【小説】仔猫ぶーちょの生活-3 仔猫の食事

前回我が家に仔猫が来たのは十一年前、駐輪場で縞尾を保護した時だった。縞尾は生後一カ月を過ぎた、離乳後の仔猫だった。それに、当時の我が家は雌猫さん二匹、雄猫さん三匹の大家族で、誰かしら面倒を見てくれたので、人間の出番はあまりなかった。

だが、今回、我が家にいるのは雄猫の縞尾だけで、ぶーちょは離乳直前の乳児だった。歯は小さな牙のまっさらなものが生えそろっていたが、目はまだ青かった。目が青いということは、大体生後三週間くらいだそうだ。日本の猫であれば、大人になるとだんだん金目だったり、緑目だったりになっていく。

まず、生後三週間のぶーちょの食料を確保しなければならなかった。

保護当日連れて行った近所のいつもお世話になっている動物病院で仔猫用フードのサンプルの小袋をもらったが、二三日分しかない。保護翌日、歩いて十五分もある大手スーパーまで行ってようやく仔猫用ミルクを手に入れた。だが、哺乳瓶は置いていなかった。

だめもとで動物病院に行くと、哺乳瓶は手に入れることができた。だが、仔猫用のミルクはなかったので、大手スーパーまでの歩いて十五分は無駄ではなかった。幸運なことに、一歳以下の仔猫用ドライフードは近所の小さなホームセンターにあった。

ぶーちょは哺乳瓶でミルクを飲めなかった。哺乳瓶の構造がわるいのかどうか、わからないが、猫動画に出てくる仔猫のようにはいかなかった。それで、最初の二週間くらいは、ドライフードをミルクでふやかしたものがぶーちょの主食だった。

食事のたびに、口の周りがミルクでびとびとになり、それが乾いてがびがびになった。ガーゼで拭くと痛そうだったが、ぶーちょはまだ、自力で体をきれいにできない。水を飲むこともできなかったので、びとびとになろうが、がびがびになろうが、ミルクにひたしたドライフードを食べさせるしかなかった。

このぐちゃぐちゃフード時期が終わり、顔の周りを拭いてきれいにすると、ハンサムな仔猫が現れることになる。


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