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ピンククラゲの幸福

ピンクのクラゲが生まれました。 
お父さんもお母さんも透明クラゲでしたので、
とても驚きました。
とても素敵なピンク色だから、きっと町内で評判になるに違いないとお父さんもお母さんも内心喜んでいました。
生まれたんだって?と町内会長がお祝いを持って泳ぎつけました。
いやあ、おめでとう、おめでとう!あんたたちの子なら、可愛いに決まってる、どれどれ。
!!いやいや、これはなんとも、いやはや、参ったなぁと後ずさり泳ぎをして帰ってしまいました。
次に、三間隣のおばさんが、泳ぎやってきました。
どれどれ。ちょっと生まれたての可愛い子を見せてもらいましょう。!!あらあら、これはこれは、なんと言ったら良いのかしら。
こちらも後ずさり泳ぎをして帰ってしまいました。
来るクラゲ来るクラゲみな同じようにコトバに詰まって帰ってしまうのでした。
お父さんもお母さんも困ってしまいました。
素敵なピンク色だと思っていたのに、だんだん薄気味悪いボヤッとした赤色に見えてきました。
そんな一部始終を黙って見ていたピンクのクラゲは何も言わずにそーっと家を出ました。
すると、すぐに釣り上げられてしまいました。
あーっ!ピンクのクラゲだ!綺麗だなぁと釣り上げたクラゲを見て人間が言いました。
クラゲの目から涙がつーっと流れました。
人間はピンクのクラゲを水族館に寄付しました。
水槽にピンクのクラゲは一人でした。
ピンクのクラゲを見にたくさんの人間が訪れました。みな、綺麗だなぁ、綺麗だなぁと言いました。

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