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【小説】雄猫ぶーちょの生活5 カラーよさらば

二月に入った。もうすぐ十日立つ、カラーが外せる。ぶーちょと飼い主は指折り数えて待った。

待ちに待った十日目の朝、ぶーちょはまた乳母車に乗って動物病院に行った。

診察台に乗ったぶーちょを飼い主は窓越しに見ていた。チェックが終わった。ところが獣医はカラーを外さない。

え、どうして? ぶーちょと飼い主は顔を見合わせた。

ぶーちょを飼い主のもとに連れてきた獣医は、「ちょっとおなかに傷があるので、明日の朝までネッカーを付けておいてください」と言った。獣医は、ぶーちょが必要以上に傷をなめるのを心配していた。

だが、その傷は、ぶーちょが手術の後をなめようとして、カラーのふちで付けたものだ。カラーを外したら付かないものだ。

カラーを外されなかった不満ではちきれそうなぶーちょを連れて、女の飼い主は乳母車を押し、帰宅した。

カラーを付けたままのぶーちょを見て、男の飼い主は、「外そう」と言った。「ぶーちょは大丈夫だよ」


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