捨てる日記
虫出しの雷よ疫病の世の中よ
虫出しの雷や金四郎の啖呵
2022.3.31
春愁が三遊間を破つてく
①筆塚に辞世の一句陽炎へり
②糸遊や墓標のごとき摩天楼
③糸遊や市境に佇てる渡し跡
④糸遊や日記に残る恋衣
⑤糸遊や棺に満ちる別れ花
2022.3.30
①お供へは缶のピースと雪柳
②園児ら歌喨々と雪柳
③可惜夜の窓から望む雪柳
2022.3.29
履歴書の資格に簿記と風信子
①白木蓮純血なんて嘘つぱち
②新しき母の嬌声紫木蓮
③ワッハッハ笑う体操白木蓮
2022.3.28
一坪二百万成城の桜
①重力の虜となりぬ雲雀かな
②九天の急所を突ける雲雀かな
③揚雲雀チンとオーブントースター
④日の本の危急を告ぐる雲雀かも
2022.3.27
堕落への道連れ探す椿かな
①ひざ前は女真打初桜
②親友の破鏡の報せ初桜
③恩師からいただく雅号初桜
④初花や第二志望のキャンバスを
⑤初花や転校生と帰る道
2022.3.26
げんげ田や姉に教わる蜜の味
①石獣の口の濁水残る雪
②残雪やIKEAの文字のエコバッグ
③縁占いの鏡の池や残る雪
④残雪や貝殻埋めるプランター
⑤残雪や老いても痩せぬナルシシズム
⑥制服を作る工場残る雪
2022.3.25
卒業す久遠の理想あるはずと
①不細工なウインザーノット春コート
②初めての電車通学春コート
③賞状筒高くかざすや春コート
④場所取りのシートに残す春コート
⑤退職の父に借りたる春コート
⑥解禁日駅から走る春コート
2022.3.24
春星や見守るといふ愛し方
①早退の身体は虚ろげんげ田に
②げんげ田に寝て青雲の夢心地
③げんげ田や火の色帯びるドーパミン
④げんげ田や文殊の知恵にあと二人
⑤げんげ田やひとり欠けたる村芝居
2022.3.23
節電の街を灯すや牡丹雪
①声出して素振り千回春の星
②人類が卵を産み日春の星
③朝刊の十字結びや春の星
④春星や見守るといふ愛し方
⑤春星やアンドロイドの夢語り
⑥晩学のラジオ講座や春の星
2022.3.22
おのおのの風を探して黄水仙
①燕来る転居葉書の太き文字
②ケチャップでハート描けば燕来る
③モノレール過ぎる鉄橋燕飛び
④プレハブの仮設校舎や燕来る
⑤念力でスプーン曲げれば燕来る
⑥ダントツの最下位予想燕来る
⑦つばくろや先の濡れたる庭挟
2022.3.21
クラシコにジャパンカルチャー養花天
①宍道湖の水穏やかにお中日
②縄跳びの土打つ音やお中日
③中日や左右で上げるリフティング
④中日や新車を濡らすたびら雪
2022.3.20
雨上がり天下天下と雉子鳴けり
①春嶺や遺影の友の笑い皺
②春嶺や熊鈴の音透き通り
③春嶺を縫ひて西へと軍用機
④春嶺や兵糧攻めの城跡も
⑤春嶺の端を断ち切る庭挟
⑥春嶺やきらぼしのごとトッピング
2022.3.19
奪衣婆の冷たき指や枝垂れ梅
①芽柳やどぜうと縦に紺のれん
②芽柳やみゆき通りの街路灯
③芽柳やスマホで手繰る赤い糸
2022.3.18
天災と戦の間おぼろ月
①穏やかな風を選びて鶴帰る
②鶴帰る手負いの一羽仰ぐ空
③引鶴や不帰の名刻む特攻碑
④朝露のごとき平和よ鶴帰る
2022.3.17
震度六黒々尖る春の海
①釣り人の偏光眼鏡蘆の角
②天心はここぞと示す蘆の角
③汽水湖を穿つ長竿蘆の角
④蘆牙や曲がりしままの水位標
2022.3.16
よく匂ふ他人の庭の梅の花
①薬屋に指南されたる接穂かな
②接穂して味気なき日を新しく
③鋭角の視線止まる接穂かな
④接穂して波おだやかな弓ヶ浜
⑤原子炉の浜を近くに接穂かな
2022.3.15
巻尺はイタリアカラー春ショール
①スタメンの一人決まらぬ春愁ひ
②小三治のマクラを聴けぬ春愁
③春愁の真夜に溶けゆくしつけ糸
④春愁のひくひく動く犬の鼻
⑤型落ちのシューズを探す春愁
2022.3.14
爪立ててナックルボール夏みかん
①園庭の赤白帽子春の鳥
②県境の橋に列なす春の鳥
③仕立屋の首の巻尺春の鳥
④教会の鐘の音軽し春の鳥
⑤縄跳びに空を回せば春の鳥
2022.3.13
枝垂れ梅濁世の深さ測りをり
①地虫穴を出づれば戦の世
②スパイクの歯(けん)の錆びれば地虫出づ
③地虫出づビオフェルミンのSマーク
④地虫出づコロポックルの靴跡か
⑤三塁線強襲ヒット地虫出づ
⑥ただならぬ出自語れば地虫出づ
⑦腿上げの小さき掛け声地虫出づ
2022.3.12
我が町に蚕養の歴史春の雲
花ミモザ乗せてロータスヨーロッパ
ここからは追越し禁止春の風
うららかやホームタウンを誇る街
どら焼きの隣はマスク春暑し
①卒業歌仰げるほどの師も無きに
②外せないマスクに曇る卒業歌
③吾子探すモニター越しの卒業歌
④伴奏の背中美くし卒業歌
⑤本番は足並み揃ふ卒業歌
⑥コサージュの胸板厚く卒業歌
⑦かかとのみ白き上履き卒業歌
⑧卒業歌殊にさらばに力込め
2022.3.11
汚されし土の痛みや春の雨
をのこのみY染色体梅匂ひ
①手で探る吾の心音や春怒濤
②健さんも文太も無き世春怒濤
③春怒濤砂に埋もる流人墓地
④春怒濤サイコロ型の流人墓
⑤地震知らぬ子らの黙祷春怒濤
⑥陽性の言葉に病んで春怒濤
2022.3.10
①上京の娘に白き萩根分
②おのおのに正義のあらむ菊根分
③ささくれのなれのおゆびや萩根分
2022.3.9
春北風や白鳥いるよ多摩川に
①受験子のゆつくり叩くパスワード
②受験番号語呂で覚ゆる受験生
③受験子や四当五落遠き世も
④受験子や弁当二つおやつ付き
⑤ 受験子に工事現場の回り道
枸杞飯や千年閉ぢぬ卑弥呼の眼
2022.3.8
花ミモザ消防服の入江聖奈
①盆の窪のツボを探れば木々芽吹く
②割り箸のゴム鉄砲や木々芽吹き
③かわたれの闇の底より芽吹く音
④サーカスの来る原つぱや木々芽吹き
2022.3.7
完走の吾を引き摺つて春夕焼
①如月や箱庭の家の白き猫
②如月や前歯で砕く雪がわら
③如月の剥製の眼の黒光り
④如月の手持ちルーペの銀メッキ
⑤如月の破鏡に映る青き空
2022.3.6
一木に皆の駆け寄る梅見かな
ワンピースやけくそ価格春一番
①暮遅し夕餉に急ぐ猫の顔
②暮遅しチャント途切れぬロスタイム
③竿竹に赤きハンカチ暮遅し
④口開けの客は初顔暮遅し
⑤昼カラの歌声漏るる暮遅し
2022.3.5
①啓蟄やミニクーパーの丸ランプ
②啓蟄やキャッチャーミットてらてらと
③啓蟄やラジオ講座のテキストを
④啓蟄の到着報す鼻濁音
⑤啓蟄の新聞読むに虫眼鏡
⑥啓蟄や語尾まろやかな国訛
⑦啓蟄の屈葬の骨立ち上がり
⑧啓蟄や立ったクララが立ったわーい
2022.3.4
モノクロの母の乳房や桜餅
①心臓の四つの部屋よ紙風船
②おもちゃ箱ひつくり返し紙風船
③一突きで果ててしまいぬ紙風船
④突きながら原価を思ふ紙風船
2022.3.3
システムは5-3-2です雛飾
①よなぼこり癲狂院のマリア像
②よなぼこり国家元首の薄笑ひ
③あちこちの神経痛やよなぼこり
④(境線)よなぼこり妖怪名の駅続き 
⑤見守りと監視の間よなぼこり
⑥よなぐもりアウェイゲームの続きをり
⑦よなぼこり海のかなたを駱駝の眼
2022.3.2
マッサージのテニスボールやうららけし
①幾度も達する夜や磯巾着
②1Kの大き水槽磯巾着
③磯巾着僧帽筋の断面図
④磯巾着誘ふ北の海浜へ *北の海浜(うみべた)
2022.3.1
三月やスカイラインの排気音
①リボンが大きいのよねと春帽子
②外野席探すカノジョの春帽子
③夏帽子勲章めける山バッチ
④清掃婦帰りはラメの春帽子
⑤春帽子ジャングルジムの天辺へ
2022.2.28
行けるとこまで行ってみますと二月尽
①移り気なピアスを揺らす春北風
②候補者のポスター剥がす春北風
③アイヌ語のアトゥイは海や春北風
④春北風アマゾンで買ふズブロッカ
⑤春北風巻ねじ固きオルゴール
⑥春北風鬼にもありや揺籃期
2022.2.27
四月馬鹿「ガラスの仮面」終わります
①蠅帳に冷めし塩ざけ夜の梅
②リハビリと歩く五千歩夜の梅
③留守番の独酌甘し夜の梅
④夜の梅夫には見せぬ口紅を
⑤一片のパズルを握り夜の梅
2022.2.26
卒業の通知はメール春きざす
①春兆すテープカットの金鋏
②春兆すHで始む周期表
③襟白きクレリックシャツ春きざす
④春きざす左ピアスに守られて
⑤吶喊の幼き声や春きざす
⑥春きざす瘡守稲荷の油揚げ
2022.2.25
春の闇誤作動で鳴る非常ベル
①鞦韆やデッキシューズの紐の白
②鞦韆や少女に戻る姥の顔
③鞦韆の往来したる穢土と娑婆
④鞦韆の高さで賭ける大メンコ
⑤アレグロのやがてアダージョ半仙戯
⑥県立か私立か揺れる半仙戯
2022.2.24
なんちゃって三寒四温七寒だ
①雉鳴いて愛の荒野になりにけり
②かわたれや山神起こす雉の声
③鬼ヶ島帰りの雉やたけだけし
④雉鳴くや鏡に拝む喉仏
⑤雉鳴いてどつと乱るる周波数
2022.2.23
大鷭の黒に埋もれ残る鴨
①シラバスの広き余白や春遅し
②春遅々と合否サイトのパスワード
③春遅々とシャープを押して待つ電話
④春遅々と硯の海の乾ぶ音
⑤春遅々と誤作動でなる非常ベル
2022.2.22
うららかや購買で買ふナポリパン
①防風やポチの眠れる松林
②防風や浜に転がるペグの錆
③防風や山へとしなる弓ヶ浜
2022.2.21
料峭や戦火に耐えし招き猫
①春耕やゲレンデ見ゆる伯耆富士
②春耕や猫の額の畑なれど
③3ちゃんの言葉遥かに春耕す
④春耕や2ちゃんの昼餉塩にぎり
⑤春耕やパンクのままのネコ車
2022.2.20
マスク投げ皆が素顔に戻る春
①床の間に生傷舐める春の猫
②尼寺の壁に爪とぐ春の猫
③春の猫修道院の庭の音
2022.2.19
①予定日へ暦をめくる雨水かな
②雪の名の煎餅かじるけふ雨水
③四尺の大筆洗ふ雨水かな
④サイフォンで珈琲淹れるけふ雨水
⑤けふ雨水サウナのためのジム通い
⑥ジャム瓶に硬貨あふるる雨水かな
⑦けふ雨水むらさき垂らす醤油鯛
2022.2.18
春満月吾子の木馬がペガサスに
①猟期果つ森吉山に花咲けば
②猟名残マタギを守る熊の牙
③猟名残防牙ベストの大き穴
2022.2.17
大部屋に残る台本春日影
①のり玉のふりかけごはん春満月
②春満月正座に軋む前十字
③春満月視力検査のCの欠け
④春満月水晶玉に浮かぶ顔
⑤歪なるOKサイン春満月
2022.2.16
とこしへの多摩の横山霞をり
①春の灯や仏間に並ぶ片化粧
②春の灯や顔文字溶けるカプチーノ
③春の灯や白目のままの不倒翁
2022.2.15
紅梅に白珠のごと昨夜の雨
①古里の味噌を合わせて木の芽和
②正客の膳に残れる木の芽和
③突き出しは味噌が決め手の木の芽和
④木の芽和鶴に化けたる箸袋
2022.2.14
かりそめのキスでもらひし春の風邪
①海よりの風を背にいかのぼり
②ものほしげな猫と見上ぐるいかのぼり
③引き時はいつそう難し紙鳶
④上がるほど左に傾ぐいかのぼり
2022.2.13
ラーメンにレモンが三切れ春きざす
①とろ火よし生きるも死ぬも蛤鍋も
②あつさりと口割るものよ蛤鍋も
③名物にうまいものあり蛤鍋も
2022.2.12
春の雪被る自転車ヘルメット
①とろ火よし生きるも死ぬも蛤鍋も
②あつさりと口割るものよ蛤鍋も
③名物にうまいものあり蛤鍋も
2022.2.11
建国日松子のごときゆで卵
建国日山間縫つてやくも号
人類は戦が好きで建国日
①料峭や便器にかすむTOTOの文字
②料峭や歯間に残るしつけ糸
③料峭の法令線をなぞる指
④料峭や「たべられません」シリカゲル
⑤料峭や白杖叩く石畳
2022.2.10
梅ふふむ美形地蔵のよだれかけ
①一合の酒分けあつて梅見かな
②とりあえずキープの人と梅見かな
③梅見かなコップに余るポップコーン
④親知らずしきりに痛む梅見か
⑤すかすかのナップザックの梅見かな
2022.2.9
春寒しVの形の鴨の水脈
①夕東風や壁いつぱいの星条旗
③夕東風や接吻しをる道祖神
2022.2.8
風光る大迫傑第二章
①グローブに子の名の刺繍春の雪
②春雪の父の歪な目玉焼
③骨法の糸口細し春の雪
2022.2.7
銀ちゃんのラメのスーツや春寒し
①春の日やもういっちょおの幼な声
②春の日のリカちゃんとはもう遊ばない
③春の日を古書に折りこむグラシン紙
2022.2.6
春寒や露店に並ぶ涙壺
①かわたれの厨に光る水菜かな
②富士山の水の育てし京菜かな
③湯上りの科を作れる水菜かな
④湯上りの水菜を冷ます京うちわ
2022.2.5
吾輩といい出しかねぬ子猫かな
①寒戻るスクープ踊る輪転機
②庭下駄の白き鼻緒や寒戻る
③寒戻るギロチンめける断裁機
2022.2.4
立春や新人王の太鼓判
①立春やもう腹くくるほかはなし
②立春のトルソーの胸隆々と
③立春の匂ひフルーツ消しゴムも
2022.2.3
鬼やらひ誰も彼もが鬼に見え
①柊を挿して豆腐屋けさも四時
②読みさしの栞のごとく柊挿す
③柊挿す新聞配る苦学生
④柊挿すけふが余生の曲がり角
2022.2.2
石原慎太郎氏逝く
太陽の季節遥かに冬の浜
①足止まる千枚漬の試食とな
②千枚漬八角箸の雪模様
③千枚漬丸に十字の白のれん
④追いかけてつかめぬものに千枚漬
2022.2.1
着ぶくれのジョギングしかもジーンズで
①寒肥す猫の額の土地なれど
②寒肥やわれにとどまる小作の血
③寒肥や実習生のベトナム語
④寒肥や庭木鋏の龍の銘
2022.1.31
同郷の主宰と語る松葉蟹
①B面が好きなシングル冬深む
②ボンゴレの塩の加減や冬深む
③冬深むひねもす寮の電話番
④冬深む渡船場跡に鷺の来て
⑤手際よき高座返しや冬深む
⑥プリンター空転すれば冬深む
2022.1.30
春待つやトラックの画の桃太郎
①寒梅やしきりに鳴ける籠の鳥
②寒梅や本復の道また一歩
③寒梅や横一線のキャンプイン
④裏高尾ひつそり咲ける冬の梅
2022.1.29
ひつそりと売らるる鰻寒土用
①ねんねこのほつぺ触ると女学生
②ねんねこに母の重さも背負いをり
③ねんねこの頬に農婦の太き指
④ねんねこの写真の母の柳眉かな
2022.1.28
冬夕焼「走れメロス」が五十円
①寒鮃この濁世を斜にみて
②寒鮃月の名前の吟醸酒
③寒鮃掲げる漁夫の津軽弁
2022.1.27
寒雲や賽銭箱の巴紋
①待春の本の扉のエピグラフ
②待春や有情の声の湧きあがり
③待春の弁当箱の馬蘭かな
④待春の夜行列車のみちのくへ
⑤待春の馬柱の朱き二重丸
⑥待春やサムズアップの指の反り
2022.1.26
いつ見ても吉永小百合水仙花
①榾火して同じ話をぐだぐだと
②榾の火にときどき見ゆる鬼の顔
③榾の火に敷物の虎唸り出し
④榾火して一杯くらい付き合えと
2022.1.25
境内の電話ボックス日脚伸ぶ
①硯海の波立つ音や蕪村の忌
②蕪村忌やサラリーマンはせかせかと
③掛け軸の達磨の眇春星忌
2022.1.24
寒中のふわつと開く鍋の湯気
①完走の覚悟固まる鍋焼に
②晩酌の父はどんじり鍋焼饂飩
③鍋焼をつかむ拳のタバコ痕
④鍋焼や文学論の熱おびて
2022.1.23
白息を吐き合ひ小さきゴジラかな
①隼の起こせし山の疾風らし
②隼やここから先は禁猟区
③蒼穹や隼描く一文字
2022.1.22
乾びたる踵に光る胼薬
①下向くな前だけ見ろと寒き影
②かはたれや炊き出し待てる寒き影
③肉叢の骸となる日寒き影
④寒き影踏めば孤独の割れる音
2022.1.21
この先は一歩たりとも寒椿
①前後左右しかと確かめ咳ひとつ
②咳き込めば弾頭弾の秒読みに
③咳すればzoomの中にわれひとり
④咳込んでプレゼンテーションは佳境
残生のことはひとまず春を待つ
待春や本の扉のエピグラフ
キューピーは永遠に赤子や春を待ち
2022.1.20
大寒や中洲囲める鷺の陣
①大寒の始発ホームの指呼の先
②大寒のしつぽめきたるカムチャッカ
③大寒や骨壺めける砂糖壺
④大寒や魚板の口のあぶく玉
⑤大寒のあっかんべえの下まぶた
2022.1.19
セーターを脱いで半チャンもう一回
①粕汁や四当五落の日の遠く
②粕汁やラジオに混じるハングル語
③粕汁に鍋の残りの野菜くず
④粕汁に友と完走讃え合ひ
⑤粕汁やカーテン越しの通学路
2022.1.18
寒満月野球漫画の巨匠逝き
①寒燈下物言いたげな翁面
②寒燈下生命線の枝分かれ
③寒燈や床に転がる正露丸
2022.1.17
寒晴の飛べない凧の重さかな
①遠火事やにはかに騒ぐ江戸錦
②遠火事やブザーで知らす炊飯器
③遠火事や妻のパジャマの花模様
2022.1.16
水洟をすすり「寿限無」を頭から
①寒月や袋に残るシリカゲル
②寒月や亡母の言葉寸鉄に
③寒月や首を切られしマリア像
2022.1.15
缶入りのぜんざいぬるし小正月
①じゃけぇ言うたろうが牡蠣ご飯
②ぷりぷりの言葉に魅かれ牡蠣ご飯
③ひねもすの愚痴は大ぶり牡蠣ご飯
④牡蠣飯やえっと食べなと海女の宿
2022.1.14
辛すぎる麻婆豆腐星冴えて
①寒餅を搗くや老骨きしませて
②正客の破顔となりぬ寒餅に
③寒餅を焼いて切り出す墓じまい
④寒餅をつくたび爆ぜるふくらはぎ
2022.1.13
20℃のサウジアラビア観て寒し
①品書きに猪兎狩の夜
②片耳の先の欠けたる狩の犬
③剥製の首の廊下や狩の宿
2022.1.12
息子には最後の講義冬の雨
①脳天の黒子くつきり空つ風
②空風や夢に見ればと木歩句碑
③空風や鷺の冠羽のとげとげし
④きしきしと魂魄軋む空風
2022.1.11
せつかちなあいつのいない成人式
①あやとりのはしごかけたる冬北斗
②冬北斗標となりぬ師の言葉
③わが町に蚕養の歴史冬北斗
④夜景には残業の灯も冬北斗
2022.1.10
虎の衣も狐の帽も初句会
①曳白の我を抱へて枯野かな
②空色のビアンキ駆ける枯野かな
③大枯野新球場の青写真
④方位磁石さかんに揺れる枯野かな
⑤枯野いま一つの最期包みをり
⑥色づきぬ伯耆富士へと枯野道
2022.1.9
春を待つ早稲田通りの鼓動かな
① 凍つる夜のコメント欄の荒れてをり 
② 凍る夜や屋台ですするもやしそば
③ 凍る夜の万年筆で書く手紙
2022.1.8
人は皆何かに疲れ寒卵
①残業と割り切り出るや新年会
②一等の副賞は牛新年会
③会長も同窓と知る新年会
④トピックは孫と病気の新年会
⑤新年会名刺交換途切れずに
2022.1.7
①さくさくと雪踏む音や七日粥
②塩振つてまた塩振つて七日粥
③せり・なずな・ごぎょうで詰まる七日粥
④目に染みて胃腸に染みて七日粥
⑤掌で水洟ぬぐい七日粥
⑥登校の始まる朝の七日粥
⑦ししむらにゆつくりしみる七日粥
2022.1.6
お飾りの右に傾く馬日かな
①金釘の賀状の来る松の内
②髭剃りのミントの匂ふ松の内
③旧年の約束果たす松の内
2022.1.5
寒の入鯨のごときダンプカー
①小寒や色とりどりの虚貝
②小寒や指輪に光るホルスの目
③小寒の鴉の口の光るもの
④小寒のシップに埋まる背中かな
⑤小寒や厨の隅の薄埃
2022.1.4
食べ過ぎのお腹をさする四日かな
①エレベータ長蛇の列の四日かな
②延々とメール受信の四日かな
③朝メシは立ち食い蕎麦の四日かな
2022.1.3
箱根駅伝復路は妻の誕生日
①珍しき古妻のいびき初昔
②クリスマスツリーそのまま初昔
③硯海の乾びし墨や初昔
④片減りのシューズ三足初昔
⑤初昔外ればかりの宝くじ
2022.1.2
箱根駅伝碓井哲雄の声遠く
①飲めぬ酒酌んで始める今年かな
②駅伝にひねもす過ごす今年かな
③目標の代わり映えなき今年かな
2022.1.1
白富士を金に染めたる初日かな
①八雲めくゴミの煙や今朝の春
②すれ違ふ人みな笑顔今朝の春
③紅白の勝ち負け知らず今朝の春
④花札の座布団探す今朝の春

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