彼の年のラプソディ

 レオンの終幕のように視界のフレームが歪み半回転し、更に半回転して地面と天井を映していた。あー、あと少しで眩い街路の光の中に進めたのにな・・・と、私も思っていた。しばらくすると仄暗い木立の中で威勢よく客寄せをする若い兄ちゃんの声が聞こえだした。「さてさて胎内巡りの出発の時刻を過ぎております、お急ぎの方はこちらまでお集まりくださいまし!」木立の陰にぽっかりと開いた木戸口は、炭鉱の坑道に似せた木組みの入口を呈していて、そのトンネルの向こうは真っ暗な闇が四角く穿たれているようだった。

 「どうするね、ちょっと見物でもして行くか?」と、いつの間にか私の隣には見知った知人が肩を並べているではないか。私は右手に残る手榴弾の信管リングを木戸番のじいさんに渡し、真っ暗なトンネルに足を踏み入れた。岩壁伝いにそろりそろりと歩を進めてみれば、半町ほど先のトンネルが上下左右にかなり開かれていて、ぼんやりと灯された無数の蠟燭行灯がゆらゆらとして、その影と踊るのがみてとれた。何か大きな箱がその広場でひっきりなしに旋回し、それに合わせて人の頭や背中がその箱に収まるのも見えてきた。


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