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できなかったのではなく、やらなかった。

先月、ポルノグラフィティのライブに2年ぶりに参加してきた。約2年ぶりの生で彼らが奏でる音を耳にして、1曲目の1音目から涙が流れた。私だけではなく、隣の人も静かにタオルで顔を覆って震えていた。

コロナが蔓延して、行動が規制された約1年半。皆生活方式を変えたり、好きなことを我慢して耐え忍んできた。ずっとずっと待っていた、この1音目から、コロナウイルスにより止まっていた時間が動き出した ―――――。

・・・9月末まではそう思っていたが、果たしてそうだったのだろうか。


コロナが蔓延して、緊急事態宣言が発出されてた昨年4月頃から、私は政府や知事の言う通り、家に引きこもるようになった。営業職から事務職に転職したこともあったが、余計に身体を動かす機会がなくなったが、「今は外に出ず、じっとしているべき」と、食料の買い出しと仕事に行くとき以外は動かずにいた。そうしていたら、身体を動かす気力もなくなってしまった。

身体を動かす気力がなくなると、全てにおいての興味関心も薄れていく。大好きだった音楽鑑賞もしなくなり、新しいバンドを発掘することもしなくなり、それまで好きになったバンドの新曲を聴くことすら、面倒に思うことになってしまった。どのバンドもライブを控えていたし、新曲の発売も少なかったということもあり、私の生活の中心だった音楽は、どんどん薄く小さく遠い存在になってしまった。

一番大きい趣味を失った私は、家ではただひたすら横になってTwitterを開き、スワイプすることしかしなかった。今思えば廃人のような生活をしていた。

そんな生活が今月になって大きく変わった。緊急事態宣言が解除されて、カラオケの営業が再開したのだ。コロナが蔓延する前は月に2度、1人でフリータイムで体力の極限まで歌っていたけれど、コロナ禍になり、感染リスクが高いこと、マスクで歌うのが辛いことを考えて、行くのを控えていた。

しかし、先月のポルノのライブの余韻がまだ続いており、どうしてもカラオケに行きたい気持ちが生まれ、動きたくないという固い意志の私を奮い立たせた。在宅勤務の日の退勤後は絶対に外に出ないのに、その日は定時に退勤して軽い足取りで玄関の扉を開けて、カラオケ屋にフリータイムで入り、3時間半歌った。その後、さほど疲れを感じずに家に帰宅して、いつもは翌日の朝に回す家事をこなし、丁寧にお風呂に入り、布団に入った。

その時にはっと気づいた ―――――――― 「緊急事態宣言でできなかった」のではなく、「緊急事態宣言を理由にやらなかった」だけだと。

本当は全てできたはずだった。外に出ずとも、家の中で筋トレやストレッチをすることはできたし、散歩くらいはしてもよかったはず。そうしていれば、体力が保てていたはず。音楽だって、新しいものを追わずとも、既存のものからまだ聴いたことのない人たちの作品を聴くことができた。カラオケだって、スマホのアプリで楽しむことができたのに。家事だって、体力のなさと面倒くささを盾にやらなくなっていったが、ただやりたくなかっただけだった・・・。

そう、ただ、いいように「緊急事態宣言」や「コロナ」を理由に逃げていただけだったのだと、カラオケに行った夜に気づいた。本当はできたのだから。気力があれば、行動することができたのだ。もしやりたいことが、それこそ、カラオケ店が休業してしまうなど、「緊急事態宣言」や「コロナ」でできなかったとしても、本当にやりたければ、代わりにアプリで楽しむなど、工夫して近いものを行うことができたはずなのだ。


私が止まっている間に、ポルノグラフィティは進化を遂げているようだった。あるメディアは「実質活動休止」とかなんとか言っていたが、ボーカルはソロ活動をして、様々な人たちの曲をカバーして、声や表現力を磨き続けていたし、ギターだって、noteを更新続けて発信をし続けていた。昨年の12月には新たな挑戦として、オンラインライブだってしていたし、その際に新曲だって披露していた。彼らはコロナのせいにして止まることなく、進み続けていたのだ。その集大成が今回のライブにつながっているはずなのだから、それを「活動休止」と表現してしまうのはおかしな話だ。

・・・と、メディアへの皮肉もこめてみたけども、結局、私もメディア側の人間だから、責めることはできない。私だけではなく、周りも、社会も、音楽も、ポルノも、皆1年半前から時が止まっていると思って、安心して堕落していた。でも、実際はそんなことはなく、私のように落ちる所まで落ちている人もいれば、ポルノのように進化し続けている人もいたのだ。

そのことに今気づけて良かったと思う。危機感を持ち、立ち上がって活動しようという気持ちが戻ってきてくれた。すぐに新しいことを始めることは難しいけれど、一つずつ、コロナ以前はできていたことをできるように戻りたいと思う。それから、前を向いて、新しいことに挑戦していきたい。

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