【アップルフェザ】

2022年1月13日(晴れ)
0~17歳あたりまで住んでたところをあらためて訪れてみるにあたって(付近にちょと所用もあって)、ひとりで訪れると90年代の荒木経惟の写真集みたいになってしまいそうで、それはそれでわるくはないけどしかしそれを避けるため異世界空間より供の者を召喚した(=この日記にちょいちょい出てくる人に電話しちょとつきあってもらうようお願いした)。

当日午後、約束した場所に来てくれたこの日記にちょいちょい出てくる人=お供の人はアーミなコートの下に灰色ボトルネックセータ、白カットソ、ストンウォッシュデニムパンツ、ハーフなブーツ、手袋、キャメルニットハットだった。
わたしは車で訪れ駅近新幹線高架下コインパーキングに駐車し、服装はアルファインダストリズのファー付きアウタ、グレイで実は内側もこもこ付きパンツ、ユニクロ極細ボーダトレーナ、トゥスチール黒ブーツ(ショート)、黒ニット帽だった。
今日はありがと、じゃさっそく。

ゆるい坂登って再開発終盤(たぶん)なエリアまわって反対側から急な坂道降ってバス通りに出て駅改札連絡通路抜けて反対側へ。
繁華街。
アーケードにちっこい飲み屋がめちゃくちゃにたくさんあった。
観光というかわざわざ来てる人たちがたくさんいる。
いつの間にかこのようなふにもなったんだなー、思う。
そのよなところを避けた定食屋で遅い昼ごはん食べる。
店内はすいてて地元の人がちらほら。
わたしはあじフライ定食、お供の人は海鮮丼食べた。
食後に熱いお茶。
アルコールはなし(わたし車だったし)。
途中、カフェイン摂取ブレイクもなしだった(時間的に)。
通りから通りへ、ブロックからブロックへ、細い道から細い道へ、てきょろきょろしながら歩いた。
16:30そろそろ寒さが夜モードになるころ終了。

お供の人は、はじめて来たけどなかなか、いやかなりいろいろ興味深い街でおもしろかった、言った。
途中、どこかのパン屋で買ったパンの入ったレジ袋とカルディのロゴがプリントされてるバッグ(←福袋だったんだそーな)持って歩きながら。
わたしは同意したがあたりまえだけどぜんぜんちがう視点でうろうろ&きょろきょろだったので(それが訪れたほとんどな理由なので)もちろんちがう断面な感想だった。

街はあたりまえにものすごーく変わってた。
建物はもちろん通りも区画も大幅に変わってた。
ダイレクトな思い出の場所や訪れてみて思い出すよはそれまで忘れてた事柄などはちょーっとしかなかった。
いや本当に。
理屈はわかる。
都市とはそーゆーものだ。
あらゆることがらを上塗り、再構築しまくってく。
それが健全なことだ。
再開発により景観が変わり住人が入れ替わり空気感も変わる、変わってく。
寂しいなー、はもちろん思ったけどしかしそれはぴったりな所感とはちがってた。

歩きながらお供の人といろいろ話した。
お供の人は道々、街の感想をあれこれ言い続けてた。
なにそれが古いとかなにそれが新しいとかどこそこに井の頭五郎さんが訪れてたとか。
わたしは、風景見ながらあれこれ話せた方がいいだろなー、て事前に考えてたそれは正しかった、て思った。
考察にはちがう考え方とかやり方が必要で今回それはひとりでは無理だった。
ひとりで来なくてよかったー、思った。

すべてをそのまま、すべてを刷新、はどちらもなし。
ブラタモリでタモリさんが、あぁこのちょっとした段差はここの石垣までが古くその先は新しく作ったんだな、とかておっしゃってるよな「記憶の小さな跡」はいくつもあった。
塀や柵、古い住宅の門、ガードレール、細い道のアスファルト。
いちいち写真に撮ろっかなーも思ったけど撮らなかった。
お供の人も、わざわざ来たのに撮らないん?言ってた。
しかしそれには意味がない思った。
グーグルマップやストリトビューで見ればいいんでしょ、て思って。
世界はどのような速度であっても更新し続けられてるものだから(て思った)。
その代わりにときどきそっと手で撫でた。

2022年2月2日(晴れ)
それにしても思い出な場所再訪とはテレビや映画のドキュメンタリ紀行のようで(中略)なかなか興味深かったなー。てアプルフェザ(←お供の人の仮名)は後述した。永福町の焼き鳥屋で。

おそれいります。
一方的で急なお願いだったので何かと心苦しかったんだけどそのように言っていただけるのならよかったー、あ、すいませーん、ホッピー外と生ビールおかわりと鶏皮塩ください、3本(←おいしい)。

で、訪れてみてその後rrは何か変わったり、何かわかったりしたのかな?

いや特には。
あれはただ近年仕事で新幹線乗る機会が多く、そのとき車窓からあの街並みが往路/復路にちら見えてそのつど、ちょと訪れてみたいなー、思ったふうだったので。
次回は老人になったころ、一人称が「わし」になって、発言の語尾に「じゃ」が付いて、そして杖ついてあのようにあのような場所を訪れてみたいかなー、な感じ。

それは誰もが思うふでしょ。
ではrrがそうなるところをそのとき見てやる(て、むかしの映画マトリックスリローデッドに出てくるメロビンジャンという名のソフトウェアみたいなことを言ったアプルフェザは今度はホッピー中をおかわりした)。

いっやー、そのころはもーあーたもいい年齢になっててそーふらふらもできない環境になってるでしょからそらないでしょー。

そうなってるかなー。

なってますよ。
ゆえにわたしはそれをあーたの未来のご子息かお嬢さんと再訪をおこないます。
そーねー、14~17歳くらいな。

まてまてまてまてrr。
それ意味わからない。

つまりこうです。
ある日、老わたしの元に見知らぬ若者が訪ねて来てそれはあーたのご子息かお嬢さんです。
ご子息かお嬢さんはツイッタやインスタグラムという名の旧システムのソシャルネットワークサビスのログを閲覧してて偶然母なあーたらしき人のアカウントの書き込みを発見しそこに記されてることがらに何らかの疑問を持つんです。

何らかの疑問てなに?

わかりません。
そのあたりはぼんやりしてるんです。
しかしそれはご子息かお嬢さんにとってはとても重要なことだったのです。

だったのです、て言われてもなぁ。

そして調べてくうちにそのツイッタログにときどき出てくる意味のわからない「rr」という表記に気づき直感からあれこれ調べ紆余曲折なのち、楽器の練習飲み屋のカウンタに座ってる老わたしにたどり着きます。

わしのことを調べていたのはきみか。
ごめんなさい、どしても尋ねたいことあって(←素直なんです)。

わたしたちは少し話しその場で取引きをします。
知ってることを教える、そして、お供を引き受ける。
そのときの情景は、まぁ、あーたのご子息かお嬢さんなのでかっけぇとかかーいらしーとかで、季節は夏だったらご子息が制服白半袖シャツ、冬ならお嬢さんが制服にマフラーぐるぐる、といったふう、わたしはこのままなのでこのまま年老いた感じを想像していただいて結構です。

後日わたしたちは山手線に乗り、丸ノ内線に乗り、京王線に乗ります。
つくばエクスプレスに乗り、隅田川水上バスに乗り、そのころはきっと開業してるリニア新幹線に乗ります。
今は最新だけどそのころは再開発区画になっててごみごみしてる路地をたどり、真新しフードコートでかけらを探します。
ミッドタウンのエスカレータを下り、郊外住宅地までの長ーいなだらかな坂道をゆっくり登り、遠くに富士山のいただきを目撃します
工場地帯の煙突の白い煙、キリンの首のようなクレーン群、風力発電の大きなプロペラを見上げます。
池袋メトロポリタンのロビーソファに座り、新宿三丁目から御苑に向かって歩き、九段下のお濠か和田堀公園か井の頭公園で白鳥を指さします。
目黒川近くのカーブミラーに映った自身とご子息あるいはお嬢さんを歩きながらちら見ていろいろ考えます。

そしてそのころのわたしはおじいさんなのでもちろん涙腺はゆるくいろいろな場所、場面で泣きます。
あれこれ思い出し、後悔し、さめざめと、または号泣などして。
ご子息は、しょーがねーなー、言いながら、お嬢さんは、しょーがないなー、言いながらも、スターバックスやエクセルシオールで冷たいコーヒー買ってきてくれてわたしを白山通りのガードレールに座らせ、それを手渡してくれます。
わたしはストローでそれひとくち吸って、おいしい、言います。

陽が西に傾くころ、ご子息あるいはお嬢さんはわたしに尋ねようとしてたことをあらためて切り出します。
老わたしはご子息やお嬢さんのそのまっすぐなまなざしに今この日々のあーたを感じ、内心とても取り乱します。

(閑話休題)
いいですか?年齢を重ねるということは「なくしまくる」ということです。
わたしの予想によればそのせつじつさはあるとき雪崩のようにやってきます。
わたしはそれをこわいて思います。
それはきっと圧倒的です。
ハリケンとかデカい資本とかのように大きく容赦なく暴力的、なはずです。

大きな森の入口まで来たわたしたちはそこで立ち止まります。
老わたしはブナの切株に腰掛けバッグからぬるくなったポカリスエットボトル出して飲み、ご子息かお嬢さんは立ったまま周りを深く見渡してます。
風が木々の葉をそっと揺らしどこかから鳥の声が間隔を開けて聞こえます。
少しして老わたしは言います。
ここから先、この森のいちばん奥に誰もいない小屋があるからそれを目ざしてこのまま歩くんじゃ。そこにきみの知りたいことがある。
ご子息かお嬢さんは、rrは行かないの?て尋ねますが老わたしはただ首を横に振ります。
そこはきみひとりで訪れなければならない。

老わたしはご子息あるいはお嬢さんの後ろ姿を見えなくなるまで見送ります。そっと手も振ります。

いろいろ整合性や正確さや独創性などで突っ込みどころ満載だけどそのことはもういいや。
↑アプルフェザはこのときまったくこの通り一字一句違わずこう言った。
でも未来とはどうなるのかねー?
あ、ホッピー中おかわり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?