相談援助の理論と実例

夏は、国家試験半年前ということで、福祉大学や専門学校ではスクーリングを行って事例研究・対面の相談援助(カウンセリングや相談支援の方法)・専門職としての行動規範などを学びます。
わたしも4年前は社会福祉士のためのスクーリング、3年前は精神保健福祉士のためのそれに参加し感動したことを覚えています。
支援を必要としている人の難しい事例に出会ったとき、いわゆるスーパーバイザーという自分の信頼を置ける専門家の意見を聞きながら、最善をつくしていくことは、チームでの山登りのようです。一歩一歩を固めながら、時には霧や雨、強風などの困惑に立ち止まり、時間をかけて登っていくと頂上らしきものが見え隠れします。
支援される人は、自分の頂上(目的)が見えている場合と、そうでない場合があります。ですので、山登りの方法も千差万別。
そのような山登りに適切な判断力とアドバイスを頂ける専門家とともに、この夏のスクーリングは行われます。

実は、そのことを思い出したのは、わたしが毎日の現場での相談支援を行うにあたり、難しい事例が増えてきたこととその対応を書き記しておこうと思ったからです。
相談援助の職務は(精神)病院のドクターと密接で、いわゆる「症状」を社会生活の中でどう扱うか、が問われます。症状を治療するのは投薬で、そのほかの生活全般を支援チームで見守る、というのが教科書通りなのですが、どうも最近、「治療で越えられない症状も含めて、生活全般が薬」というケースが増えています。

最近の難しかったケースは、「こんなに重い症状なのに、名医が全く薬を処方しなくて困っている」件。

診断名は統合失調症なのですが、軽度の知的障害、身体障害もある方で、症状の多様性からは、人格障害、発達障害、不安障害、虚言癖、依存症という支援チームの見立てのほか、自傷行為・衝動行為があります。
一生を退院できない、いわゆる「社会的入院」といわれた過去もあります。
著名な大学病院の名医にかかっているのですが、軽いエビリファイ(アリピプラゾール・非定型抗精神病薬)の処方のみ。それも拒薬傾向あり。
しかし、問題行動が多発し、支援側としてはリスペリドンなどの頓服処方を希望。しかし、通院は単身なので、周囲の困った声を届けられない。というジレンマ。

何度かカンファレンスを開きましたが、このたび1年以上かかって聞き出せたドクターからの声は、「投薬ではある程度しか効果がない、最大の治療は環境調整である」とのこと。
つまり、多様な症状にあわせた薬を処方しても、当事者にとって環境が不快であり不安であるのなら薬の意味がない、とのこと。
その環境調整をするのが家族を含める支援チームなのです。
ここにソーシャルワークの骨頂といいますか、クリエイティビティの見せ所があります。

ひとりの当事者さんに関わるとき、個人というミクロと社会というマクロをみていく。
個人をみていくとき、個人の出生から今後までという人生の来し方来る道を見ていく、家族関係をみていく、食事や睡眠を、趣向や癖をみていく。
社会をみていくとき、その個人の関わり方をみていく。どこに接点があってどこに接点がないのか。
そして症状に関して知る。
症状は必ずしも投薬治療ではないことも知り、多様な症状は入り混じっていることも多いし、重さ軽さもある。
そして展開していく支援を考える。支援には答えがなくて、最善を尽くす方法しかない、のです。
こう書いていき、真のヒューマンケアは医療や科学の力だけではないのだと、そのことについて深く伝えていきたいことがあります。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?