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【小説】雄猫ぶーちょの生活4 カラーとの闘い

家に着くと、玄関のたたきに止めた乳母車から、まず、ぶーちょの入ったキャリーバッグを取り出した。そして、洗濯ネットにくるまれたぶーちょをキャリーバッグから出した。過剰包装のお菓子のようだ。

この時、ぶーちょを心配して、先住猫の縞尾も玄関に出てきた。大きなエリザベスカラーを付けたぶーちょを洗濯ネットから出すと、その異様な姿に縞尾は逃げ出した。

ぶーちょは黙ったまま、よたよたと歩いていく。邪魔なカラーが柱にぶつかり、ドアにぶつかりして、うまく歩けない。

こんな状況でぶーちょは十日も我慢してくれるだろうか。飼い主たちは絶望的になった。

だが、ぶーちょは我慢した。

最初は、エリザベスカラーのふちが邪魔で、うまくごはんに口が届かなかった。飼い主がごはんの器を口の近くまで置くのを待って、食べるしかなかった。食欲はある。一日絶食したのだから、ものすごい食欲だった。

それから、お気に入りの、押入れの天袋に行こうとしたが、カラーに視界を遮られ、うまく飛び上がれない。キャットタワー経由でようやくたどり着いたが、最後に落っこちそうになった。

ぶーちょはもう、天袋に上らない。もっと低いところで、不機嫌な顔で寝る。

一日目が過ぎ、二日目が過ぎ、三日目が過ぎた。ぶーちょはまだ我慢している。カラーをがきがき後ろ足でかき、不満を表明するが、そこまでだ。

ぶーちょはえらいねえ、と声をかけると、じろっとにらみ返す。

早く十日過ぎてくれと、飼い主たちは祈った。


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